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第1節 原子の構造と電子配置

A 原子とその構造

原子核

 陽子と中性子からなる。原子の中心部にあり,原子自体の大きさに比べて極めて小さい。原子核の半径は,原子の質量数をAとすると約1.5×3A×1013cmとなる。原子と原子核の大きさを,例えばで比べると次のようになる。

 

 

 したがって,の原子核はの原子に比べ,半径で5万分の1,体積で100兆分の1となり,極めて小さい。

 一方,原子の質量の大部分は,原子核に集中している。そこで,の原子核の密度を計算すると,極めて大きな値となる。

 

 

 原子力(核エネルギー)は,原子核が分裂したり融合したりするとき,原子核の質量の一部を,エネルギーとして取り出すものである。

 

陽子

 正の電気素量をもち,その静止質量は1.67262171×1027kg1.00727646u(1uの質量の12分の1)で,電子の1836.15倍である。中性子と共に,原子核の重要な構成要素である。また,原子核中の陽子数は,元素の種類を決め,その元素の原子番号になる。

 

中性子

 電気的に中性なのでこの名が与えられている素粒子。その質量は陽子よりもわずかに大きく,1.67492728×1027kg1.008664910uである。中性子の存在は,1920年にラザフォードによって予想され,1932年チャドウィックによって確認された。

 

電子

 負の電気素量をもち,静止質量9.1093826×1031kgの素粒子。電子が原子を離れて自由な状態で初めて見い出されたのは,1859年,プリュッカーによって行われた真空放電実験における陰極線の発見だった。しかし,陰極線の発見を直ちに電子の発見と結びつけることは,少し飛躍がある。

 電子がelectronという言葉で呼ばれるようになったのは,1891年,イギリスのストーニーによる。ストーニーは,新しい物理単位として,電気に最小の量(電気素量)があることを唱え,この素量に対してelectronという名を与えた。

 電気素量の測定は,多数の人によって,いろいろの方法で試みられた。ミリカンが1917年に行った油滴実験の測定結果が最も正しいとされていたが,現在では別の方法で求められており,その値は次のようになる。

   e4.80321×1010esu1.60217653×1019C

 

質量数

 原子核中の核子(陽子と中性子)の数をいう。質量数は,原子質量単位で表した核種の質量に近い値となる。

 質量数と原子質量単位で表した原子の質量が異なるのは,核エネルギーによる質量欠損の程度が核種により異なる為だが,原子の質量(u)質量数±0.1の範囲にあり,質量数を原子の相対質量とみなすことができる。

 

同位体

 1906年にボルトウッドがイオニウムIoを発見したが,これはトリウムの同位体に相当する。その後,1912年,トムソンが放射能をもたないネオンに2種があることを発見した。同位体は同位元素とも呼ばれていたが,現在では同位体の名称に統一されている。同位体は殆ど化学的性質が同じである。しかし,原子番号の小さい元素では,中性子の数の差が原子全体の質量に占める割合が大きく,化学的性質の差が多少大きくなる。

 同位体を分離するには,質量の違いから生じる物理的性質の差を利用する。同位体の分離に初めて成功したのはイギリスのアストンで,1913年,気体拡散法によって20Ne22Neを分離した。235U238Uの大量分離にも,気体拡散法が使われている。これは,ウランの気体化合物をつくり,多孔質の隔膜中を拡散させ,化合物の質量の違いにより拡散速度が僅かに異なることを利用するものである。1回の操作で濃縮される量が極めて少ないので,同じ操作を何度も繰り返す必要がある。同位体の分離には,その他に遠心分離法等も用いられている。

 自然界では,同一元素の同位体の存在比はほぼ一定である。このことが,長い間16O17O18Oの混合物である酸素の原子量を16として,原子量の基準にできた理由だった。しかし,詳細に存在比を追究すると,高精度でも存在比が一定であるケイ素のような元素と,産状によって存在比に差があるホウ素のような元素のあることがわかってきた。

 

 

元素の存在比() *印は長寿命放射性同位体を示す

99.9885

 

94.93

 

 

 

 

5.845

 

50.69

2H

0.0115

 

33S

0.76

56Fe

91.754

81Br

49.31

0.000137

34S

4.29

57Fe

2.119

0.35

4He

99.999863

 

36S

0.02

58Fe

0.282

80Kr

2.28

7.59

75.8

100

82Kr

11.58

7Li

92.41

 

37Cl

24.22

68.0769

83Kr

11.49

100

0.3365

60Ni

26.2231

84Kr

57.00

19.9

38Ar

0.0632

61Ni

1.1399

86Kr

17.30

11B

80.1

 

40Ar

99.6003

 

 

 

62Ni

3.6345

72.17

96.93

93.2581

64Ni

0.9256

87Rb*

27.83

13C

1.07

40K

0.0117

69.17

0.56

99.632

41K

6.7302

65Cu

30.83

86Sr

9.86

15N

0.368

96.941

48.63

87Sr

7.00

99.757

42Ca

0.647

66Zn

27.90

88Sr

82.58

17O

0.038

43Ca

0.135

 

