トップ新編生物I 改訂版>第5部 体液と恒常性>第1章 恒常性C 体液とその循環

C 体液とその循環

 

◆循環の意義

 多細胞動物では,多くの細胞は外界と直接接していないので,細胞周囲に有用なものを速やかに運び,不要なものを速やかに除去するしくみがないと,細胞は安定した機能を営むことができない。体液を循環させることにより,積極的にこれらを移動させることができる。また,体内での情報伝達物質(ホルモン)の運搬,体温の運搬などの役割がある。すなわち,総じて内部環境の恒常性維持のために,体液は循環するといえる。

@ 外界から取り入れた酸素や養分の運搬

酸素の運搬 肺から体内の各細胞へ

養分の運搬 小腸や貯蔵する組織から体内の各細胞へ

A 体内の細胞で生産された二酸化炭素,老廃物の運搬

二酸化炭素の運搬 体内の各細胞から肺へ

老廃物の運搬 体内の各細胞から腎臓・汗腺などへ

(アンモニアは肝臓で尿素に変えられてから)

B ホルモンの運搬 内分泌腺から標的器官へ

C 体温の運搬 筋肉や肝臓で温められた血液が全身へ

 

◆閉鎖血管系と開放血管系

@ 閉鎖血管系 脊つい動物,無脊つい動物のうち環形動物・軟体動物(頭足類:イカ・タコ類)

心臓 動脈 毛細血管 静脈 心臓

血管は,途切れることなく,閉じた回路をつくっている。

環形動物は心臓ではなく,蠕動運動をする背血管によって血液を送る。

A 開放血管系 無脊つい動物のうち軟体動物(頭足類以外:貝類など)・節足動物 (昆虫・エビのなかまなど)

心臓 動脈 (組織) 静脈 心臓

血リンパは,動脈枝の開口から直接組織の間隙に流れ,呼吸器官などを経て心臓に戻る。

 

◆循環のしくみ

@ 心臓の構造と働き ポンプの働きをすることによって,血液循環の原動力となっている。ほ乳類では,右心房・右心室・左心房・左心室の4つの部屋からなる。心臓には,切り離されても自ら拍動する自動性がある。細胞レベルでも自動性がある。

・右房室弁(三尖弁),左房室弁(僧帽弁)…それぞれ心室から心房への血液の逆流を防ぐ。弁の下方は,腱になっていて,心室内の乳頭筋につながり反転しないようになっている。心房と心室が交互に規則正しく収縮することによって,ポンプとしての働きをする。

・刺激伝導系 心房と心室の交互の収縮は,心臓内の刺激伝導系による。

洞房結(とうぼうけっせつ:ペースメーカー)・房室結節・His束・プルキンエ繊維右心房の上大静脈基部にある洞房結(ペースメーカー)から発せられた電気的な信号が刺激伝導系を経て心房,心室に伝わり,収縮が起きる。

 

図 刺激伝導系

 

・自律神経による拍動の調節

交感神経   拍動を促進

副交感神経  拍動を抑制

 

A 動脈と静脈

・動脈 中膜に輪状平滑筋が発達する。弾性繊維が融合して弾性板をつくる。つぶれずにまるい形を保つことができる。

・静脈 内膜に弁を形成し,血液の逆流を防ぎ,心臓方向への血流を助ける。弾性繊維は少なく,血液がないときは,自身でまるい形を保てない。

 

B 毛細血管 組織における体液の移動

動脈側 心臓からの圧力によって,血液の液体成分である血しょうが組織に出る。

静脈側 浸透圧差によって,組織から血管内に組織液が戻る。一部の組織液は,組織に分布する毛細リンパ管に入る。

 

図 Starlingの法則 

 

◆リンパ系

@ 体液の回収 組織液は,毛細血管に回収されるだけでなく,一部は組織に分布している毛細リンパ管中に入る。成分としては,組織液中のタンパク質を含めたほとんどの成分がとり込まれる。毛細リンパ管は,しだいに集まって太い管となり,最終的には,鎖骨下静脈に合流する。

A 脂肪の輸送 小腸の柔毛では,消化されて小さくなった脂肪滴が吸収される。また,脂肪酸とグリセリンにまで消化されたものは吸収された後再び脂肪になる。これらの脂肪滴は柔毛内のリンパ管(管という:小さな脂肪滴によって乳糜…乳かゆのように白濁することによってそうよばれる)に入る。下半身のリンパ管に合流して胸管を経て左鎖骨下静脈から血液に入る。

B 免疫現象  E体液による生体防御

 

◆リンパ液の移動 ほ乳類のリンパ管には,心臓のようなポンプがない。内側に弁があり,リンパ液の逆流を防ぎ,体を動かしたような場合に少しずつリンパ液が移動していく。は虫類以下には,リンパ心臓(リンパ管の一部が拍動)がある。

 

 

 









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