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C 細胞の構造

 

細胞膜

細胞をおおっている細胞膜は,厚さ約8nmの二重膜からできている。リン脂質が水をきらう炭化水素部分を内側にして二重膜をつくり,親水性部分を表面にだしている。これにタンパク質がところどころに埋めこまれている。脂質とタンパク質の重量比はおよそ11である。タンパク質には糖質が結合していることが多い。この構造は流動モザイクモデル(Singer1972)としてひろく認められている。

 細胞膜のタンパク質には,脂質二重層中に埋めこまれている内在性タンパク質と表層に結合している表在性タンパク質とがある。ナトリウムポンプや,ホルモンの受容体などは内在性タンパク質である。細胞膜直下には,スペクトリンなどが網目状に配列した支持構造があり,裏打ち構造とよばれる。ミトコンドリアや葉緑体の膜,核膜にも細胞膜と同様な二重膜があり,総称して生体膜とよばれる。

 

◆細胞壁

細菌や植物細胞のまわりには,セルロースとペクチン,リグニンなどからできた細胞壁(cell wall)が存在する。細胞膜(形質膜plasma membrane)は細胞壁に接している。したがって,細胞壁は細胞外構造ということができる。

 

◆核

細胞核は,有糸核分裂に際しては一時消失する。細胞周期の間期にみられる核について述べる。核は細菌やラン藻などの原核生物には存在しない。また,ほ乳類の赤血球のように消失しているものもある。核は細胞に1個あるのがふつうであるが肝細胞では2個あることがあり,また,骨格筋では多数存在する(多核細胞)。核の形は,一般的には球形であるが,柱状,紡錘体状のものがある。核は内外2枚の厚さ約8nmの二重膜からなる核膜でおおわれている。2枚の膜の間には2050nmのスペースがある。核膜には直径50100nmの孔があり(核膜孔),核と細胞質を連絡し,物質の出入りにあずかっている。外側の核膜は,ときに小胞体とつながっていることがある。

核の中には,染色質が多量に分布している。あるものは核膜の内側の膜(内膜)に付着している。染色質は,DNAとヒストンなどのタンパク質が結合したもので,DNAの二重らせんが折りたたまれた状態にあるといわれている。核の中には1個ないし数個の核小体が存在する。これは,リボソームRNAの合成と,リボソームの組み立てを行っている。

 

◆ミトコンドリア

ミトコンドリアは,糸状の粒という意味のギリシア語に由来し, 1897年にべンダ(C.Benda)が命名した。生きた細胞をヤヌス緑で染めると糸状体として認められる。長径0.15.0μm,短径0.11.0μmのひも状をしており,細胞呼吸の場である。

 

◆小胞体とリボソーム

細胞内に網状に広がっている構造物のことを,1945年に細胞学者ポーター(K.R.Porterアメリカ)らが小胞体(endoplasmicreticulum)と名づけた。小胞体は平たい袋状をして,互いに続いている。小胞体膜は細胞膜と同じ構造をしている。リボソームのついていない小胞体を滑面小胞体といい,イオンの輸送や分泌にあずかっている。リボソームのついているものは粗面小胞体といわれる。

リボソームは,タンパク質合成の場であり,細胞内では小胞体に付着していることが多い。直径15nmの小粒で,大小2つの亜粒子からなっている。大亜粒子は23×13nm,小亜粒子は22×7nmの大きさである。それぞれ多数のタンパク質と数種類のRNA(rRNA)とからなっている。遊離RNAが伝令RNA上に何個もついてタンパク質合成を行っているものをポリソームとよぶ。

 

◆リソソーム

生化学者クリスチャン・ド・デューブ(Christian de Duveベルギー)1955年に発見した細胞内小粒である。直径0.20.1μmの小粒で,内部にホスファターゼ,タンパク質分解酵素,グリコシダーゼ,DNaseRNaseなど加水分解酵素を多量に含んでいる。細胞が外からとり入れた異物や,不要な細胞成分を消化分解する役目をする。細胞が死んだとき自己消化する。

 

◆ゴルジ体

解剖学者カミロ・ゴルジ(Camillo Golgi 18441926イタリア)は,1898年に彼の創案による銀染色法を用いてフクロウの小脳中に黒く染まる袋状構造を発見した。その後,この構造はいろいろな細胞に存在することがわかり,ゴルジ体とよばれるようになった。これは,小胞体の袋の集合体で,粗面小胞体がちぎれて袋になったような形をしている。

小胞体で合成された分泌タンパク質は,ゴルジ体に集められる。それらは,小胞として運ばれ,細胞外へ分泌される。

 

◆中心体

細胞学者エドアルト・ベネーデン(Edouard von Beneden18461910ベルギー)が,1870年ウマの回虫卵で発見した。ベネーデンは体細胞の染色体数が一定であることを明らかにした人である。中心小体(centriole)は,直径0.2μm,長さ0.4μmの中空の円筒で,長径20nmの微小管 (microtubule)3本の組みが9つ配列してできている。ふつう2本の中心小体が互いに直交して存在し,核の近くに見られる。中心小体2本からなる1組みを中心体(centrosome)とよぶ。細胞分裂の前中期に中心体はそれぞれ2つに分かれ,組みになっている。中心体は1組みずつ細胞の両極に移動し,星状体を中心体の周りに形成する。

