トップ新編生物I 改訂版>第3部 遺伝>第2章 遺伝子と染色体C 伴性遺伝

С 伴性遺伝

 

◆伴性遺伝

性染色体上にある遺伝子による遺伝のことで,性染色体に遺伝子が存在することを性リンケージ(sex linkage)という。たとえばXY型の場合,Y染色体上に対立遺伝子がなく,X染色体上の遺伝子によって遺伝する場合,その遺伝子は劣性であっても,その作用が現れる。一般には上記のような場合を伴性遺伝という。血友病,赤緑色覚異常などは,ヒトの伴性遺伝の典型的なものである。

 

◆眼の色の遺伝

キイロショウジョウバエの白眼を現す遺伝子は突然変異によって生じた劣性遺伝子である。

 伴性遺伝を説明するときのポイントとして,次の点に留意しておきたい。

 @ ](Z)染色体上の遺伝子に対立する遺伝子はY(W)染色体上にない。

 A 劣性遺伝子は,対立する優性遺伝子がない場合には単独で(ホモ接合でなくても)劣性形質を現す。

 なお,この例の場合,両親(P)の組み合わせには,次の4通りがある。

 @白眼♀(ww)×白眼♂(w)  A赤眼♀(WW)×白眼♂(w)

 B白眼♀(ww)×赤眼♂(W)  C赤眼♀(WW)×赤眼♂(W)

 

◆赤緑色覚異常

色の区別ができない状態を色覚異常という。ヒトの色覚異常には全色覚異常と部分色覚異常とがある。全色覚異常は色をまったく感じず,明暗の差のみ感じるもので,きわめてまれにしか現れない。全色覚異常には常染色体上にある劣性遺伝子によるものと非遺伝性のものとがあるといわれる。

 部分色覚異常の大部分は赤緑色覚異常で,赤と緑の識別がつかないか識別能力の弱い(色弱)ものであるが,くわしくは緑色覚異常と赤色覚異常とに区別される。日本人の赤緑色覚異常の頻度は,男性で約67%,女性では約0.40.6%といわれる。

 赤緑色覚異常はヒトにおける伴性遺伝の例としてよくあげられ,正常−赤色弱−赤色覚異常と,正常−緑色弱−緑色覚異常とが,おのおの複対立遺伝子の関係でX染色体上にあり,両方とも先に書いた順に優性である。

 ヒトの遺伝を調べるには,交配実験はできないから,家系調査が主となる。赤緑色覚異常が現れたいくつかの家系を調査する。

 @ 赤緑色覚異常を現す遺伝子は,正常なものに対して劣性である。

 A この遺伝子はX染色体上にあり,伴性遺伝することがわかる。

 なお,女子のヘテロ接合は,正常ではあるが,色覚異常遺伝子を次代に伝える者という意味で,保因者とか潜在色覚異常とかよばれる。

 生徒には日常生活において,色覚異常・色弱がほとんど差しつかえないことを話し,差別意識や劣等感をもたせないようにする配慮が必要であろう。

 

◆血友病

先天的に出血しやすい体質性の病気で,多くは,小児期に発病し,血液の凝固性が不充分なために,軽い外傷などによっても容易に出血し,それがなかなか止まらず死亡する病気である。ほとんどすべて遺伝性で,色覚異常のように劣性の伴性遺伝をする。したがって,女子により遺伝されて男子が発病することが多く,女子に発現するのはまれである。色覚異常と違って,女子にほとんど見られないのは,この血友病の遺伝子に致死作用があるからだといわれている。すなわち,男子はこの遺伝子を1つ受けただけ(ヘテロ)で血友病になるが,女子はこの遺伝子を1つ受けただけでは血友病にならない(すなわち潜在している)2つ受けた(ホモ)場合は致死作用によって,母体内で死んでしまう。したがって,生まれ出た女子には,血友病の遺伝子をヘテロにもつものはあっても,ホモにもつものはいない。しかし,近年血友病の患者らしい女子が発見されたので,上の考えには疑問がもたれている面もある。

 一方,仮に血友病の女子が生まれ出ると仮定した場合,父親は必ず血友病の患者であり,母親は血友病の遺伝子をヘテロにもったヒトで,この際生まれる女子に血友病患者の出る確率は1/2であると考えられる。実際問題として,血友病の男子はこどものうちに死亡するものが多く,しかも成長してから血友病遺伝子をもつ女子と結婚するということは,確率的にはほとんどないため,女子の血友病の患者は生まれないと考えることもできる。

 血友病はヒトの遺伝病としてもっともよく知られ,日本では熊本県の天草地方などでその家系が調査され,またヨーロッパの諸王家に多く出たことも有名である。 たとえば,帝政ロシアの最後の皇太子アレクセイが血友病であり,これが間接にロシア帝国の滅亡を早めたといわれる話がある。

 血友病の原因は,血液中の血小板や組織にあって血液凝固に重要な働きをしているトロンボプラスチン(トロンボキナーゼ)の欠乏によると考えられていたが,最近では血しょう中にあるグロブリンタンパク質に属する抗血友病性タンパク質,あるいはトロンボプラスチノゲンが先天的に存在しないためであるといわれている。いずれにせよ,血液中のプロトロンビンはトロンビンに変わりにくく,血液凝固時間が著しく長くなる病気である。

 

 

 









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