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第2節 水の電離とpH
A 水の電離
►水のイオン積
非常に鋭敏な計器を用いて水の電気伝導度を測定すると,純粋な水の場合でもそ
の値は0にならず,非常に小さい値ではあるが一定の伝導度になる。すなわち,純
粋な水の中にも電流を運ぶイオンが存在するわけで,このイオンの生成は水分子ど
うしの衝突と陽子の移行によって起こるものと考えられている。
H2O+H2O
H3O++OH-
この反応の平衡定数の値は,電気伝導度の正確な測定によって求めることができ
る。水の電離を表す式としては,一般にH2O
H++OH-が用いられ,これに
質量作用の法則を適用して得られる式としては,次の式が用いられる(正確には濃
度でなく活動度を用いる)。
![]()
純粋な水,または希薄水溶液の中では,水分子の濃度[H2O](水1l中の水分子の物質
量)はほぼ次の値をとり,一定であるとみなしうる。
そこで,[H+]・[OH-]=K[H2O]=const=Kw のKwを水のイオン積と称するよう
になった。
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pKwと温度の関係 |
|||||
|
温度〔°C〕 |
pKw |
Kw
|
温度〔°C〕 |
pKw |
Kw
|
|
0 |
14.9495 |
0.114×10-14 |
30 |
13.8330 |
1.47×10-14 |
|
5 |
14.7338 |
0.185×10-14 |
35 |
13.6801 |
2.09×10-14 |
|
10 |
14.5346 |
0.292×10-14 |
40 |
13.5348 |
2.92×10-14 |
|
15 |
14.3463 |
0.450×10-14 |
45 |
13.3960 |
4.02×10-14 |
|
20 |
14.1669 |
0.681×10-14 |
50 |
13.2617 |
5.47×10-14 |
|
24 |
14.0000 |
1.000×10-14 |
55 |
13.1369 |
7.30×10-14 |
|
25 |
13.9965 |
1.008×10-14 |
60 |
13.0171 |
9.61×10-14 |
B pH
►水素イオン指数pH
pHは水素イオン指数を表す記号で,英語読みでピーエッチまたはピーエイチ,
独語読みでペーハーと発音する。
pHを測定するには,水素電極の電位差測定による方法と比色測定による方法と
がある。実際には,次の3つの方法がよく用いられている。
a) pH試験紙;pH指示薬をろ紙にしみ込ませたもので,標準色と試料水をしみ
込ませた試験紙の示色とを比較する。誤差が大きく,pHの0.2ぐらいの差はご
く普通である。緩衝能力の小さい溶液では,pHが1ぐらいも違ってくる。
b) pH比色計;pH指示薬を緩衝溶液に加えてアンプルに封入した標準色と,同
量の指示薬を加えた試料水の示色とを比較する。わりあいに正確な測定ができて,
誤差は普通,pHで0.1以内である。
c) ガラス電極pH計;ガラス電極を用いて,溶液の水素イオンによる電極電位を
測定する器機である。かなり精密な測定ができるので,研究室などでよく用い
られている。普通の測定では,誤差がpHで0.1以下である。
|
pH標準溶液のpH |
|||||
|
温 度 〔°C〕 |
0.05mol/l |
酒石酸水素カリウム飽和溶液*2
|
フタル酸水素カリウム*3
|
リン酸二水素カリウム,リン酸一水素二ナトリウム*4 |
0.01mol/l |
|
0 |
1.67 |
― |
4.01 |
6.98 |
9.46 |
|
5 |
1.67 |
― |
4.01 |
6.95 |
9.39 |
|
10 |
1.67 |
― |
4.00 |
6.92 |
9.33 |
|
15 |
1.67 |
― |
4.00 |
6.90 |
9.27 |
|
20 |
1.68 |
― |
4.00 |
