トップ>化学I>第4部 有機化合物>第3章 酸素を含む脂肪族化合物>第1節 アルコールとエーテル
第1節 アルコールとエーテル
A アルコール
アルコール
►アルコール
無色の化合物で,炭化水素の水素原子をヒドロキシ基で置換した構造をしてい
る。ただし,ベンゼン環にヒドロキシ基が直接結合したものはフェノール類であ
り,アルコールではない。分子中のヒドロキシ基の数が1個のとき1価アルコー
ル,2個のとき2価アルコール,多数のとき多価アルコールという。また,ヒドロ
キシ基の結合している炭素原子に,炭化水素基が1個だけ結合し他は水素原子の
とき第一級アルコール,炭化水素基が2個のとき第二級アルコール,すべて炭化水
素基のときは第三級アルコールという。
低級な(炭素原子数の少ない)アルコールは特有の臭いをもち,水に溶けやすい
が,炭素原子数が多くなるにつれ溶けにくくなる。Cl〜C3のアルコールは,水と
任意の割合に溶ける。
主なアルコールの性質を下表に示す。
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アルコールの性質 |
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名 称 |
分子量 |
融点〔℃〕 |
沸点〔℃〕 |
密度〔g/cm3〕 |
水溶性 |
|
メタノール |
32.0
|
−97.78 |
64.65
|
0.79142 |
∞ |
|
エタノール |
46.1
|
−114.5 |
78.32
|
0.79
|
∞ |
|
1‐プロパノール |
60.1
|
−126.5 |
97.15
|
0.8035
|
∞ |
|
2‐プロパノール |
60.1
|
−89.5 |
82.4
|
0.7864
|
∞ |
|
1‐ブタノール |
74.1
|
−89.53 |
117.25
|
0.8095
|
7.1wt% |
|
2‐ブタノール |
74.1
|
−114.7 |
98.5(987hPa)
|
0.8029
|
7.5wt% |
|
エチレングリコール |
62.1
|
−12.6 |
197.85 |
1.12
|
∞ |
|
グリセリン |
92.1
|
17.8
|
154(7hPa)
|
1.2644
|
∞ |
|
ベンジルアルコール |
108.1
|
−15.5 |
205.41
|
1.04156
|
可 |
アルコールの名称は,1価アルコールは,対応する炭化水素の末尾の-eを-ol
に変えて命名する(置換名)。ヒドロキシ基の位置を示す必要があるときは,炭
素原子の番号で示す。2価,3価アルコールでは,末尾を-diol,-triolのように
変える。また,基官能名では,炭化水素基名にアルコールをつけて命名する。
慣用名を使うこともある。
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アルコールの名称 |
||
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示 性 式 |
基官能名・慣用名 |
置 換 名 |
|
CH3-CH2-CH2OH |
プロピルアルコール |
1-プロパノール |
|
CH3-CHOH-CH3
|
イソプロピルアルコール |
2-プロパノール |
|
CH2OH-CH2OH |
エチレングリコール |
1,2-エタンジオール |
|
CH2OH-CHOH-CH2OH |
グリセリン |
1,2,3-プロパントリオール |
|
C6H5-CH2OH |
ベンジルアルコール |
フェニルメタノール |
アルコールの化学的性質
メタノール
►メタノール
最も簡単な構造のアルコールで,木材の乾留などで得られる(木精)。揮発性,可
燃性,刺激臭のある無色透明で有毒な液体。融点−97.78℃,沸点64.65℃,密度
0.79142g/cm3(20℃),引火点16℃である。
工業的には,COとH2の混合ガスを,ZnO-Cr2O3を触媒として,250000〜300000hPa,
300〜400℃で反応させてつくる。
CO+2H2=CH3OH+129kJ
エタノール
►エタノール
代表的なアルコールで,古くから酒として利用されてきた(酒精)。物理的性質は
融点−114.5℃,沸点78.32℃,密度0.79g/cm3(20℃)で,室温では液体である。
従来は,デンプンや糖蜜などを原料として発酵によってつくられていたが,近年
エチレンを原料として工業的に合成されるようになった。
硫酸法による合成では,濃硫酸とエチレンから硫酸エステルをつくり,これを加
水分解してエタノールを得る。このときジエチルエーテルが副生する。
C2H4+H2SO4→C2H5OSO3H C2H5OSO3H+H2O→C2H5OH+H2SO4
直接水和法は1947年以後工業化され,最近新設工場では,ほとんどこの方法に
よっている。触媒として,ケイソウ土にリン酸が含まれたものを用いる。
C2H4+H2O→C2H5OH
エタノールは,水と濃度95.6%で共沸混合物(沸点78.15℃)をつくる。したが
って,単純な蒸留法では無水物を得られないので,CaOを加えて蒸留する。さら
に高純度にするには,マグネシウムリボンと少量のヨウ素を加えて加熱沸騰させた
後に蒸留する。
2C2H5OH+Mg→(C2H5O)2Mg+H2
(C2H5O)2Mg+2H2O→2C2H5OH+Mg(OH)2
B エーテル
►エーテル
エーテル結合-O-で2つの炭化水素基が結合した化合物である。炭化水素基が
同じ場合を単一エーテル,異なる場合を混成エーテルという。エーテル結合を含ん
だ環をつくるときは,環状エーテルという。脂肪族エーテルは天然には産出しない。
芳香族エーテルには植物中に存在し,香料として用いられるものがある。
一般に中性で快香のある揮発性の液体で,水にあまり溶けず,有機溶媒によく溶
ける。エーテル結合は比較的安定で,反応性に乏しく,酸により開裂を起こすだ
けである。この開裂も,酸の濃度が高く,反応温度も高い条件でないと起こりにく
い。
脂肪族エーテルは,空気に接触させておくと徐々に過酸化物に変わる。過酸化物
は危険なので注意する。過酸化物の検出にはFe2+の塩を使い,チオシアン酸カリウ
ムで血赤色になれば(FeV(SCN)n(3-n)+が生成),その存在を確認できる。過酸化物を除く
には,Fe2+水溶液で洗って過酸化物を分解するなどの方法がある。
主なエーテルを下表に示す。
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エーテルの性質 |
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|
名 称 |
分 子 式 |
融点〔℃〕 |
沸点〔℃〕 |
比 重 |
|
ジメチルエーテル |
(CH3)2O |
−141.50 |
−24.82 |
— |
|
エチルメチルエーテル |
CH3OC2H5 |
— |
6.6 |
0.72 |
|
ジエチルエーテル |
(C2H5)2O |
−116.3 |
34.48 |
0.71 |
|
エチルビニルエーテル |
C2H3OC2H5 |
−115.8 |
36.0 |
0.76 |
|
フェネトール |
C6H5OC2H5 |
−29.5 |
170.0 |
0.96 |
|
ジフェニルエーテル |
(C6H5)2O |
26.90 |
259.0 |
1.07 |
►ジエチルエーテル
エチルエーテル,エトキシエタン,酸化エチルともいう。代表的エーテルであり,
単にエーテルともいう。甘味,刺激臭のある無色の液体で,揮発性があり引火しや
すく,空気との混合物は爆発を起こす。吸収麻酔薬や溶剤として広く用いられてい
る。
工業的には,エタノール合成の副産物として得られている。
2C2H5OH→C2H5OC2H5+H2O