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E 動物の生殖-配偶子の形成と受精

 

◆動物の配偶子形成

精原・卵原細胞は発生の過程で,生殖巣に位置する以前には始原生殖細胞に由来し,やがて移動して性的に未分化な状態の生殖巣に定着し,増殖して精原・卵原細胞へと分化したものである。これらの精原・卵原細胞も,増殖を繰り返してそれぞれの細胞数を増加させる。その後これらの一部が減数分裂の準備期に入り,一次精母・卵母細胞となり,長い休止期の後に減数分裂を行う。この際,卵は著しい不等分裂によって形成されるので,1個の卵原細胞から1個しかできない。なお,ほ乳類では,右図中Aの時点で排卵が生じ,Bの時点で受精が行われる。

 

 

参考 ヒトの生殖細胞の形成と受精

 

ラットの精巣

ラットの精巣の表面は,白膜とよばれる結合組織性の膜でおおわれている。柔らかな精巣の内部は,この白膜により保護されている。精巣の中では,直径約0.2mmの細精管が曲がりくねって走行し,すべての細精管の長さの和は約20mに及ぶと考えられている。細精管と細精管の間には繊維性の結合組織があり,この中に血管やホルモンをつくる間細胞が存在している。間細胞では,男性ホルモンであるテストステロンが作られ,その後,近くの毛細血管に向かって流れていく。精子は,細精管の壁でつくられる。精細管の壁は,精子を作る細胞群と,その細胞群を支持し栄養を与えるセルトリ細胞により構成されている。細精管の壁を光学顕微鏡により,下層から上層に向かって見ていくと,精子発生,すなわち,精子のもとになる精原細胞から精母細胞,精細胞を経て精子になる過程が観察される。精原細胞は細精管の基底膜に沿って,一列に並んでいる。精原細胞の上には,精原細胞に比べ核も細胞質も大きい精母細胞(一次精母細胞)が位置している。一次精母細胞の分裂により2個の細胞が生じ,この細胞を二次精母細胞とよぶ。この細胞は,一次精母細胞と比べるとはるかに小さな球形の細胞である。この細胞は,短時間のうちに分裂し2個の精細胞になる。分裂は短時間で行われるので,この細胞が切片上で観察されるのは,まれである。精細胞は,精母細胞の上に位置する。精細胞は,分裂することなく変形し精子になる(精子形成)。精巣の構造,精子発生,精子形成について以下の図を使って説明する。

図1は,ラットの精巣をブアン液により固定し,パラフィン包埋,薄切し,ヘマトキシリン−エオジンにより二重染色した切片を光学顕微鏡により観察した像(横断像)である。核はヘマトキシリンにより青紫色に,細胞質,結合組織性の繊維等が赤色に染まっている。精巣の周囲を白膜が覆い,内部に細精管の断面と血管,結合組織が観察される。血管は内腔が空いている小型のもの,一方,細精管は血管より太く壁があるため両者は区別できる。この標本は,両者の区別を容易にするため,血管に緩衝液を流し,血管中の血液を除いた後,固定液により固定している。

細精管の壁をよく見るとすべてが同じ構造をしているわけでなく,特徴ある,いくつかのパターンに分かれていることがわかる。教科書の模式図のなかには,精子発生のすべての段階の細胞がひとつの細精管の中に描かれているが,実際は,最内層に精子のない管も存在する。ラットの場合細精管の壁の構造はその特徴により14種類に分類され,それぞれ,異なった細胞の組み合わせになっている。(ヒトでは,6種類)

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図2に図1の細精管を拡大したものを示す。

図2aの細精管をみると,最外層から最内層に向かってヘマトキシリンに濃染した核をもつ小型の精原細胞,細胞も核も大型の精母細胞(一次精母細胞),精細胞の順に観察される。精原細胞と精原細胞の間にあり大型で明るく細長い核をもつ細胞()はセルトリ細胞とよばれ,この細胞は,精子形成細胞群を支持し栄養を与えると考えられている。図の右下の間細胞(あいだ細胞)は,テストステロンを分泌する細胞である。

図2bの細精管の精細胞は核が丸く,図2aと比較し丸みをおびた細胞の形をしている。図2bの精細胞が図2aの細胞に変化していくことが両者を比較することにより推測される。また,この標本には4つの細精管が存在し細胞の配列がそれぞれ異なっている。

2a →拡大写真

 

2b →拡大写真

 

図3は,ラットの精巣をカルノア液により固定,パラフィン包埋した後,メチルグリーン・ピロニン染色した切片を強拡大し,光学顕微鏡で観察した像である。DNAは,メチルグリーンにより緑〜青緑または濃青色に,RNAはピロニンにより赤桃色に染め分けられる。この染色により核は青色に核小体や細胞質は赤桃色に染まる。特徴ある構造をした細精管をここに示す。

