トップ新編生物I 改訂版>第5部 体液と恒常性>第2章 肝臓と腎臓の働きA 肝臓の働き

A 肝臓の働き

 

肝臓は以下のような多くの機能をもっている。

1.胆汁の生成

2.栄養素(グルコースやアミノ酸)とビタミンの代謝

3.解毒:アルコール・アンモニア・毒物・薬物などの解毒

4.ホルモンの不活性化

5.血漿タンパク質(アルブミンや血液凝固因子など)の合成

 

◆脂溶性毒物の解毒

体外から入った毒物で水溶性のものは腎臓から排泄されるが,脂溶性のものは肝臓でいったん水溶性にされて腎臓から排泄されるようになる。水溶性にするには,二段階のステップを踏む。最初のステップとして,毒物は肝臓の小胞体内で酸化,還元,加水分解などを受ける。この段階で毒性は弱まる。こうして変化した毒物はOH基,COOH基,NH2基などをもつようになり,こうなったものが次のステップで抱合を受ける。抱合とは外来の毒・薬物やホルモン・胆汁酸などが,親水性の分子に付加される反応のことで,グルクロン酸抱合,グルタチオン抱合,硫酸抱合,グリシン抱合などがある。グルクロン酸抱合の場合,UDPグルクロン酸からグルクロン酸が毒物へと転移される。グルクロン酸はきわめて水に溶けやすい分子であり,これと化合することにより毒物の水溶性が高まり腎臓から排泄されるようになる。

 

◆アルコールの分解

エタノールの90%以上はアルコールデヒドロゲナーゼによって酸化されアセトアルデヒドになる。これはさらにアルデヒドデヒドロゲナーゼにより酸化されて酢酸となる。酢酸はアセチルCoAとなり,これはクエン酸回路に入ってエネルギー生産に使われるほか,脂肪酸の合成などに使用される。

 

尿素の合成

ほ乳類・両生類(成体)などにおいてはタンパク質分解産物は結局尿素となって尿中に排出される。アンモニアとして排出するよりは,尿素のほうが毒性が少ないので濃縮して排出することが可能であり,結果として水の排出を少量にとどめることができる。このことは水中生活から陸上生活への移行に際して重要な適応的意義をもつ。ほ乳類ではこの尿素の合成は肝臓で行われる。尿素合成の反応式は結局は次のように示される。

  2NH3CO2―→CO(NH2)2H2O

尿素合成のしくみは次のようにして明らかになった。

@ アルギナーゼによるアルギニンの加水分解(コッセル,ダーキン,1904)

 

アルギニン

―→

尿素+オルニチン

 

 

 

アルギナーゼ(肝臓)

 

A クレブスは,肝臓の切片にオルニチンを加えておくと尿素の合成が触媒的に促進されることを明らかにした。クレブスは@およびAから,オルニチンとアルギニンとの中間物質としてシトルリン(最初スイカから分離された,古賀・尾岳,1914)に注目し,実験した結果シトルリンも尿素合成に働いていることを認めた。

B クレブスらは1932年に,@,Aをもとにしていわゆる尿素合成のオルニチンサイクルをまとめた。

  2NH3CO2H2OCO(NH2)22H2O

C 現在では,クレブスのオルニチンサイクルは23の点で補正を受けている。

 つまり,オルニチン―→シトルリンの過程でNH3CO2とは直接このサイクルに入ってシトルリンになるのではなく,カルバミルグルタミン酸回路をへてカルバミルリン酸というかたちで入ってくることである。また,シトルリン―→アルギニンの過程も,途中にアルギノコハク酸がそう入される回路反応と共役していることが明らかになった。

 

 

 

 









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