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3節 アルミニウム・亜鉛などとその化合物

A アルミニウム

アルミニウム

 銀白色の軟らかい軽金属(密度2.7g/cm3)で,展性・延性に富む。地殻の構成成分として,酸素,ケイ素に次いで第3位であり,金属としては第1位を占める。主要鉱物には長石,雲母,氷晶石等があり,酸化物鉱物としてコランダム,サファイア,ルビー等が挙げられ,宝石として珍重されるものも多い。鉱石としてはボーキサイト,カオリンが重要で,工業的には氷晶石とアルミナの溶融塩電解で製造する。融点660.32℃,電気伝導性は銀,銅に次いで良い。

 空気中に放置すると,酸化物の被膜を生じて光沢を失うが,内部までは侵されにくい。酸には溶けてそれぞれの塩をつくるが,濃硝酸には不動態をつくるので比較的侵され難い。

 アルマイトは,工業的にAlの表面にAl2O3の耐錆性被膜をつくったものの商品名である。アルミニウム板を陽極とし,シュウ酸や硫酸等の溶液の中で電解すると,表面に酸化物の被膜ができる。この被膜は硬くて丈夫であり,電気絶縁性がよい。これを更に過熱水蒸気で処理して緻密にする。電解に際して,直流のみでなく交流を併用すると,被膜の性能がいっそうよくなる。

 Alを強熱すると,白光を放って燃え,多量の熱を発生する。

   4Al3O2 ―→ 2Al2O33351.4kJ

 この性質を利用して,炭素で還元し難い金属酸化物をAl粉末と熱して還元する。これをGoldschmidt法といい,CrMnCoV等の冶金に用いられる。また,Fe2O3粉末とAl粉末の混合物をアルミノテルミットという。点火すると高温を生じ,レールの修理等に使用された。

 Alは,工業用及び家庭用の器具の製作,銅の代わりに電線,電気器具にも用いられる。Al粉は塗料,火薬,花火に,Al箔はスズ箔の代用にする。また,アルミニウムはいろいろな合金の原料として用いられる。

 ジュラルミンはAlCu3.55.5%Mg等を加えた合金である。

 尚,アルミニウムをつくる為には多量の電力を消費するので,アルミ缶は回収して再生利用するのが望ましい(原料からアルミニウムをつくるのに比べて僅か3%程度のコストで再生できる)

 

酸化アルミニウム

 アルミナまたはバン土ともいう。天然には鋼玉(コランダム)として産する。微量のCr2O3を含むものは紅色を呈し,紅玉(ルビー)と呼ばれている。TiO2を含むものは青色で青玉(サファイア)という。色の美しくないものは金剛砂といい,研磨剤として用いる。Al(OH)3を電気炉内で熱し,半融解したものをアランダムという。耐火性が強く,硬度が高いので,るつぼその他の耐火器具及び研削材等に用いられる。

 

電解工業

電気分解を利用して物質を製造したり,材料を加工したりする工業を電気分解工業という。物質製造で大規模に行われているのは,アルミニウム製錬,食塩電解,亜鉛製錬,銅精製等である。その他,フッ素,カルシウム,ナトリウム,リチウム,塩素酸ナトリウム等も,電解法で製造されている。

技術的には,他の製造法でも製造できるが,製品純度等の問題で,電解法で製造しているものもある。例えば,酸化マンガン(IV),クロム等である。

その他,めっき,電着塗装等も行われている。

電気分解による製造物質

分 野

製 造 物 質

水電解

H2

食塩水電解

NaOHCl2H2

無機電解酸化

NaClO3KMnO4MnO2PbO2NaClO4

金属電解精製

CuPbAuAgNiFeBiInSn

金属電解採取

ZnCrMnNiCoGaTeCdTl

溶融塩電解

F2AlMgCaNa

 

アルミニウムの製造

 アルミニウムは地殻に非常に多く,8(地殻構成元素順位3番目)含まれているが,全て化合物となっている。ケイ素,酸素と化合した長石のように,複雑なケイ酸塩をつくり岩石や土壌を形成している。これらの量は多いが,それからアルミニウムを取り出すことは困難である。アルミニウム製造に用いる主な原鉱は,アルミナを主成分とするボーキサイトである。この製造方法の工業化に成功したのは,1886年にアメリカのホールHall(18631914)とフランスのエルーHeroult(18631913)が偶然同じ年に発見した方法によった。

