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5節 窒素・リンとその化合物

A 窒素の単体

窒素(融点−209.86℃,沸点−195.8)

 窒素N2は空気中に多量に含まれ,安定である。酸素等他の元素との親和力は小さい。一方,アンモニウム塩や硝酸塩あるいは尿素等重要で多量に消費される窒素化合物があるので,古くから「空中窒素の固定」は重要な課題であった。地殻中にはチリ硝石NaNO3,硝石KNO3等硝酸塩の形で存在している。

 近年,大気汚染あるいは光化学的大気汚染が問題になっているが,これは,エンジンの排ガス中の酸化窒素,あるいはそれが光エネルギーを受けて生じるオキシダントが原因となっている。

 

参考実験 液体窒素の性質

【目的】液体窒素を用いて,低温を必要とする実験を行う。

【準備】液体窒素用タンク,ビーカー,アルミニウム缶,ゴム管,線香,着火器具,L字ガラス管,ゴム栓,大型試験管,草木の葉,ハンマー

【操作】(1) 液体窒素をビーカーに入れる。

(2) 草木の葉やゴム管を液体窒素につけた後引き上げてハンマーで叩いてみる。

(3) 図のような装置を用いて,天然ガスを液体窒素で冷却して凝縮させる。試験管の底に液体が少し溜まったら,元栓からコックを外して閉める。液体窒素のビーカーを取り去り,Bに点火してみる。

(4) 液体窒素を入れたアルミニウム缶を持ち上げ,落ちてくる液体を,液体窒素で冷やした試験管に受ける。液体が少し溜まったら,液体窒素から試験管を取り出し,中に点火した線香を入れる。

【結果】(1) 液体窒素はビーカー内で沸騰している。

(2) 粉々に壊れるが,室温に戻ると再び軟らかくなる。

(3) Aで天然ガスの流量を少ない目にすると,Bでガスの臭いがせず,かつ試験管の底に液体が溜まり出す。Aを外してBに点火すると,一度凝縮した天然ガスが再び蒸発し,液体がなくなるまで燃える。

(4) ビーカーに入れたときとは異なり,液体窒素をアルミニウム缶に入れて持ち上げると缶の底から液体がぽたぽたと落ちる。これを,冷やした試験管に受け点火した線香を入れると,線香は激しく燃える(沸点O2182.96°CN2195.8°C)

【考察】(4)では,アルミニウム缶の熱伝導がよいため,空気中の酸素が液体窒素で冷やされ凝縮したのである。但し,空気中の水分等も混じるため少し濁っている。これとは別に,図のように酸素だけを凝縮すると,純粋な液体酸素が得られる。淡青色で,ネオジム磁石等強い磁石に引きつけられることもわかる。他に,Y-Ba-Cu-O系の高温超伝導体とフェライト磁石を用いて,マイスナー効果を示すことも可能である。

 

B アンモニア

アンモニア(融点−33.4,沸点77.7)

アンモニアは,極めて水に溶けやすい。アンモニア水は濃度が大きくなる程密度が小さく,軽くなる特色がある。アンモニアは凝縮しやすい。液体アンモニアは蒸発熱が大きい為(23.35kJ/mol)製氷等に利用されている。また,アンモニアは水と似た極性分子であり,液体アンモニアは溶媒としても使われている。

市販のアンモニア水は28水溶液(0.9014.5mol/L)である。

アンモニアは酸素中では黄色の炎をあげて燃え,窒素と水を生じる。

   4NH33O2 ―→ 2N26H2O
 また,いろいろの金属と反応し,ナトリウムとはナトリウムアミドNH2Na,マグネシウムとは高温で窒化マグネシウムMg3N2を生じる。

2NH32Na ―→ 2NH2NaH2

2NH33Mg ―→ Mg3N23H2

ハロゲンと反応すると,窒素を遊離する。

8NH33Cl2 ―→ N26NH4Cl

酸とはアンモニウム塩をつくり,金属イオンとは錯イオンをつくることが多い。アンモニアの合成法には,装置や触媒,反応温度の違いで様々な方法がある。

 

参考実験 アンモニア合成(ハーバー法)

【目的】ハーバー法によるアンモニア合成を,実験を通して定性的に理解させる。

【準備】硬質ガラス(石英管),塩化カルシウム管,鉄製スタンド,18L広口瓶,ガラスコック,ゴム管,ガラス管,水素,窒素,スチールウール,濃塩酸,ガスバーナー,着火器具

【操作と結果】(1) 図のような装置をつくり,水素と窒素を体積比31で集気瓶に入れる。

(2) 硬質ガラス管中の酸化鉄をバーナーで強熱した後,水道管につないだゴム管を 通して集気瓶の中に少しずつ水を送り,混合気体を反応管に押し出す。

(3) 硬質ガラス管から出てくる気体に,ガラス棒の先についた濃塩酸を近づけて, 白煙(NH4Cl)が生じることを観察する。

 

C 窒素の酸化物

窒素酸化物

 窒素の酸化物には,一酸化二窒素N2O,一酸化窒素NO,三酸化二窒素N2O3,二酸化窒素NO2(低温・液体では二量体の四酸化二窒素N2O4),五酸化二窒素N2O5等がある。

