トップ新編生物I 改訂版>第2部 生殖と発生>第2章 発生の過程D 胚葉の分化と器官形成

D 胚葉の分化と器官形成

 

◆各胚葉と器官形成

教科書では,脊つい動物を例にして,各胚葉がどのような器官に分化していくかを概略的に示している。ただし,器官はいくつかの組織の集合体であるから,ある器官全体の起源が単一の胚葉というわけにはいかない。たとえば,ヒトの皮膚は表皮・真皮などからなるが,表皮は外胚葉性,真皮は中胚葉性の組織である。したがって,この表にあげられた器官は,その主要な部分が示された胚葉から分化してきたことを表していると解釈するべきである。

 

◆興味ある話  くちびるや肛門は何胚葉性だろうか?

 口と肛門はどちらも消化管が体外へ開く場所だから,非常に微妙な所である。つまり,外胚葉性の上皮と,内胚葉性の消化器内面をおおう上皮が,この口と肛門の所で相接する訳だから,ちょうどその接点であり,どちらともいえるし,どちらともいえない。と思うだろうが,実は,口は相当奥まで(舌のつけ根と鼻の奥)外胚葉性のものである。だから,口腔内粘膜は,まあ,ほとんど外胚葉性と思ってさしつかえない。

 ところで,肛門はどうだろうか これは,常識的に答えられる。肛門部の皮膚は,かなり内側まで入り込んでいるのである。ウソだと思ったらイヌの肛門を脱糞時に良く観察するのがよい。実にうまくできていて,便をうまくチョン切っているだろう。つまり,肛門は完全に外胚葉性ということがいえる。

 

◆胚膜

教科書では取り上げられていないが,は虫類,鳥類のように陸上に産卵する動物や,胎生のほ乳類では,胚を乾燥などから守るための胚膜が発達している。胚膜は3つの胚葉が伸びて形成されたもので,卵黄嚢・尿嚢・しょう膜・羊膜からなる。卵黄嚢は卵黄を包み,胚の栄養に関係する。また,しょう膜と羊膜とは,ともに胚の保護にあたる。尿嚢は胚の消化管腹壁が膨出したもので,その中に胚の排出する尿をためるほかに,表面に血管が分布していて,胚のガス交換を行うようになっている。

羊水 羊膜液ともいう。羊膜上皮の分泌物で母児両体の血管からの浸出液が混じっている。羊水は,胚の発育環境としてはなくてはならない水圏の役割を果たしており,このため,胚は種々の点で保護され,陸上での発生が可能となった。

尿嚢(尿膜) 脊つい動物の羊膜類における胚膜の1つで,胚体の後腹方の内臓葉 (内胚葉+内臓中胚葉)の膨出として生じる。速やかに拡大して,しょう膜と羊膜の間の胚体外体腔中に拡がり,うすい壁をもったふくろとして尿嚢を形成し,細い柄によって胚体の消化管と連続する。はじめ排出器官として機能するが,その後,鳥類やは虫類では,しょう膜と合して卵殻の下に拡がり,血管網を発達させ呼吸器官としてはたらく。ほ乳類では尿嚢の血管は絨毛膜(柔毛膜)の絨毛(柔毛)の中心に入り,胎盤の形成にあずかる。

 

参考 ヒトの発生

ヒトを含むほ乳類は,輸卵管が特殊化した子宮に胚を保持する。また,卵黄を蓄えることをせずに,母親の胎盤を介した血液循環により,発生の素材とエネルギー源が供給される。

ほ乳類の卵は,ファロピウス管とよばれる輸卵管の上部で受精する。第一卵割は受精から24時間後に起こる。ウニでは約1000細胞,カエルでは数千細胞に達しているころである。続く卵割も1回当たり約12時間もかかる。胚は子宮に向けて輸卵管の中をゆっくりと運ばれる。8細胞期になると,隣接する細胞間に密着結合が形成され,細胞の結合が緊密になる。この変化をコンパクションという。第4卵割では,一部の細胞の分裂面が胚の表面と平行になるので,34個の内部細胞が生じる。これらは後に内部細胞塊となり,胚の本体と羊膜を形成する。外側の細胞は栄養芽層を構成し,後に胎盤になる。

初期胚の割球は,胚から取り出して色素などで標識し,移植することにより,その割球がどの組織のどのタイプの細胞になるか調べることができる。8細胞期の細胞は,すべて胚組織にも胎盤にもなることができるが,第4卵割を過ぎると,8個の内部細胞塊の細胞は胚組織を形成するが,8個の外部細胞層をつくる細胞は胎盤にしかならない。この運命決定の仕組みは,明らかにされていないが,卵に蓄えられた母性mRNAやタンパク質でもなく,重力でも,精子の進入点でもないと考えられている。

栄養芽層細胞の胞胚腔に面した細胞膜にはナトリウムポンプがあり,Na+を積極的に胞胚腔内に運搬している。栄養芽層細胞は密着結合によって緊密につながれているので,Na+は細胞間隙から抜け出すことができない。Na+が蓄積されると,浸透圧が上昇し,水が内部に進入して胞胚腔が拡張する。この段階の胚を胚盤胞といい,子宮壁に着床できる状態になっている。細胞数は約100個であり,内部細胞塊は胚盤胞の内部に偏って存在する。ヒトでは受精から胚が子宮に到達するまでに1週間ほどかかる。

内部細胞塊と接する栄養芽層が子宮粘液分泌細胞に接着し着床すると,栄養芽層の細胞が増殖し,分化して胎盤が形成される。内部細胞塊では,胚盤葉上層を覆うように1層の細胞層が生じ,これが後の羊膜になる。胚盤葉上層の細胞は分裂を続け,原条を形成する。なお,原条は両生類の原口に相当し,原条の先端には形成体のはたらきをもつ結節が生じる。

 

 

 









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