3 a 最外層の第1層にメチルグリーンに濃染した核をもち基底膜にそって並ぶ小型の精原細胞,第2層にやや大型の精母細胞(一次精母細胞),第3層にメチルグリーンにより淡い青色に染まった核をもつ精細胞,最内層に精子が観察される。精子の頭部は濃い青色に,尾部(べん毛)は中央に向かって伸び淡い桃色に染まっている。基底部にあり背の高い核をもつ細胞はセルトリ細胞である。最内層で鮮やかな赤に染まっているのは精細胞が精細管を離脱するときに切り離す残余細胞質である。残余細胞質はセルトリ細胞に貪食されて細胞内で消化され脂肪滴になった後,精細胞の成分として再利用されると考えられている。

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図4は,図3で示された細精管と同じような細胞の配列をもつ管を蛍光色素であるDAPIPI(Propidium Iodide)により二重染色し蛍光顕微鏡により観察したものである。DAPIによりDNAを,PIにより細胞質を染めている。最外層の第1層にDAPIにより染色され強く光る核をもつ精原細胞,第2層にやや大型で強く光る核をもつ精母細胞,第3層に精原細胞や精母細胞と比較し核の光り方の弱い精細胞が観察される。最内層に精子の頭部が強く染まっている。最内層で強く赤く染まっているのは残余細胞質である。2層と3層を比較すると3層の細胞の核の光り方が非常に弱くなっている。

細精管内の各段階の細胞の核に存在するDNAの量については前述のピロニンメチルグリーン染色においても青色の濃淡で比較することができる。しかしながら,図4では,DNAの量の差をさらに視覚的に理解できるようにするために蛍光染色を行った。DAPIは,DNAを特異的に染色することのできる蛍光色素である。染色した切片を蛍光顕微で観察すると核の中のDNAの多いところは強い光を発し,一方,DNAの少ないところでは光り方が弱くなる。光りの強弱を,写真撮影することにより白色の濃度の差として表現した。ここでは,精原細胞から精子へ成熟する過程で,それぞれの細胞がもつ核に含まれるDNAの量の変化を可視化し,減数分裂との関係を関連づけている。発展的課題として蛍光顕微鏡により核内のDNAの量を定量することも可能である。PIの細胞質が染まることを利用し,各細胞の輪郭がわかるようにした。

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図5に参考として特徴的な配列をもつ細精管を示す。各細精管を比較することにより精子の形成される過程を推測していただきたい。図の細精管はメチルグリーン・ピロニン染色を施してある。

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参考文献

1)  藤田尚男,藤田恒夫著:医学書院 標準組織学 各論 

2)  溝口史郎著:図説組織学

3)  上野浩,森 浩志:細胞,27(11):9,1995

4)  平岩馨邦,内田昭章,吉田博一著:中山書店 シロネズミの発生・解剖・組織

 

ウニの受精

卵に精子が出会うのは化学走性によると考えられているが,確実に証明されたものは,シダの精子が造卵器の出すリンゴ酸に化学走性を示す現象である。ウニでは精子が卵表面の卵膜に接すると先体反応が誘起され,先体突起が伸びて卵膜に入り,卵と精子の結合が生じる。また,先体にはキモトリプシン様の酵素など何種類かの加水分解酵素が含まれ,卵膜を溶かして精子の侵入を助ける。精子が侵入すると,0.11秒で卵表面の細胞膜レベルでCa2が関係する膜電位の変化が生じ,不完全で一時的ではあるが他の精子の侵入が妨げられる。ついで,数分後には,卵細胞の表層顆粒がこわれて卵膜成分と化学反応が生じ,受精膜が形成され,確実に精子の侵入が妨げられるようになる。

 

ウニの受精の過程

卵の表面は,透明なゼリー層でおおわれている。この層に精子が達すると,先体がこわれて,中から先体糸とよばれる糸状のものが突き出て,その先端が卵の細胞膜に付着する。

 精子の侵入にともなって,卵の表面に受精丘(受精突起)ができる。この受精丘を中心として,表面に薄い膜が浮き上がる。これを受精膜という。受精膜は,やがて卵全体からはなれて,卵との間は液体で満たされた状態になる。

 卵の中に侵入した精子は,やがて尾を失い,頭部が180°回転し,精子の中片から星状体ができ,頭部は核状に変化して精核となる。

 卵核と精核は互いに接近し,ついに両核が融合して受精の全過程を終える。受精により,単相(n)の精子と卵から複相(2n)の受精卵となる。したがって,受精卵から出発して成体となる子は,親と同じ複相(2n)になることを強調したい。同時に,受精により,両親の核物質(染色体)が組み合わされる結果,子は遺伝的に新しい組み合わせになることも推論させるよう指導したい。

 

 

 








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