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D 被子植物の生殖と発生

 

◆被子植物類の生殖と受精

被子植物類では,雄ずい(おしべ)の先についたやくの中で花粉がつくられ,雌ずい(めしべ)の中の胚珠で胚嚢が形成される。受粉後,花粉管が伸びて受精が行われ,子房は果実に,胚珠は種子に変化する。

 花粉は,やくの中の花粉母細胞が減数分裂してできる。1個の花粉母細胞から,四分子ができ,その四分子の核がもう1回核分裂して,雄原細胞と花粉管核ができ,成熟した花粉となる。

 胚嚢細胞は,胚珠の中の1個の胚嚢母細胞が減数分裂してできる。この減数分裂によって,4個の細胞ができるが,そのうち1個だけが胚嚢細胞となり,他の小さい3個は消失してしまう。

 花粉が雌ずいの先の柱頭につくと,花粉管を突出し,胚珠のほうに伸びていく。この間に,雄原細胞はさらに1回分裂して,2個の精細胞となる。花粉管核は,伸びていく花粉管の先端へ移動し,胚珠に達すると消失する。精細胞は花粉管核の後に続いて移動する。

 雌ずいのほうでは,胚珠内の胚嚢細胞は,3回核分裂だけをくり返して8個の核をもつ。そのうち,6個の核は細胞壁で包まれ,1個が卵細胞に,他の2個が助細胞に,残りの3個が反足細胞となり,図のように位置する。卵細胞側から1個,反足細胞側から1個の核が,胚嚢の中心部に移動して2個の極核となる。これで,胚嚢が成熟する。

 花粉管の先端が破れると,1個の精細胞の核(精核)が卵細胞内に入り,受精卵(2n)となる。他の1個の精細胞の核は,2個の極核と合体して胚乳核(3n)となる。

 なお,種子が形成されるとき,カキやイネなどは,種子の大部分が胚乳である有胚乳種子となる。それに対し,マメ科植物などでは,種子を形成するまでに幼植物が胚乳を養分として吸収して成長するため,休眠状態の種子となったときには,胚乳はほとんど残っておらず,これを無胚乳種子とよぶ。この場合,発芽に必要な養分は子葉にたくわえている。

 受精後の子房の変化をまとめると,次のようになる。

 

◆花粉の発芽

花粉が雌ずいの柱頭につくと花粉管を突出し,胚珠のほうへ伸びていく。成熟した花粉内には,雄原核を含む雄原細胞が入れ子の状態で入っている。花粉管の形成と前後して雄原細胞は分裂(体細胞分裂)して2個の精細胞となる。一方,花粉にあったもう一つの核(花粉管核)は,伸びていく花粉管の先端へ移動するものが多く,これは胚珠に達すると消失してしまう。花粉が発芽する場合には,花粉の外膜の一部が欠除したり,うすくなった部分から花粉管が出て伸びるようになっており,この部分を発芽孔(発芽溝)という。発芽孔を複数もつもの(例えばホウセンカでは4)もあるが,ふつうは一か所から発芽する。発芽した花粉管は,雌ずいの花柱の中の柔細胞の細胞間隙や花柱にある空腔の壁にそって胚珠に向かって伸びていく。

 

◆裸子植物の受精

裸子植物の例として精子を形成するイチョウの受精の過程をあげておく。このような精子がつくられるのは他にソテツがあるが,それ以外の裸子植物はすべて花粉管が伸び,その中を精細胞が移動していく。

 イチョウの雄花は,やくと花糸からできていて,やくの中で減数分裂によって花粉がつくられる。花粉は,成熟すると栄養細胞・生殖細胞・花粉管細胞の3つの細胞になる。この花粉が風に吹かれて,雌花の花粉室に入ると,一端は花粉室の壁に侵入し,他端は花粉管となる。中央の生殖細胞は分裂して,柄条細胞と2個の精細胞をつくる。この精細胞は,繊毛をもち泳ぎ出すので,精子ともよばれる。

 一方,イチョウの雌花は2個の胚珠からなり,珠皮に包まれている。子房はなく,胚珠は裸出している。胚珠内に1個ずつ胚嚢母細胞があり,減数分裂によってそれぞれ1個ずつの胚嚢細胞となる。胚嚢細胞が成熟すると胚嚢になり,花粉室と2個の造卵器と胚乳でできている。

 花粉管から泳ぎ出た精細胞は,卵細胞に侵入して受精を完了する。この受精卵から胚が発生する。しかし,胚乳は受精しないので,被子植物と違って胚乳の染色体数はnである。

 

◆植物の生活史と進化

 ある個体が誕生して,次代の個体をつくり,死んでいく過程を生活史という。生活史の型は,進化と密接な関係がある。植物の生活史では,高等な植物になるにしたがって,有性世代が退化し,無性世代が発達している。つまり,高等な植物では胞子体が発達し,下等な植物では配偶体が発達している。いくつかの例を,下等な植物から順に,次の図に示した。図中の   内はよく発達していて,私たちの目につきやすい植物体である。

 

発展 コケ植物とシダ植物の生殖と発生

◆コケ植物の生活環

コケ植物の胞子体は葉緑体をもたず,雌性配偶体に寄生した状態である。そして,有性世代の配偶体のほうが大きく,葉緑体をもち光合成をする。受精の際は,降雨などで植物体の表面や地表がぬれているときに,精子がその水中を泳いで,雌株の造卵器に入り,卵と合体する。受精卵は造卵器の中で発生し,胞子体となる。胞子体は配偶体に付着して成長し,その上部に胞子嚢(さくともいう)ができる。この中で減数分裂によって多数の胞子が形成され,散布されて,地表で発芽し,糸状の原糸体となって,これが成長して雌雄の配偶体となる。

 コケ植物にはスギゴケに代表される蘚類のほかに,ゼニゴケなどの苔類がある。ゼニゴケでは雌雄のそれぞれの株には造卵器のできる雌器床と,造精器のできる雄器床が形成され,外見上も明らかに区別できる。また,胞子体は雌器床の下へぶらさがるような状態で付着する。それに対し,蘚類は造精器や造卵器が茎の先端につき,葉の中にかくれているために,雌雄の区別はむずかしい。

◆シダ植物の生活環

無性世代は,受精卵が発生して根・茎・葉の植物体ができ,その葉の裏面に胞子をつくるまでである。この世代の核相は複相 (2n)である。有性世代は,胞子が芽生えて直径3mmぐらいの前葉体ができ,前葉体の中心部の造卵器に卵ができ,前葉体の下部の造精器に精子ができるまでである。この世代の核相は単相(n)である。

真正シダ類に属しているワラビは,1種類の胞子から形成される前葉体に造卵器と造精器ができる。しかし,スギナでは,同形であるが,雌雄の別のある2種類の胞子をもち,それぞれ発芽して,雌性前葉体と雄性前葉体となる。さらに,クラマゴケやミズニラ類は,大胞子嚢と小胞子嚢が形成されて,それぞれから大胞子→雌性前葉体,小胞子→雄性前葉体がつくられる。

 

 

 









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