 それまでは,アルミナは融点が高く,炭素で還元し難いので,塩化アルミニウムをナトリウムやカリウムで還元してつくっていた。

    AlCl33Na ―→ Al3NaCl

 しかし,ホール達が氷晶石Na3AIF6950℃に熱して融かし,これにアルミナを加えて融解させ,電解してアルミニウムを製造するという方法を考え出してから,急にアルミニウムの製造量が増加した。

 アルミナの電解を行うと,電解槽の内壁が陰極となり,Al3が放電して,アルミニウムが析出して底に溜まる。陽極ではO2-が炭素と反応して一酸化炭素や二酸化炭素を生じて,陽極を消耗する。したがって,アルミナの電解反応は次のようになる。

(陰極) Al33e- ―→ Al

(陽極) 2O2- ―→ O24e-O2CCO2CO2C ―→ 2CO

(全体) 2Al2O33C ―→ 4Al3CO2Al2O33C ―→ 2Al3CO

 電解に用いるAl2O3は純粋でないと上の反応が上手く進行しない。それにはボーキサイトを加圧下で水酸化ナトリウム水溶液と熱する。すると,酸化鉄等の不純物は溶けないで残る。溶液となったアルミン酸ナトリウムを加水分解すると水酸化アルミニウムが沈殿する。これを熱して純粋な酸化アルミニウムを得る。したがって,アルミニウムの製錬は2段階に区別でき,酸化アルミニウムを得る方法をバイヤーBayer法,アルミナの電解法をホール・エルー法という。

 最近,電解にかわる方法として溶鉱炉法が開発され,注目されている。これはボーキサイトから直接アルミニウムを取り出す方法であり,電力不要の点から工業化に期待がよせられている。

 

溶融塩電解

化合物を融解して電解する方法で,融解塩電解ともいう。アルミニウム製錬が代表例で,アルカリ金属等イオン化傾向の大きい金属等の製造法である。また,フッ素の製造や有機化合物の電解フッ素化等にも活用されている。

 

アルミニウム化合物

 アルミニウム化合物の中で,生産量の多いのは硫酸アルミニウム,ポリ塩化アルミニウム等である。

 Al2(SO4)3は硫酸バン土ともよばれ,製紙のサイジング(インキの滲み止め加工),染色の媒染剤,水の浄化剤,皮なめし等に利用されている。50%が製紙用,35%が水処理用である。AlK(SO4)2 · 12H2O(ミョウバン)も同様の目的で利用されている。

ポリ塩化アルミニウムとは[Al2(OH)nCl6n]mn3m10)の組成の塩基性塩化アルミニウムの液で,浄水剤として用いられている。多核錯イオンの機造をもつので,Al2(SO4)3より凝集力が大きく,また中和剤や助剤が不要なので最近需要量が増加しつつある。

 無水塩化アルミニウムAlCl3は,フリーデル-クラフツ反応(アルキル化,アシル化),クラッキング反応等に触媒として用いられる。

 

B 亜鉛と水銀

亜鉛

 天然に単体で産出することはないが,地殻中に広く分布している。主要鉱石は閃亜鉛鉱ZnS,菱亜鉛鉱ZnCO3である。硫化物は焼いて酸化物とし,これを炭素と混ぜて熱すると亜鉛が蒸発して出てくる。精製は蒸留,電解によって行う。青みを帯びた銀白色の金属光沢がある。融点419.53℃,沸点907℃,密度7.13g/cm3室温ではややもろく,加工し難いが,100115℃で展性・延性が著しく増大するので,薄板や線に加工できる。200℃以上でまたもろくなり,粉末にすることができる。

 湿った空気中で塩基性炭酸亜鉛の被膜を生じ,内部を保護する。酸素または空気中で高温に熱すると光を出して酸化物になる。赤熱状態で水と反応し,分解して水素を発生する。乾いたハロゲンとは室温で反応しないが,水分があれば容易に侵される。希酸及び濃塩基溶液と反応し,水素を発生して塩を生じるので,希酸あるいは濃塩基溶液と共に還元剤として用いることができる。アンモニア水,シアン化カリウム水溶液には,水溶性錯塩をつくって溶ける。

 トタン板,電池の製造の他,黄銅,洋銀等重要な合金の材料となる。

 

