トップ新編生物I 改訂版>第5部 体液と恒常性>第1章 恒常性A 体液と恒常性

A 体液と恒常性

 

◆恒常性 ホメオスタシス(homeostasis)

生物体が,外部及び内部の諸変化の中で,形態的・生理的状態を安定に保って個体の生存を維持する性質のことをホメオスタシスといい,日本語では恒常性と訳される。また,別の言い方では,外部環境の変化に対して内部環境を一定に保つ働きともいわれる。ホメオスタシスという概念は,アメリカの生理学者W.B.Cannon(1932)によって提唱されたもので,homeo(類似)stasis(持続)という2つのギリシア語からの造語である。フランスの生理学者C.Bernardの内部環境の考え方を発展させたものである。

 内部環境とは,ベルナールのmiliéu intériéurの訳であるが,個体の内部で細胞や組織を取り巻き,それらを浸す体液,すなわち血液・リンパ液・組織液のことであるということができる。それに対し,外部環境は,個体の外部の環境のことで,主に物理的環境(温度・浸透圧など)や化学的環境(糖・イオンなど)を指していたが,最近は生物学的あるいは精神的要素も含まれるようになっているという。よって,広い意味では,ホメオスタシスをストレスに対する防御反応と捉えることができる(ホルモンの分子生物学ホメオスタシスp.1竹井祥郎日本比較内分泌学会編(1997))

 ある機能や状態からのわずかなずれは,逆方向への反応によって補正され,結果として軽微なある幅をもった変動しか示さないように調節される。これらのしくみの多くは,自律神経系・内分泌系などによって無意識に行われる。具体的には,体液成分,浸透圧,pH,体温などが細胞の活動に適した一定の範囲に保たれている。恒常性の維持に働くしくみの多くは,自律神経系と内分泌系が重要な役割を果たしているが,最近は,免疫系も含める考え方が台頭している(同上)。恒常性の維持を,ストレスから体内環境を守る生体防御反応と考えれば,細菌感染などの生物学的ストレスから守る免疫系もまた恒常性の維持に働くということができる。

 

◆体液:多細胞動物の体内の液体

(1) 細胞内液と細胞外液に大別されるが,教科書では,細胞外液をさす。

(2) 体内の細胞を取り巻く内部環境となる。

(3) 血液リンパ液組織液がある。

(他に脳脊髄液も体液といえるが,高校の授業においては,上記3者を体液としている。)

血液リンパ液組織液は,後述するように,液状成分や白血球の一部などは,それぞれ別の管中に移動して循環することもあるので,これらは,その存在する場所によって定義したほうが実際的であるといえよう。

 

@ 血液:血管内に存在する体液

・有形成分(細胞成分):赤血球・白血球(リンパ球を含む)・血小板

・液体成分:血しょう

A リンパ液:リンパ管内に存在する体液

・細胞成分:リンパ球

・液体成分:リンパしょう

B 組織液:組織にあって細胞を取り巻く体液。直接の内部環境となる。

C 血リンパ:無脊椎動物の開放血管系では,血液とリンパ液の区別がつかないので,この体液を血リンパという。

 

 

 









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