67Zn

4.10

100

18O

0.205

44Ca

2.086

68Zn

18.75

51.45

199F

100

46Ca

0.004

70Zn

0.62

91Zr

11.22

90.48

48Ca*

0.187

60.108

92Zr

17.15

21Ne

0.27

100

71Ga

39.892

94Zr

17.38

22Ne

9.25

8.25

20.84

96Zr

2.80

100

47Ti

7.44

72Ge

27.54

93Nb

100

78.99

48Ti

73.72

73Ge

7.8

14.84

25Mg

10.00

49Ti

5.41

74Ge

36.28

94Mo

9.25

26Mg

11.01

50Ti

5.18

76Ge

7.61

95Mo

15.92

100

*

0.250

100

96Mo

16.68

92.2297

51V

99.750

0.89

97Mo

9.55

29Si

4.67

4.345

76Se

9.37

98Mo

24.13

30Si

3.0872

52Cr

83.789

77Se

7.63

100Mo

9.63

100

53Cr

9.501

78Se

23.77

43Tc

 

0

 

 

 

54Cr

2.365

 

80Se

49.61

 

 

 

100

82Se*

8.73

 

 


 

放射性同位体

 放射能をもつ同位体をいう。88Ra92Uのように,天然に存在する同位体の全てが放射性同位体であるものもあるが,大部分の元素の天然に存在する同位体は,放射能をもたない安定同位体である。しかし,原子炉やサイクロトロン等を利用し,全ての元素について人工的に放射性同位体がつくられている。

 放射性同位体は,ごく微量でも検知器を使って検出することができ,その移動を追跡することができる。そこで,放射性同位体を含んだ化合物を使って化学反応を行わせると,原子の交換反応等が追跡でき,反応機構を明らかにすることができる。

 いま,元素に少量の放射性同位体*を混ぜておくとする。化学反応や生物体の代謝でが移動したところには必ず*を伴って移動するので,検知器や写真等で*を検出すればの行方を追跡することができる。このような役割をする*を追跡子(トレーサー)と呼んでいる。

 

放射性同位体を用いた年代測定

 天然放射性同位体を年代測定に利用することもある。例えば,146Cの量から炭素化合物の年代を知ることが,地質学や考古学等で行われている。

 大気上層では,宇宙線中の中性子によって,窒素原子が核反応を起こして14Cがつくられている。14Cは,半減期5730で,bを放射して崩壊していく。

このような変化が,太古から同じ状態で続いていて,地表上の14Cの濃度は殆ど一定で,平衡状態になっていると考えられる。

 14Cは,大気中の二酸化炭素とこれと短時間に交換できる炭素化合物,即ち生物体や海水中の炭素化合物中に広く分布しており,生存中の生物体内の14Cの濃度(A0)は太古から一定と考えられる。また,石炭や泥炭,貝殻,骨,化石等の生物遺体中の14Cの濃度(A)は,14Cの崩壊のため,遺体が古いほど少なくなる。したがって,A/A0の値から,死骸の生存年代を知ることができる。測定は,試量から分離した炭素の一定量から放射されるb線の量で行われる。

 

B 原子の電子配置

電子殻

ラザフォードとボーアの原子模型では,原子核の周囲を回る電子が一定半径の球殻面にあると考えて電子殻と呼んだ。内側からKLMN殻と名づけられているが,これは量子力学における原子模型で,主量子数n1234に対応する。各電子殻にはそれぞれ電子軌道があり,spdfと名づけられているが,これは方位量子数l0123に対応する。主量子数nの電子殻には,ln1までのn種類の電子軌道が存在する。また,方位量子数lの電子軌道は,磁気量子数mlによって更に2l1種類に分かれる。例えば,p軌道はl1に相当するから3(=2×11)種類に分かれ,pxpypzのように区別される。そして1個の電子軌道は2個まで電子を収容できる。

 

方位量子数

磁気量子数による軌動数道数

収容電子数

l0

 

2×011

 

1×22

l1

2×113      

3×26

 

  :

 

 

ln-1

 

n-1+1=2n-1

 

2n-1×2=4n-2

n種類

 

合計 n2

 

計 2n2

 

 

 

 

 

 

電子殻と電子軌道,および収容電子数

電子殻

K

L

M

N

O

P

Q

電子軌道

1s

2s

2p

3s

3p

3d

4s

4p

4d

4f

5s

5p

5d

5f

5g

6s

6p

6d

6f

6g

6h

7s

電子軌道数

1

1

3

1

3

5

1

3

5

7

1

3

5

7

9

1

3

5

7

9

11

1

最大電子数

2

2

6

2

6

10

2

6

10

14

2

6

10

14

18

2

6

10

14

18

22

2

 

電子配置

 一般に,原子番号Zの原子にはZ個の電子がある。これらの電子が,原子の各電子軌道にどのように配置されるかは,次のような原理や法則による。

 まず,「1つの電子軌道には,2個の電子しか入ることができない。」これをパウリの原理という。量子力学によれば,電子のもつスピンに2種類あり,同一の電子軌道にはスピンの異なる電子が1対しか入れないという原理である。
 更に,原子の最も安定な状態はエネルギーの低い電子軌道から順に電子を満たした状態である。「一般に,内側にある電子殻の電子軌道ほどエネルギーが低い。同じ電子殻では,方位量子数lの小さいほどエネルギーが低く,spの順に電子が配置される。また,lの値が同じ電子軌道では,電子は異なる電子軌道から順に配置される。例えば,N原子の2p軌道の電子配置はpx1py1pz1となる。これは,同一の電子軌道に入るより電子間の反発が小さいためと考えられる。

 次に,電子軌道も考えた1H20Caの電子配置の順を示す


 

最外殻電子と原子の性質

元素の化学的性質の類似性は,最外殻電子の配置の類似性から説明できる。即ち,反応に関係するのは最外殻電子であり,その配置が似ている元素は同様の性質を示す。どの元素が類似した性質をもつかを生徒に考えさせ,周期律の学習の準備としたい。

 

 

 








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