また,両中心体間に紡錘体が出現する。

 

◆葉緑体

緑色植物(紅藻,褐藻を含む)にみられる色素体で,細菌,変形菌,糸状菌には存在しない。種子植物では凸レンズ形のものが多いが,紡錘形や円板形のものもある。アオミドロではらせん状のひも形,ホシミドロでは星形をしている。種子植物の葉肉では,葉緑体は直径510μm,厚さ23μmの大きさで,光合成の場である。

 

◆液胞

成長した植物細胞に見られる。トノプラスト(tonoplast)とよばれる膜でおおわれている。成長しつつある植物細胞では,液胞はミトコンドリア程度の大きさで,前液胞といわれる。細胞が成熟すると,液胞はしだいに大きくなり,細胞内で大きな部分を占めるようになる。内部に塩類・糖・有機酸・色素などを溶かしこみ,浸透圧を生じる。

植物細胞,酵母に広く存在し,有害産物などを溶かしこんで蓄える。排出しにくいため生成されたのであろう。動物細胞ではほとんど存在しない。例外的に知られているのはホヤの血液中の細胞で,海水中のバナジウムを濃縮して液胞中に蓄える。ホヤに有害なバナジウムを除去するためとみなされる。

 

興味のある話―細胞骨格

真核細胞の細胞質中には多数の細い繊維(フィラメント)が存在して,細胞の形を保つのにあずかっている。これら繊維構造を細胞骨格(cytoskeleton)という。細胞骨格には直径7nmのミクロフィラメント(アクチンフィラメント)10nmの中間径フィラメント,250nmの微小管の3種類がある。ミクロフィラメントは細胞膜下などにあって補強役を果たすとともに,ミオシンと反応して運動性を示す。アメーバ運動などにあずかる。中間径フィラメントは核膜から放射状に伸びて細胞膜にいたり,細胞の形を保つ。また核膜をつくりあげる。微小管は細胞分裂のさいに星状糸や紡錘糸として重要な役割を果たす。また,神経軸索を支え,物質運搬のレールとなる(トロッコはモータータンパク質キネシンである)。これら3種類のフィラメントはいずれも単位タンパク質からなり,重合・脱重合することができる。

 

◆原形質流動

植物細胞にみられる方向性をもった原形質の流動をいう。シャジクモの巨大な細胞では中央部に液胞があり,細胞膜に接したゲル層の上をゾル層が約50μm/sという速い速度で一定方向に循環流動している。ゲル層にはアクチンフィラメントが方向性をそろえて存在している。その上をミオシン分子が速い速度で走って水流を起こすものとみなされている。ATPがエネルギー源として用いられる。シャジクモの原形質流動の速度は骨格筋の滑る速度の10倍も速く,シャジクモのミオシンが効率よく関与しているものと考えられている。

 

 

◆原形質流動の観察とタイプ

原形質流動は,細胞が生きていることを実感させる運動である。多様な材料で観察することができ,古くから多くの研究が発表されている。ふつう,次のタイプに分類できる。

(1) 周回運動(回転運動)細胞内で,回転するような経路で流れる運動で,代表的なのは,シャジクモの節間細胞やオオカナダモの葉の細胞で見られる。特に,シャジクモの原形質流動は,詳しく解析されており,細胞質のゾルとゲルの界面に沿って滑りの力が生じ,それによって流動する。この界面には,アクチンを主成分とするミクロフィラメントが分布していて,それに沿って果粒が流れていくことがわかっている。各種の植物の根毛でも,周回運動が見られる。

(2) 循環運動 細胞質内を部分的に循環して流れる運動である。ムラサキツユクサの雄しべの毛で見られるのが,その代表である。タマネギの鱗片葉で見られるのもこの型である。ただし,タマネギの場合は,切ってすぐのプレパラートでは,活発な流動はふつう見られない。したがって,実習する場合には,あらかじめ切片をつくって,1晩ぐらい水に浸しておいたものを観察させる必要がある。

(3) 往復運動 一定時間一方向に流れてから短時間停止し,次に逆方向に流れる運動をいい,変形菌類(俗に粘菌という)の変形体に特有な運動である。この運動は大変活発であって,顕微鏡で観察すると,メダカの尾の血流のように見えるが,往復運動で流速が時間とともに変化する点が違っている。変形体の原形質流動に関しては,フィサルム・ポリセファルムというアメリカ原産の種について,詳しく調べられている。この流動は,筋肉と同様に,アクチンとミオシンの両タンパク質が関与していること,流動のエネルギー源がATPであることなどが,実証されている。

(4) アメーバ運動 アメーバで見られるように,内部の流動にともなって外形が変化する運動である。もともと原形質流動というのは,植物細胞の運動(cyclosisという)に対してつくられた語で,アメーバのように流動によって外形が変わるのは原形質流動ではないといわれていた。しかし,(3)の粘菌の変形体(この場合は,古くから原形質流動とされている)でも,流動にともなって外形が変わるから,原形質流動とアメーバ運動を区別するのは,あまり論理的な根拠はない。アメーバ運動のしくみも変形体の原形質流動と同様であって,アクチンとミオシンが関与し,ATPがエネルギー源となっている。

 

 








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