6.88 |
9.22 |
|
25 |
1.68 |
3.56 |
4.01 |
6.86 |
9.18 |
|
30 |
1.69 |
3.55 |
4.01 |
6.85 |
9.14 |
|
35 |
1.69 |
3.55 |
4.02 |
6.84 |
9.10 |
|
40 |
1.70 |
3.55 |
4.03 |
6.84 |
9.07 |
|
45 |
1.70 |
3.55 |
4.04 |
6.83 |
9.04 |
|
50 |
1.71 |
3.55 |
4.06 |
6.83 |
9.01 |
|
55 |
1.72 |
3.55 |
4.08 |
6.84 |
8.99 |
|
60 |
1.73 |
3.56 |
4.10 |
6.84 |
8.96 |
*1 KH3(C2O4)2・2H2O 12.71gを水に溶解して1lとする。
*2 KHC4H4O5を25±3〔°C〕の水に飽和させる。
*3 KHC8H4O4 10.21gを水に溶解して1lとする。
*4 KH2PO4 3.4gとNa2HPO4(無水)3.55gとを水に溶解して1lとする。
*5 NaB4O7・10H2O 3.81gを水に溶解して1lとする。
C 指示薬とpH測定
►酸塩基指示薬
pH指示薬,中和の指示薬,水素イオン濃度指示薬などとも呼ばれる。主なも
のの変色域とつくり方を次に示した。
(1) チモールブルー(略号TB):赤1.2〜2.8黄8.0〜9.6青;0.10gを95%エタノール20cm3
に溶かし,水で100cm3とする。
(2) ブロモフェノールブルー(略号BPB):黄3.0〜4.6青紫;0.01gを95%エタノール20cm3
に溶かし,水で100cm3とする。
(3) メチルオレンジ(略号MO):赤3.1〜4.4橙黄;0.10gを水に溶かし,100cm3にする。
(4) メチルレッド(略号MR):赤4.2〜6.2黄;0.20gを95%エタノール90cm3に溶かし,水
で100cm3にする。
(5) リトマス:赤4.5〜8.3青;0.50gを95%エタノール90cm3に溶かし,水で
100cm3にする。
(6) ブロモチモールブルー(略号BTB):黄6.0〜7.6青;0.10gを95%エタノール20cm3に溶
かし,水で100cm3にする。
(7) フェノールレッド(略号PR):黄6.8〜8.4赤;0.10gを95%エタノール20cm3に溶かし,
水で100cm3にする。
(8) クレゾールレッド(略号CR):赤0.2〜1.8黄7.0〜8.8赤;0.10gを95%エタノール20cm3
に溶かし,水で100cm3にする。
(9)フェノールフタレイン(略号PP):無8.2〜9.8赤;0.10gを95%エタノール90cm3
に溶かし,水で100cm3にする。
(10) アリザリンイエローGG(略号AY):黄10.0〜12.1赤;0.10gを水に溶かして,100cm3に
する。
指示薬の呈色は,pHによりその構造が変化するためと考えられている。これは
指示薬自身が弱酸や弱塩基であり,pHによって分子からイオンへ変化し,分子と
イオンの濃度比で色相が変わるためと説明されている。たとえば,指示薬を弱酸
HAとすると,その電離は
HA
H++A-
したがって,指示薬を酸に加えたときは,電離が抑制されてほぼ全部が分子HAと
なり,分子の示す色(分子色)を呈することになる。これに塩基を加えていくと,ま
ず酸が中和され,その後指示薬が中和されてA-が増加するので,イオンの示す色
(イオン色)を呈することになる。
これを電離平衡で説明すると,平衡定数は次式で表される。
![]()
したがって,分子色とイオン色がほぼ等しくなるときの[H+]が変色域の中央にく
ると考えられ,[H+]が変化するにつれて分子色とイオン色の比も変化し,その比
がある程度大きくなると肉眼でも色相の変化として認められるようになる。
チモールブルーのように二段階に変色域をもつものは,構造が二段階で変化する
ことによる。フェノールフタレインの場合も二段階に変色し,強アルカリの液では
無色になる。