 N2Oは麻酔性があり,これを吸入すると笑いの表情を起こすので笑気ともよぶ。室温では安定である。300℃以上でN2O2に分解し始め,酸化剤となる。

 NOは空気中で酸化され易く,NO2になる。高温では分解してN2N2OO2を生じる。

 N2O3は分解し易く,気体ではNONO2の平衡混合物になる。水溶液では亜硝酸となり青色となるが,更に分解して硝酸とNOを生じる。

 NO2は空気中では比較的安定だが,高温ではNOO2に分解する。水に溶けると硝酸とNO,冷水では亜硝酸と硝酸を生じる。酸化剤となる。

 N2O5は室温でもNO2O2にゆっくり分解する。水に溶けると硝酸になる。

 

D 硝酸

硝酸

 硝酸は,無色・揮発性の刺激臭の強い液体で,熱や光で分解してNO2ができ,これが硝酸中に溶けるので黄味を帯びる。特に,熱すると分解し易く,酸素を発生する。還元剤が共存しておれば室温でも容易に分解する。

   4HNO34NO22H2OO2

 工業的には,硝酸は,アンモニアの酸化でNOをつくり,これがO2H2OによりHNO3に変わるので,結局,空気と水から硝酸が得られることになり,化学工業界で画期的な改革がなされた。

 硝酸は濃度70%に共沸点(121)があるので,オストワルト法で得られた希硝酸から蒸留法でこれよりも高濃度の硝酸をつくることができない。それで,濃硫酸や硝酸マグネシウム等の脱水剤を加えて蒸留し,9899%の濃硝酸を製造している。

 純硝酸は,吸湿性の強い発煙性液体で,融点は−42℃,沸点は83℃である。比重は1.5で重い。市販の濃硝酸は,通常約69(16mol/L)または61(13.5mol/L)である。純硝酸にNO2を溶かしたものは発煙硝酸と呼ばれる。濃硝酸は強酸であり,強い酸化剤でもあるので多くの金属を溶かすが,FeCrNiAl等は不動態となる。

 

参考実験 硝酸製造(オストワルト法)

【目的】オストワルト法による硝酸製造の様子を見せ,反応の仕組みを理解させる。

【準備】吸収瓶,気体乾燥管,ガラス管,反応管,シリコーンゴム栓,三角フラスコ,水流ポンプ,濃アンモニア水,白金石綿(白金かいろ用),ソーダ石灰,リトマス紙,ガスバーナー,着火器具

【操作】(1) 図の装置をつくり,バーナーに点火後,水流ポンプを作動させる。

(2) Fの液にリトマス紙をつけて,赤変するのを確認する (これは硝酸の確認反応であり,褐色環試験を行えばなおよい)

【解説】Aから入る空気はNH3を伴って流れ,Bで乾燥されてCで熱され,Dに入る。DNH3が酸化されてNOが生じる。NOEへ送られる途中で冷やされ,空気中に余分にあるO2で酸化されてNO2になるので,Eの三角フラスコ内は次第に赤褐色になる。NO2は,次のFの水に入り,水と反応してHNO3になる。

 

E リン

リンとリン酸
 リンは,リン酸カルシウムCa3(PO4)2を主成分とするリン灰石に多く含まれている。動物の骨や歯もリン酸カルシウムを主成分としている。リン灰石をケイ砂SiO2コークスと混ぜて電気炉で熱すると,まず,リン酸カルシウムがケイ砂と反応して十酸化四リンP4O10をつくり,次いで,これがコークスによって還元されてリンとなる。
   
2Ca3(PO4)26SiO2 ―→ 6CaSiO3P4O10
   P4O1010C ―→ 4P10CO
 リンは,炭素と窒素,希ガスを除く殆ど全ての元素と直接化合する。特に,酸素,硫黄,ハロゲンとは激しく化合する。また,空気中34℃で自然発火する。黄リンは猛毒で皮膚への接触は避けなければならない。

4P5O2P4O102984kJ
 十酸化四リンは,水に溶けるときの条件によって3種類のリン酸を生じる。メタリン酸は,オルトリン酸が3分子以上縮重合して環状になった構造をもつ。ピロリン酸(二リン酸)は,オルトリン酸2分子が縮合した構造をもっている

P4O102H20 ―→ 4HPO3

(メタリン酸)

(-PO(OH)-0-)n

P4O104H20 ―→ 2H4P207

(ピロリン酸)

(HO)2OP-O-PO(OH)2

P4O106H20 ―→ 4H3PO4

(オルトリン酸) 

PO(OH)3

メタリン酸水溶液を熱するか,十酸化四リンを熱水に溶かすとオルトリン酸になる。オルトリン酸は,単にリン酸ともいう。オルトリン酸を熱するとピロリン酸になり,さらに強熱するとメタリン酸に変わる。水溶液中ではオルトリン酸が最も安定で,他のものは長く放置すると全てオルトリン酸に変わる。
 リン酸は室温で固体だが,融点は
42.35℃で低い。不揮発性で,酸化性も還元性もない。三価の酸であり,リン酸塩は3種類得られる。

リン酸二水素塩

NaH2PO4

Ca(H2PO4)2

リン酸一水素塩

Na2HPO4 

CaHPO4

リン酸無水素塩

Na3PO4    

Ca3(PO4)2

ナトリウム,カリウム,アンモニウムのリン酸塩は水溶性だが,他の金属塩の多くはリン酸二水素塩が水溶性で,他の塩は不溶性のものが多い。過リン酸石灰と呼ばれるリン酸肥料は,不溶性のリン灰石を硫酸と反応させ,水溶性のリン酸二水素カルシウムとしたものである。

   Ca3(PO4)22H2SO4 ―→ Ca(H2PO4)22CaSO4

過リン酸石灰

 

 

 








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