トップ化学I 改訂版>第3部 無機物質>第1章 非金属元素と周期表>第4節 酸素・硫黄と その化合物

4節 酸素・硫黄とその化合物

A 酸素の単体

酸素(沸点−182.96℃,融点−218.4℃)

典型的な非金属元素である。原子の最外殻の電子配置はで,分子をつくるときは最外殻の電子数が8個になる安定な化学結合をしており,00で表される。また,の電子配置をとる状態も考えられる。これらの電子配置は02N2に比べて他の元素と反応し易いことを説明するのに役立つ。

 酸素は化学的に活発でハロゲン,希ガス,白金,金,銀以外の元素を直接酸化する力をもつ。このとき,一般に発熱し,燃焼,爆発に至ることもある。

 酸素は,主に液体空気の分留で得られ,液体や固体は淡青色である。液体酸素は常磁性の為,ネオジム磁石(等強い磁石)に引きつけられる。

 

オゾン(沸点−111.3℃,融点−193℃)

 酸素の同素体で,空気または酸素中の無声放電で製造されている。

   3O22O3286kJ

  気体は淡青色,液体は黒青色,固体は暗紫色で,特有の生臭い臭いをもつ。酸素は常磁性体だが,オゾンは反磁性体である。

 オゾンは光,熱等で分解して酸素になり,強い酸化作用を示す。その為,殺菌,漂白等に用いられている。

 

 

B 酸素の化合物

酸化物

 酸素との化合物を酸化物というが,通常はOの酸化数が−2の化合物をいう。したがって,OF2O22-を含む過酸化物,O2-を含む超酸化物は,狭い意味の酸化物から除外される。

 酸素は電気陰性度が大きく,電気陰性度の小さいアルカリ金属やアルカリ土類金属等の金属元素とはイオン結晶をつくる。これらは沸点が高く,水に溶けて塩基性を示す。金属の電気陰性度が大きくなると,酸化物の共有結合性が次第に強まり,水に溶け難くなり,塩基性が弱まる。

 電気陰性度の大きい非金属元素の酸化物は,一般に共有結合によって分子をつくり,これが水に溶けてオキソ酸となる。電気陰性度が小さい非金属元素の酸化物では,酸の性質が弱くなり,巨大分子を生じて水に溶け難くなる。

(1) 塩基性酸化物  酸と作用して塩をつくり,水に溶かせば塩基となる酸化物をいう。金属の酸化物には塩基性酸化物が多く,CaOFeOFe2O3等がその例であり,一般に遷移金属の高酸化数酸化物を除いて塩基性酸化物となる。

(2) 酸性酸化物  酸化物のうち,塩基と反応して塩をつくり,また水に溶けるとオキソ酸をつくるものをいう。非金属元素の酸化物の大部分,および遷移元素の高酸化数酸化物がこれに属する。例えばSO3CrO3等で,水に溶けると硫酸H2SO4,クロム酸H2CrO4または二クロム酸H2Cr2O7等をつくり,塩基性酸化物MUOと反応して塩MUSO4MUCrO4等をつくる。

(3) 両性酸化物 1つの酸化物で塩基に対しては酸性,酸に対しては塩基性を示すものをいう。酸性,塩基性は共に弱い。例えば,Al2O3は硫酸に対し,塩基として作用してAl2(SO4)3,水酸化ナトリウムに対しては酸として作用してNa[Al(OH)4]をつくる。両性酸化物は,AlZnSnPbAsSb等のように,その性質が場合により金属元素とも非金属元素とも考え得るような元素の酸化物か,あるいは遷移元素の中程度の酸化数の酸化物である。

 

オキソ酸(酸素酸)

 無機酸のうち,中心原子Xに結合している原子が全て酸素であり,酸素の一部または全部に水素が結合して-OH基となり,その水素が水溶液中で電離してHを生じ,酸性を表すものをいう。H2SO4HNO3等がその例である。同一の中心原子Xから数種類のオキソ酸を生じる場合,そのうちの1つを基準とし,それより酸化の程度の高いものには「過」,低いものには「亜」,更に低いものには「次亜」を付して呼ぶ。また,基準のオキソ酸に「オルト」や「正」をつけることもあり,これより水分子1個が取れたものに「メタ」をつけて呼ぶ。

水の状態変化

固相から液相に変わる場合,一般には密度の減少を伴うが,氷の融解の場合は逆になる。これは,氷が水素結合により隙間の多い構造をとる為で,液体ではその隙間が水分子で満たされる。したがって,状態図の融解曲線も多くの物質と異なり,傾きが負の値をとる。

