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D 効果器

 

筋収縮

筋肉には,骨を動かす骨格筋,律動的に収縮する心筋,内臓の平滑筋とがある。前二者には,筋原繊維とよばれる収縮構造があり,そのため横紋筋とよばれる。平滑筋は単核細胞で,細胞内に収縮に関与するアクチンフィラメントとミオシンフィラメントが乱雑に存在し,両者間の滑りによってゆっくり収縮する。骨格筋では,筋原繊維内の両フィラメント間の滑りによって速やかに収縮する(0.5μm/)

滑り

筋収縮の仕組みは滑り (sliding)とよばれる現象である。ミオシンフィラメントから突きでた頭部がアクチンフィラメントを両側から中央部へ滑走させる。アクチンフィラメントには方向性があり,かならず矢じり方向へ滑る(矢じりは,ミオシン分子を結合させたときにできる構造である)。ミオシン頭部はATPと結合して,ADPPに分解したときに生ずるエネルギーによってアクチンフィラメントを動かす。筋原繊維の単位サルコメア内ではミオシンフィラメントを中央に位置させるスプリングがZ線からミオシンフィラメントに張られている。

 

カルシウムの役割

筋収縮は神経からの刺激が筋細胞膜を興奮させることによって始まる。興奮は細胞膜が細胞内に突出したT管によって筋原繊維を取りまいている筋小胞体に伝えられ,小胞体中に蓄積されているカルシウムイオンを放出させる。カルシウムイオンはアクチンフィラメント上のトロポニンと結合してアクチンを活性化させミオシンとの反応をひき起こす。そこで滑りが生じ,収縮する。小胞体膜上のカルシウムポンプがATPを分解しながらカルシウムイオンを小胞体中に取りこむと,アクチンは不活性化して弛緩する。

 

◆興味のある話  筋収縮の研究史

 筋収縮研究の基礎は,1864年にドイツのキューネ(18371900)がカエルの筋肉から主要タンパク質ミオシンを抽出したことに始まった。キューネは酵素の命名者である。

1939年,旧ソ連のエンゲルハルト(18941984)はミオシンがATPアーゼ活性を示すことを発見した。この報告に刺激されてハンガリーのセント=ジェルジ(18931986)は,キューネのミオシンが,実はミオシンと他のタンパク質であるアクチンとの複合体であることを明らかにし,アクトミオシンがATPによって収縮することを示した(1942)

1954年,イギリスのアンドルー・ハックスリー(1917年〜)とヒュー・ハックスリー(1924年〜)は,滑り説を提唱した。ミオシンフィラメントとアクチンフィラメントが互いに滑りこむことによって筋収縮が起こるとする説である。この滑り説は,光学顕微鏡や電子顕微鏡による形態,X線回折による微細構造,生理学,生化学的研究によって支持された。

 生体内では,筋肉は神経の刺激によって収縮し,弛緩する。そのしくみは,東京大学の江橋節郎(19222006)によって解明された(19611965)。神経による筋細胞膜の興奮は,T管によって筋細胞内の小胞体に伝達され,カルシウムを放出する。カルシウムは,アクチンフィラメント上のトロポニンという調節タンパク質に結合してアクチンを活性化させ,ミオシンとの反応を起こさせて滑りを引き起こす。カルシウムが小胞体に取りこまれると,ミオシンとアクチンの反応は停止して弛緩する。

 

べん毛運動

ベん毛と繊毛は,同じ構造をもっている運動器官で,精子の尾のように数が少なく,長いものはべん毛,細胞の表面が突出した細胞小器官であり,ゾウリムシの表面にある短く数多いものは繊毛とよばれる。

両者とも,微小管(直径25nm)からできている。基本構造は9本の微小管が環状に並び,中心に2本の微小管がある。環状の微小管は2本が合一したものであり,一方の側に腕があって,となりの微小管に接している。腕はダイニンとよばれる運動タンパク質で,ATPを分解しながら接する微小管を滑走させ,べん毛運動をひき起こす。

 

 

発光

発光する動物は数多く知られている。原生動物 (ヤコウチュウ),腔腸動物(ウミサボテン),軟体動物(ヒカリカタツムリ,ホタルイカ),甲殻類(ウミホタル),昆虫類(ホタル),魚類(マツカサウオ)などである。

 白熱電灯では電流によって生じた熱エネルギーの約3%が可視光線に変化するが,生物発光では化学エネルギーが90%以上の効率で光エネルギーとなり,発熱をともなわない冷光である。

 ホタルの発光組織では,ルシフェリン(発光物質)とルシフェラーゼ(発酵酵素)とがあり,ATPと酸素を消費しながら発光する。ホタルの発光は異性の誘引・確認信号となる。

 

 

 









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