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B 水生生物の浸透圧調節

 

◆魚類の浸透圧調節

海水産硬骨魚類の血液の浸透圧は,海水と比べて低く,鰓(えら)やひれから脱水されやすい。そのため海水を飲んで水を補い,等張尿を少量排出して水の消失を防ぎ,能動輸送によって鰓から塩類を排出する。淡水産硬骨魚類の血液は,淡水より浸透圧が高く,鰓やひれから吸水しやすい。そのため淡水を飲まず,薄い尿を多量に排出して体液の薄まりを防ぐ。

 ウナギやサケ類などは,生息環境が海・川と変化しても体液の浸透圧はほぼ一定に保つことができる(広塩性)。一方,コイなどは外液の狭い範囲でしか体液の浸透圧を調節できず,ある範囲を越えれば死んでしまう。

 

海水産の軟骨魚類の血液の浸透圧は海水のそれとほぼ等しいが,塩類による浸透圧は約12で,他は尿素やトリメチルアミンオキシドによっている。エイ・サメ類の肉にアンモニア臭がするのはこれらの尿素などが分解してアンモニアを生ずるためである。

 海鳥は食物や海水を飲んだことに由来する過剰な塩類を排出する塩類腺をもっている。分泌物は鼻腔をへて排出される。NaClを海水の約2倍に濃縮して排出することができる。

ウミガメの塩類腺は目がしらの所に開口している。カメの“涙”はこの分泌物のことである。

海鳥の塩類腺

 

◆甲殻類の浸透圧調節

ケアシガニMaiaのようなカニを希薄な海水中に入れると,水が体内に入りこむ。そのため体液の浸透圧が低下し,極端な場合には死んでしまう。海産であるカニの多くは,海水の濃度の限られた変化にしか耐えられない。

 ミドリイソガニCarcinusの場合には,体液の浸透圧が調節できるので希薄な海水中でも生活できる。つまり,浸入した水を緑腺(=触角腺)から等張尿として排出する。水とともに塩類を失うので,不足した塩類は鰓から能動的にとりこんで体液の浸透圧を調節している。

 モクズガニEriocheirはさらに高い浸透圧調節機能をもち,海水より淡水まで広い浸透圧の変化に耐えることができる。このカニは淡水中に生活するが,卵や幼生はそれには耐えられないので海にもどって産卵する。このような生活を可能にする浸透圧調節能力を有していることになる。塩水湖にすむアルテミアArtemiaなども高い浸透圧調節能力をもち,NaClの含有量0.26%〜30%の環境にすめる。

 

 

 









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