トップ新編生物I 改訂版>第1部 生物体の構造と機能>第2章 細胞の機能A 細胞膜と水の浸透

A 細胞膜と水の浸透

 

◆浸透圧

細胞膜はいろいろな物質を透過させるが,膜の通りやすさは水と比べて,どの物質も極端に低い。そのため細胞膜は,溶質をほとんど透過させず,水だけを通す半透膜とみなすことができる。

いま,弾性のある半透膜の袋にスクロース溶液を入れて空気が残らないように密閉し,この袋全体を水に浸すと,水が膜を通して袋の中に入りこみ(浸透),袋の容積は大きくなる。袋の容積を元の通りに保つには,外部から圧力を加えて袋を押し縮めるようにしなければならない。この圧力が浸透圧であり,浸透圧は袋内のスクロース溶液の濃度に比例する。

この圧力を最初に測定したのがペッファーWilhelm Pfeffer(1887)であった。ペッファーは,フェロシアン化銅の半透膜をつくり,その中にスクロース溶液を入れ,検圧計とつなぎ,図のような浸透計を作った。フェロシアン化銅をはった素焼の円筒を水に入れると,まず,水が半透膜を通して円筒内に入る。これが浸透で,この結果,円筒内部と連結してある検圧計の水銀が上昇する。この水銀柱の高さが示す圧力は,水が外部から中に浸透しようとするため生じたもので,この圧力を浸透圧という。ペッファーは,この浸透計を用いて稀薄溶液の濃度と浸透圧の関係,温度との関係を測定した。

その結果をもとにして,ファントホッフvan’t Hoff(1887)は稀薄溶液の浸透圧Pは,一定温度(絶対温度)において濃度C〔モル/l〕に比例することから,浸透圧が理想気体法則に従うことを認めた。すなわち

PRCT〔気圧〕   R:気体定数(22.4/273=0.0821) T:絶対温度

したがって,1モル/ l溶液の浸透圧は,0(絶対温度273K)では浸透圧が22.4気圧になる。

 

 

上の装置で,外液の濃度を円筒内のスクロース溶液の濃度と等しくすると水銀柱は上昇しない。このとき,外液は内液と等張(isotonic)であるという。同じモル濃度であっても,電解質の場合は複数のイオンとなって浸透圧的に働くから,非電解質よりも高い浸透圧を示す。例えば,食塩の1モル溶液は20℃では43.2気圧を示す。

水の細胞内への浸透によって細胞内に生じる圧力を膨圧(turgor pressure)と呼ぶ。植物細胞においては,細胞壁が膨張に抵抗するため,大変に大きな膨圧(数気圧〜数十気圧)が生じるのが普通に見られる。これに対し動物細胞内部の液の浸透圧は体液とほぼ等しく,膨圧は無視できるほど小さい。

動物細胞は細胞壁をもたないため,外液の浸透圧があまりに低いと,細胞膜は膨張にたえられなくなり破裂する。赤血球細胞でこれが起こるのが溶血(hemolysis)である。植物細胞の場合は,浸透圧の低い外液に浸しても,細胞壁があるため破裂することはない。浸透圧の低い外液に浸された植物細胞は,一定容積までふくらみ,そこで平衡に達する。

細胞内の濃度よりも高い濃度の溶液に入れると,動物細胞は収縮する。植物細胞の場合は細胞が水を失うことにより収縮するが,細胞壁は収縮しにくいため,細胞壁と細胞膜が離れる。これを原形質分離(plasmolysis)という。

 

★吸水力

植物細胞が,まだどれだけ水を吸収する力があるかを吸水力(suction force)と呼ぶ。蒸留水に植物細胞を浸した場合には,それは細胞内液の浸透圧と膨圧の差で示される。

吸水力=浸透圧−膨圧

次に,植物細胞を蒸留水ではなく,細胞より低張の液に浸した場合を考えてみよう。細胞内液と細胞外液の浸透圧差が,水が細胞内に浸透しようとする圧力なので,先ほどの式「吸水力=浸透圧−膨圧」の“浸透圧”の部分を細胞内外の浸透圧差,すなわち“細胞内液の浸透圧−細胞外液の浸透圧”に置き換えると式は

吸水力=(細胞内液の浸透圧−細胞外液の浸透圧)−膨圧

となる。

(細胞外液の浸透圧Q,細胞内液の浸透圧P,膨圧T,吸水力Sとすれば,式はSPQT)

 

 

 








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