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D 原核生物と真核生物

 

◆原核生物と真核生物

細菌やラン藻の細胞には,核が見られない。もちろん,遺伝物質のDNAは輪状をなして裸のままで存在している。このように,核を欠く細胞を原核細胞という。これに対して動物や植物の細胞のように,核のあるものを真核細胞とよぶ。両者の間には,形態や機能だけでなく,リボソームの構成単位の違いや遺伝子構造などにもはっきりとした差がみられ,生物の進化の過程で大きな区切りをなすものとみなされている。

 

発展 ミトコンドリアと葉緑体の起源

1967年マーグリス(Lynn Margulis)は,原始的な真核細胞は4つの異なる原核生物の系統の連合を含み,少なくとも3つの別個の段階を経て発達したものであるという仮説提唱た。その仮説は共生説(symbiosis hypothesis)として知られるようになった。その仮説によると,好気性細菌がミトコンドリア,ある種のスピロヘータがべん毛,シアノバクテリアが葉緑体の起源であると主張している。

(1) ミトコンドリアの起源 原核生物には,原始真核生物となる嫌気性生物である系統Aと好気性生物である系統Bが存在し,系統Aは系統Bを食物としていた。系統Aはファゴイトーシス(phagocytosis:食作用)によって系統Bを取り込んでいたが,系統Aは系統Bからエネルギーをもらい,系統Bは系統Aから栄養分と保護をもらい,いつの間にか共生関係に発展した。この関係は地球大気が酸素に富むようになった15億年頃前に確立されたと考えられている。このころ系統Aは核膜をもつ真核生物になった。その後,系統Bは系統Aの外で生活する能力を失い,系統Aの中で増殖した。そして,これがミトコンドリアへと進化していき,系統ABとなった。

(2) べん毛の起源 系統ABは,ある種のスピロヘータ(べん毛を持つ真正細菌の一種)である系統Cを細胞質に取り込んだ。系統Bと同様に系統Cも共生関係となり,独立した系統ABCとなった。このことにより,この細胞は微小管タンパク質を得て,べん毛,中心粒を備えるようになった。そして,系統ABCは運動することが可能になり,従属栄養生物となった。なお,現在では,原核生物のべん毛やスピロヘータと真核生物のべん毛の構造に著しい差があることなどから,べん毛のスピロヘータ起源説についてはほとんど否定されている。

(3) 葉緑体の起源 系統ABCの一部は,光合成能を持つシアノバクテリアのある系統Dを取り込み共生関係になった。この関係は10億年以上前に確立されたと考えられている。その後,系統ABCDとなり,独立栄養生物となった。そして,取り込まれた系統Dは葉緑体へと進化していった。

 

共生説を支持する事実

@ミトコンドリアや葉緑体が独自のDNAをもつ。

注 クラミドモナス(単細胞緑藻類)のべん毛基部に,独自のDNA存在が確認されたという論文が発表されている。しかし,その後DNAの存在は誤認であったと結論づけられている。

Aミトコンドリアや葉緑体が二重膜である。

Bミトコンドリアや葉緑体が分裂によって増殖する。

Cミトコンドリアと葉緑体には,細胞質内のリボソームとは組成の異なる細菌に似たリボソームを持つ。

マーグリスの共生説に基づく共生の過程

参考文献

現代生物学 R.A. ウォーレス (), Gerald P. Sanders (), Jack L. King (), 石川 統他 (翻訳)  東京化学同人

 

●参考 地球の生物 共通祖先は古細菌

地球の誕生は46億年前であり,最古の細胞の化石は35億年前のものである。生命はその間に出現したと考えられている。生命由来の炭素は38億年前のものが発見されている。はじめは細菌がもっとも原始的な生物と思われていたが,1977年に発見された古細菌は,高温環境でしか生息できない好熱菌など原始地球環境で出現したのではないかと考えられた。古細菌は真正細菌とは細胞膜成分の違いで区別される。タンパク質合成の場であるリボソームのRNAの配列比較から,古細菌と真正細菌は別の系統であることが示された。その後,酵素のアミノ酸配列の分析によって,真正細菌から古細菌が約38億年前に分かれ,その後約24億年前に真核細菌が分かれることが示された。真核生物の動物と植物は1112億年前に分かれたものとみなされる。最近,共通祖先を遺伝子分析から求めて,先祖型タンパク質には最高99℃にも耐えられる耐熱性のあることが突きとめられ,超好熱細菌が地球上の生物(真核生物)の共通祖先とみなされている(2003)

 

 

 

 

 









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