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第4節 物質の状態
A 物質の状態
►分子の運動と固体・液体・気体の状態
(1) 固体 温度が下がって粒子の運動エネルギーが小さくなり,粒子間に働く結合力
で粒子が規則正しく密に並んだ状態。したがって,一定の形,体積をもつ。この状態
で粒子が行う運動は,一定位置を中心にした振動に限られる。
(2) 液体 固体の加熱により,温度が上昇して粒子の運動エネルギーが大きくなり,粒
子間に働く力による束縛を振り切って一定位置から離れて動けるようになった状態。
まだ粒子間の引力が多少残っており,粒子はほぼ密着しているが,一定位置に固定さ
れないので,一定の形を示さない。
(3) 気体 液体を加熱してさらに温度を上げると,粒子の熱運動に比べて粒子間の引
力がほとんど無視できるようになり,粒子が自由に運動できるようになった状態。気
体では,物質の種類や分子量に関係なく,一定体積中の粒子数がほぼ似た状態になる。
→(モル体積)
参考 結晶と無定形固体
(1) 結晶 単結晶は,外見的に明瞭な結晶形を示すことが多いが,狭い意味ではこれを
結晶という。広義には,外見上結晶の形が明らかでない小結晶の集まり(多結晶)も結
晶という。核酸やタンパク質のような高分子物質でも部分的には結晶構造をもつも
のが多く,結晶は,一般的には固体の正常な状態ということができる。
(2) 無定形固体(非結晶固体) 塩化ナトリウムやナフタレンのような結晶に対して,
ガラス,ゴム,寒天,樹脂などは無定形固体である。このような無定形固体は,一定の
形をもたないし,一定の融点をもたない。
水晶を高温にして液体にしたあとで冷却すると,非結晶性の石英ガラスが得られ
る。水晶は1447℃でとけるが,石英ガラスは熱するとしだいに軟らかくなり,いつと
はなしに液状になってしまう。
水晶の結晶ではSiO2が網目構造の規則正しい配列をつくっているのに対して,石
英ガラスは網目構造はつくっているが,それがきわめて不規則であって,結合の強さ
もまちまちである。したがって温度を上げていくと,弱い部分から結合が切れて軟ら
かくなっていくので,明確な融点を示さない。
無定形固体は,状態は固体であるが,粒子配列の上では液体に近く,液体状態の物
質をそのまま固化させた物質とも考えることができる。
参考 液晶(液晶ディスプレイ)
一般に,「液晶ディスプレイLCD」のことを「液晶」といっている。厳密には,「液
晶」とは,液体と固体の中間にある物質の状態(例えば,イカの墨,セッケン水など)を指
す言葉である。見た目にはほぼ透明な液体で,すこし粘りがある。液晶は,1888年にオ
ーストリアの植物学者ライニツァーによって発見された。1963年,RCA社のウイリアム
ズは,液晶に電気的な刺激を与えると,光の通し方が変わることを発見し,5年後に同社
のハイルマイヤーらのグループが,この性質を応用した表示装置をつくった。これが液
晶ディスプレイの始まりである。
液晶物質のほとんどは,細長い棒状の分子からなる有機化合物で,自然状態では分子
がゆるやかな規則性をもって並んでいる。この液晶に電圧をかけると分子の並び方が
変わり,その結果,光の通し方が変わることになる。TN型液晶とよばれるものでは,電
圧をかけていない状態では光が通り,電圧をかけると光が遮断されて画面は黒くなる。
つまり電圧がひきがねとなって,液晶が光のシャッターの機能を果たすことになる。こ
れが原理である。(シャープ先端技術ライブラリーVol.1より)
LCDの長所は,薄型で低電圧作動,低消費電力であるが,欠点としては,光に弱く,応
答度が遅く,表示密度が小さいことがあげられている。しかし,目下急ピッチで改良が
進められている。(化学大辞典)
B 状態変化
