トップ新編生物I 改訂版>第3部 遺伝>第3章 遺伝子の本体B 遺伝子の本体=DNA

B 遺伝子の本体=DNA

 

◆DNAの二重らせん構造

DNAは分子量100万以上の高分子化合物であるが,その構造は単純なヌクレオチドのくり返しにすぎない。DNAを分解するとヌクレオチドとよばれる単位になる。ヌクレオチドは塩基+糖+リン酸であり,リン酸と糖はどれも同じであるが,塩基だけ4種類,アデニン・グアニン・シトシン・チミンが関与している。

DNAの構造の研究は,まずシャルガフ(E. Chargaff)らによる4つの塩基の割合を調べた結果から始まった。その結果わかったことは,アデニンとチミンの量は常に等しく,グアニンとシトシンの量は常に等しいということである。その後,ウィルキンス(M.H.F. Wilkins)X線回折でDNA内の分子の配列を調べた。これらの結果をもとにして,ワトソン(J.D. Watoson)とクリック(F.H.C. Crick)は, 1953DNAの立体構造のモデルを提案した。

この構造の特徴は,遺伝情報の担い手である塩基配列が保存されやすいように二重らせんになっており,常にアデニンとチミン,グアニンとシトシンが結合していることである。この塩基の結合は水素結合という弱い結合で,70℃ぐらいに熱すると,結合が離れてしまう。再びこれらを静かに冷却すると,もとの二重らせんにもどるが,急に冷却すると,一重らせんのDNAが得られる。

染色体の外側は膜でおおわれ,内部にタンパク質性の基質と,DNAと塩基性タ

ンパク質(ヒストンなど)よりなる糸状部分がある。

分裂期にない染色体(染色糸)では,DNAと塩基性タンパク質が伸びた状態になっている。DNAはヒストンが球状になったものにからみついている。このDNAとヒストンの混合物をヌクレオソーム(nucleosome)という。核分裂にはいると,このヌクレオソームがコンパクトに折りたたまれ,らせん状になる。このことは,次の図で示される。また,ヒストンはH2AH2BH3H4がそれぞれ2分子ずつ8量体の形で球状になり,それにDNA糸が巻きついている。もう1つのヒストンであるH1は,ヌクレオソームを安定化させるのに働いている。

核分裂にはいる前の間期に, DNA合成が行われることがわかっているので,分裂を始める前にDNAの複製が終わり,量的にも倍化されている。なお,染色体には,ヒストン以外のタンパク質 (非ヒストンタンパク質)も,基質などに含まれている。

 

DNAの複製

核分裂の際,染色体は縦に2つに割れて,それぞれが2つの娘核に入るが,DNAは分裂前に合成されて倍化し,娘染色体へ分かれていく。このとき,DNAは単に量が2倍になるだけでなく,正しく複製される。

 DNAが複製される際は,まずATGCの間の結合が切れて,2つのらせんが離れる。それぞれのらせんに新しいらせんが加わって,2組みの二重らせんがつくられる。このとき,もとのAのところにはTTのところにはAGのところにはCCのところにはGをもつヌクレオチドが結合する。したがって,新しく合成されたDNAの構造(塩基の配列順序)は,もとのDNAの構造とまったく同じである。

 このようにして新たに合成されたDNA2本鎖のヌクレオチド鎖のうち1本は古いものとなり,それを手本(鋳型)にして新しいヌクレオチド鎖が合成されたわけである。このような複製の様式を半保存的複製とよんでいる。これも,ワトソンとクリックの考えた仮説であるが,それを裏付ける実験が1958年にメセルソンとスタールによって行われた。彼らは,セシウムやショ糖の密度勾配をうまく利用した超遠心分離法で,14N15Nをそれぞれ含むDNAのわずかな密度の差を明らかにして,半保存的複製を証明した。その後,ケインズ(1963)がオートラジオグラフ法によって細胞内でのDNAの複製が半保存的に行われることを明らかにし,また,真核生物においても,フィルナー(1968)がタバコの培養細胞を用いて確証している。

 

◆ヒトゲノム計画

ゲノムにはたくさんの遺伝子が並んでおり,タンパク質をコードする領域ばかりでなく,遺伝子の発現を調節する領域などの情報が書き込まれている。ゲノムプロジェクトにより遺伝子のおおよその数とゲノム上の位置はわかってきたが,機能が明らかにされていない遺伝子が多くある。しかし,塩基配列を知ることにより,機能を予測したり,機能の解明に向けた実験計画を組み立てたりすることができる。

ヒトの他に大腸菌,酵母,ラン藻,シロイヌナズナ,イネ,線虫,ショウジョウバエ,ホヤ,ウニのゲノムの配列が決定されている。驚いたことに,多細胞動物の遺伝子の数と遺伝子の種類は,どの動物もほとんど同じであることが明らかになってきた。たとえば,2006年の11月に発表されたウニの全ゲノム配列を見ると,遺伝子の数はヒトとほぼ同じであり,眼や脳をつくる遺伝子もヒトとほとんど同じものを持っていた。しかし,形態が全く異なることも事実である。遺伝子の発現調節領域の違いがヒトとウニの違いを生じさせているものと考えられている。さらに多くの種のゲノム解読が進められており,これらを比較することにより進化が解明されると期待されている。

 

◆遺伝子診断

既知のクローンに通し番号をつけ,各クローンをスライドガラス上に,高密度で固定したものをマイクロアレイという。フォトリソグラフィー(集積回路のプリント基板を焼き付ける技術)を用いて,1pの基盤上に100万種類のオリゴヌクレオチドを合成・配置したマイクロアレイを,特にDNAチップという。DNAチップを用いることにより,遺伝病になる可能性を迅速に検定できるようになった。ヒトのゲノム配列の個人差は約0.1%であり,そのほとんどは1塩基が異なる点変異である。これをスニップスSNPs(Single Nucleotide Polymorphisms:一塩基多型)といい,ゲノム上に300万個以上ある。スニップスは高密度で存在するので,個人の多型をとらえるための遺伝マーカーとして有用である。DNAチップと組み合わせると,少量のDNAスニップスを検出することができる。塩基の変異により引き起こされる遺伝子の異常発現や,タンパク質の機能異常ががん化を促進する。スニップスを検出することにより,これらの病気の予知(遺伝子診断)が行われるようになってきた。

 

 

 

 

 









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