亜鉛化合物

 熱した亜鉛に水蒸気を通じると,水素を発生して酸化亜鉛を生じる。また,空気中で強熱しても酸化亜鉛となる。

   ZnH2O ―→ ZnOH2  2ZnO2 ―→ 2ZnO

 酸化亜鉛は水に溶けないが,酸やアルカリにはよく溶ける。

   ZnO2H―→ Zn2H2O

   ZnO2OH-H2O ―→[Zn(OH)4]2-

 ZnOは亜鉛華,亜鉛白ともよばれる。毒性がないことと,硫化水素で黒変しない等の特徴から,白色顔料として鉛白(塩基性炭酸鉛)に代わって使われたが,現在ではTiO2が主に用いられている。現在では,ゴムの加硫促進剤,ガラス,ほうろう,陶磁器の上薬,医薬,顔料等に用いられている。高純度のものは,紫外線吸収能が高く,光半導性があり,絶縁性も高いので,樹脂安定剤,電子写真感光材料,蛍光体等に利用されている。

 水酸化亜鉛Zn(OH) 2も両性化合物で,酸や塩基と反応する。また熱すると125℃で分解する。

Zn(OH)2 ―→ ZnOH2O

塩化亜鉛ZnCl2(融点283℃,沸点732)は潮解性の無色粉末結晶で,金属酸化物を溶解する性質がある。これは,[ZnCl4]2-を生じるためで,亜鉛やスズめっきの前処理や,はんだづけのときに金属面を綺麗にするのに用いられる。また,歯科用セメントは,ZnCl2の濃溶液にZnOを加えてつくり,充填用としている。これは,塩基性塩化亜鉛ZnCl(OH)生じて硬化する性質を利用したものである。

   ZnCl2ZnOH2O ―→ 2ZnCl(OH)

 硫酸亜鉛ZnSO4は無色の結晶で,水溶液は加水分解して酸性を示す。

 

水銀

B.C.500年以前から知られていた元素で,元素記号Hgはラテン語の「液体の銀」に対応する語,元素名mercuryはローマ神話からとられた。主要鉱物は辰砂HgSで,自然水銀として産出することもある。室温常圧で唯一液体の金属。融点38.87沸点356.58密度13.546g/cm3空気中では変化しないが,300400℃に熱すると酸化水銀(U)HgOとなる。塩素と作用して塩化水銀(I)Hg2Cl2を生成。塩酸・希硫酸とは反応しないが,硝酸・濃硫酸・王水に溶ける。また,多くの金属とアマルガムをつくる。単体・無機化合物とも皮膚吸収,煙・蒸気を吸い込むと猛毒。有機化合物は大部分が有毒。環境汚染物質なので,消費は世界的に減少しつつある。

塩化水銀

化合物

水に対する溶解性

その他の特徴

塩化水銀(I)Hg2Cl2

光より一部分解して黒ずむ

塩化水銀(II)HgCl2

体内に入ると毒性が強い

 

C スズと鉛

スズとその化合物
 スズは天然には錫石SnO2として産し,これをCSiO2CaCO3等で還元し,粗スズをつくり,更に電解法等により精製する。低温型のaスズと高温型のスズが知られている。転移温度は18℃で,この温度付近では転移速度は小さいが低温では速い。aスズは灰色スズともいい,ダイヤモンド型構造,格子定数α0.649nmbスズは白色スズともいい,普通の銀白色の金属スズはbスズである。融点231.97℃,沸点2270℃。da205.75db207.31加工性はよいが,棒状のものを曲げると,表面は何も変化がないのに,竹を折るような音がする(これを錫声とよぶことがある)bスズを30℃以下に保つとaスズになる。このとき金属スズは膨張し,崩れ易くなる。寒冷地で見られる錫ペストはこれである。空気中では安定だが,高温では燃焼し酸化スズ(II)となる。両性を示す。ブリキ(鉄板にスズメッキ) ,各種合金に使われている。

 化合物のスズの酸化数は24である。スズ(II)化合物は酸化され易く,還元剤として働き,スズ(IV)化合物となる。

鉛とその化合物
 方鉛鉱PbSから粗鉛をつくり,これを電解法,乾式法等により精製する。帯青白色の軟らかく重い金属。構造は,面心立方格子,格子定数a0.495nm融点327.5℃,沸点1740℃,密度11.35g/cm3(20)加熱により次第に酸化されてPbOPb3O4等となる。希酸には侵され難いが,酸化力のある酸(硝酸等)には溶ける。両性を示す。板,管等として,また蓄電池の電極等に用いられる。また,はんだの他,各種合金の成分となる。可溶性鉛化合物は全て有毒。

 酸化数+2の化合物が多く,+4のものもあるが+2のものに比べて不安定である。