融点・沸点
►昇華
固体から気体,気体から固体となる変化を,ともに昇華という。ヨウ素,ショウノウ,
ナフタレン,二酸化炭素などの無極性分子からなる物質に昇華がよく見られる。固体は
液体と同じように,一定温度で物質の種類により定まった蒸気圧を示す。昇華性物質は,
室温付近でもその蒸気圧が大きい。普通は昇華しない物質でも,外圧を極端に小さく
すると,昇華する。氷も,その三重点以下の圧力にすると昇華する。
(水の状態図を参照)
|
氷の蒸気圧 |
|
|
温度 |
蒸気圧 |
|
〔℃〕 |
〔atm〕 |
|
0 |
6.05×10-3 |
|
−5 |
3.96×10-3 |
|
−10 |
2.57×10-3 |
|
−15 |
1.63×10-3 |
|
−20 |
1.01×10-3 |
参考 状態図と相律
物質の状態と,温度・圧力の関係を示した図を,物質の状態図という。次に水の状態
図を示す。
次ページの図のように,状態図は横軸に温度,縦軸に圧力をとって示す。各状態間の
境界線は,昇華曲線,融解曲線,蒸気圧曲線と呼ばれていて,この線上の条件では2つの
状態の間で平衡が成り立っており,2つの状態が安定に共存している温度と圧力を示す。
3つの境界線が交わる点Tは,固体・液体・気体の3つの状態が共存している圧力と温度
であり,とくに三重点と呼ばれている。(水では4.58mmHg,0.01℃)。

ギブスGibbsの相律によれば,成分物質の数n,共存する相の数Pのとき,平衡系の自由
度Fは,次式で表される。
F=n+2-P
水の相平衡では,成分は水だけであるからmは1になり,自由度Fは(3-P)となる。した
がって,水の状態図の各点において,自由度は次のようになる。
(ア) 各曲線の間の部分 すべて1つの状態(氷,水,水蒸気のどれか1つ)であるから相
の数Pは1となり,F=3-1=2となる。したがって,圧力と温度は両方とも自由に変えられ
る。
(イ) 各曲線上の部分 2つの状態が共存するから,相の数Pは2となり,Fは1となる。
したがって,温度と圧力の一方は自由に決められるが,それに伴って他方は決まって
しまう。
(ウ) 三重点上 3つの状態が共存するから,相の数Pは3となり,Fは0となる。したがっ
て,温度・圧力はともに一定値で決まってしまう。
►水の状態変化
固相から液相に変わる場合,一般には密度の減少を伴うが,表からわかるように,氷
の融解の場合は逆になる。これは,氷が水素結合により隙間の多い構造をとるためで,
液体ではその隙間が水分子で満たされる。したがって,状態図の融解曲線も多くの物質
と異なり,傾きが負の値をとる。
また,気体中の分子間の平均距離は,表からわかるように液体の12倍になっている。
他の物質でも同様であり,約10倍となる。
水の密度,体積,分子間距離(圧力1atm)
|
状態 |
温度 〔℃〕 |
密度 〔g/cm3〕 |
1molの体積 〔cm3〕 |
1分子が占める体積 〔cm3〕 |
分子中心間の平 均距離〔cm〕 |
|
固相 液相 液相 気相 |
0 0 100 100 |
0.915 1.000 0.958 5.954×10-4 |
19.7 18.0 18.8 30600.0 |
3.3×10-23 3.0×10-23 3.1×10-23 5000×10-23 |
3.2×10-8 3.1×10-8 3.1×10-8 36.9×10-8 |
氷の中の酸素原子は,図のように0-H……0のような水素結合によって4つの酸素原子
で正四面体状にかこまれている。したがって,1つの水分子は4つの水分子と水素結合で
結ばれ,ダイヤモンドに似た結晶構造をしている。このときの酸素原子の間の距離(0-H
……0)は0.276nmで,液体の水に比べて体積が大きく,また密度は0.915g/cm3と水よりも
小さい。