また,気体中の分子間の平均距離は,液体の約12倍になっている。他の物質でも同様であり,約10倍となる。

 

水の密度,体積,分子間距離(圧力1.03×105 Pa)

状態

温度

〔℃〕

密度

g/cm3

1molの体積

cm3

1分子が占める体積

cm3

分子中心間の平

均距離〔cm

固相

液相

液相

気相

0

0

100

100

0.917

1.000

0.958

5.954×10-4

19.6

18.0

18.8

30600.0

3.3×10-23

3.0×10-23

3.1×10-23

5000×10-23

3.2×10-8

3.1×10-8

3.1×10-8

36.9×10-8

 

氷の中の酸素原子は, 0-H0のような水素結合によって4つの酸素原子で正四面体状に囲まれている。したがって,1つの水分子は4つの水分子と水素結合で結ばれ,ダイヤモンドに似た結晶構造をしている。このときの酸素原子間距離(0-H0)0.276nmで,液体の水に比べて体積が大きく,また密度は0.917g/cm3と水よりも小さい。

 

 

C 硫黄の単体

硫黄の単体

 同素体では斜方硫黄Sαと単斜硫黄Sβがよく知られ,SαSβは互いに変化する。Sβを室温に放置すればSαSαを融解して徐々に冷やすとSβになる。また,Sα95.5℃以上に保ってもSβになる。この温度を,硫黄の転移点という。

 硫黄を熱すると119.0℃で融解して黄色流動性の液体Sλになり,更に熱すると黒褐色粘稠性の液体Sμに変わる。これは,445℃で沸騰して赤褐色の蒸気を出す。Sμを冷水中に入れるとゴム状硫黄が得られる。

 硫黄は水に溶けないが,アルコールには少し溶け,二硫化炭素にはよく溶ける。但し,ゴム状硫黄は高分子になっており,二硫化炭素にも溶け難い。

 水酸化ナトリウム水溶液や石灰水等の塩基には,温めると溶ける。

   6S6NaOH 2Na2S2Na2S2O33H2O

 

セレン,テルル

セレンとテルルは硫黄によく似た性質を示す。同素体に金属性のものがあり,これは半導体となる。共に有毒である。

 

 

D 硫化水素

硫化水素(融点−85.5℃,沸点−60.7℃)

 無色・腐卵臭の悪臭をもつ気体。分子は二等辺三角形で∠H-S-H87.77°。水に溶けて硫化水素水となる。硫化水素水は弱酸で,電離度は25℃の0.1mol/L水溶液で0.0007%である。

   H2SH+HS-    HSHS2-

 硫化水素水を空気中に放置すると,空気中の酸素によって徐々に酸化され,硫黄を遊離する。これは硫黄よりも酸素の方が水素と化合し易い為である。また,硫化水素水を熱したり,過マンガン酸カリウムや二クロム酸カリウムの酸性溶液あるいは硝酸等と反応させれば,硫黄を析出する。

   3H2S8HClK2Cr2O7 2KCl2CrCl37H2O3S

 これらの変化は,硫化水素に還元作用がある為に起こる。この他,濃硫酸を分解させたり,ハロゲンと反応したりする性質も,全て硫化水素の還元作用による。

   H2SO4H2S SO22H2OS

   SO22H2S 2H2O3S

   Cl2H2S 2HClS

 

 

硫化物

 硫黄とそれより陽性の元素との化合物をいう。殆どの金属およびBSiCAsPNHTeSe等の硫化物が知られている。単体間の直接の反応か,酸化物または水酸化物と硫黄との作用によって得られるが,重金属の場合は塩の水溶液に硫化水素を通じてつくる。アルカリ金属等陽性の強い金属の硫化物はイオン結晶をつくるが,陽性が弱いものでは金属間化合物に似てくる。アルカリ金属硫化物は水に溶けるが,その他は一般に難溶。アルカリ土類金属硫化物は,徐々に加水分解して溶ける。アルカリ,アルカリ土類金属硫化物だけ無色,その他は有色,一般に空気中で強熱すれば酸化されて硫酸塩あるいは酸化物になり,酸では多くの場合,H2Sを生じて分解する。

 

金属元素の硫化物の溶解度

 硫化水素は,多くの金属イオンと反応して硫化物の沈殿をつくる。その硫化物は,金属イオンの種類によって特有の色を示し,酸に溶・不溶の相違がある。例えば,硫化鉄(II)は酸に溶けるが,硫化銅(II)は溶け難い。その理由は,次のように溶解度積によって説明されている。

