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A 卵の調整能力

 

◆胚の調節性

教科書に示す胚の分割実験以外でも,下に示す2個の胚の融合実験が示すように,胚の調節性をどの時期に失っていくかは,生物によって異なっている。

 

 

発生の研究史

ギリシャ時代以来,人間がどうして生まれてくるかについては,いろいろな考えが発表された。アリストテレスは,胎児のもとになるのは女の月経血で男の精液は発生を進める役割を果たすと考えた。この時代の発生に関する考え方は,器官は発生に伴って生じてくるという後成説とみなされる。

17世紀に入って,イギリスのハーベイは,ニワトリの胚を観察して,血液が最初に発生する部分であると主張した。この世紀の後半になると,前成説が台頭し始めた。そのころから顕微鏡が使用され,ニワトリの卵を主な材料として,観察が進められた。イタリアの解剖学者マルピーギは,卵の中に縮小された動物が存在するという前成説を唱え,オランダのスワンメルダムも同様な考えを発表した。一方,ハルトゼーガーらは,精子の中に人間の像(ホムンクルス)が入れ子になって入っているという精原説と,そのもとになる精子の図を描いた。グラーフとステンセンは,ウサギの卵巣の中で卵を発見したと主張したが,彼らが見たのはろ胞であった。この発表も前成説の根拠とされた。

18世紀に入って,ヴォルフがニワトリの初期発生を調べ,各器官は発生の初めから存在するのではないという後成説の根拠を与えた。また,発達した顕微鏡による観察も,後成説を支持した。

19世紀に入ると,現代発生学の祖といわれるベーアが現れ,各種の動物の発生を比較して,各胚葉から形成される器管は動物の種類に関係なく一定であるということを明らかにした。また,ヘッケルは,発生反復説を唱え,発生と進化と関連づけた。また,ワイズマンは,個体の死で体細胞は死ぬが,生殖細胞は連続して子孫へつながっているという生殖質連続説を発表した。ワイズマンの友人のルーは,実験的に発生を調べる実験発生学を起こした。今世紀に入って,実験発生学は進展し,フォークトは局所生体染色法を開発し,胚の予定運命を明らかにした。シュペーマンは,イモリの胚で,発生のしくみを実験的に調べ,形成体と誘導現象を発見した。

 その後,発生のしくみに関する研究が進んでいる。20世紀後半になり,遺伝子の働きが解明されるとともに,その成果をもとにして発生を研究する発生生物学が誕生した。発生生物学では,動物の組織や細胞培養が広く利用されるとともに,受精,発生,形態の分化などを,分子レベルで解明しようとする研究が盛んに行われている。

17世紀

 前成説の全盛

1672年 グラーフ,ステンセン

  ろ胞の発見

1759年 ヴォルフ

  発生の原理

1828年 ベーア

  胚葉説

1868年 へッケル

  発生学の創立

1881年 ルー

  実験発生学の創設

1892年 ワイズマン

  生殖質連続説

1922年 フォークト

  局所生体染色法による研究

1924年 シュペーマン

  誘導・形成体の発見

1930年〜

  実験発生学の発展

 

 

 

 









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