 硫化鉄(II)の溶解度積は[Fe2] [S2]2.5×109(mol/L)2 (10) である。酸性下では,液中の[S2]は減少する。

    S2HHS-   HSHH2S

 したがって,[Fe2][S2-]の値は2.5×109よりも小さくなり,硫化鉄(U)は全て溶けてしまう。これに対して,硫化銅(U)の溶解度積は[Cu2][S2]6.5×1030(mol/L)2 (25)で非常に小さい。それで,酸性の下で[S2]が小さくなっていても,極僅か溶けて飽和に達するので,それ以上溶けないことになる。

 

 

E 二酸化硫黄と硫酸

二酸化硫黄

亜硫酸ガスともいう。工業的には硫黄の燃焼,実験室では銅と濃硫酸を加熱するか亜硫酸水素ナトリウムに強酸を加えて発生させる。無色で刺激臭の気体(融点−75.5℃または72℃,沸点−10)。溶解度39cm3/1cm3(20)。水溶液中には亜硫酸を含み,還元性を示し,漂白に用いられる。

 

三酸化硫黄

 白金網を触媒として二酸化硫黄と酸素を直接反応させてつくる。絹系光沢のあるアスベスト状のb(融点32.5)とコロイド状のa(融点62.4)の混合物が市販品。気体ではSO3分子が存在しSを中心とする正三角形型構造。

 

硫酸の製法

 工業的な硫酸の製造では,硫黄や硫化鉄鉱を燃焼させてSO2とし,これを触媒を用いて酸化しSO3にする。SO39899%の濃硫酸に吸収させて,更に濃い濃硫酸(または発煙硫酸)にした後,希釈して9598%の濃硫酸にする。この方法を接触法という。

 接触法で触媒を用いるのはSO3の生成速度が小さい為である。触媒は,過去には白金石綿(白金塩をアスベストにしみ込ませて焼いたもの)が使われていたが,現在では五酸化バナジウム(V) V205(V205K2SO4SiO2等が含まれており,V20559%,K2O 913%,Na2O 15%,SO31030%,その他はSiO2の組成)が用いられている。触媒の反応機構は次のように考えられている。

   V2O5SO2 V2O4SO3

   V2O42SO2O2 2VOSO4(硫酸バナジル)

   2VOSO4 V2O5SO2SO3

 硫酸の製法には,この他酸化窒素を触媒とする硝酸法(鉛室法)もあるが,接触法の方が高純度・高濃度の硫酸が得られるので,最近ではほとんど接触法により生産されている。硝酸法の主反応は,次のようになる。

   SO2H2O H2SO3

   H2SO32HNO2 H2SO4H2O2NO

   4NOO2 2N2O3

   2H2SO4N2O3 2NOHSO4H2O

   NOHSO4H2O HNO2H2SO4

 

参考実験 硫酸の製造(接触法)

【目的】簡単な装置で,接触法により硫酸ができることを供覧する。

【準備】NaHSO3H2SO4による二酸化硫黄発生装置,広口ガラスびん,硬質ガラス反応管,ゴムふいご,白金石綿(白金懐炉用),濃硫酸,塩化バリウム水溶液,リトマス紙

【操作と結果】(1) 下図のように装置を組み立て,二酸化硫黄を送りこむ。

(2) ゴムふいごから空気を送り,乾燥したSO2O2の混合気体を白金石綿を入れた反応管中に送る。このとき,SO2と空気の体積比は12程度が適当であるので,洗気びん中のガラス管から出る泡の量を見て調整する。

(3) 反応管を加熱し,白金石綿が赤く光る状態を保つ。この程度に熱しないとSO2O2の反応は進まない。反応管から出る気体(白煙)を試験管の水に通す。

(4) 試験管中の液にリトマス紙をつけて赤くなることを見る。また,少量分け取り,塩化バリウム水溶液を加え,BaSO4の白色沈殿が生じることを確かめて硫酸ができたことを知る。

 

硫酸

 H2SO4なる化学式で表される純物質またはその水溶液を硫酸という。100%硫酸に三酸化硫黄SO3を溶かしたものを発煙硫酸という。また,通常90%以上のものを濃硫酸といい,これよりずっと低濃度のものを希硫酸という。

 市販の濃硫酸は98(密度1.83g/cm318mol/L)が普通である。

純硫酸は無色粘性の油状液体で,密度1.834g/cm3(18),融点10.36℃である。熱濃硫酸(加熱した濃硫酸)は酸化作用が強く,イオン化傾向の小さい銅や水銀,銀,更に炭素や硫黄等の非金属とも反応し,二酸化硫黄を発生する。

 濃硫酸を水に溶かすと多量の熱を発生して溶ける。希硫酸は強酸であり,硫酸は化学工業を始め広く用いられている。

 

 

 








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