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実験4〔探究活動〕 植物のわい性化とジベレリン
教科書p.159〜160 所要時間3時間
【指導目標】 ベランダなどの狭い場所で育てるのに適したわい性の品種は,ジベ
レリンの合成能力が低下しているためと考えられている。また,植物の草丈の伸長
を抑制するわい化剤も市販され,これもジベレリンの作用を抑制するためと考えら
れている。このような植物の草丈の成長を調節しているジベレリンの作用について
実験を通して確認する。
【準備】 わい性植物の種子・ジベレリン・わい化剤・植木鉢や育苗ポット・バー
ミキュライト・スプレー・ものさし
【準備上の留意点】
(1) 実験材料としては,実験する季節に合わせて,つるなしの品種やわい性株を選
ぶとよい。それぞれに対応する高性品種を探して対照として利用する。なお,教科
書ではつるなしアサガオのデータを紹介してあるので,ここではアサガオを例にし
て実験の手順を説明するが,それ以外にも春〜夏ならつるなしインゲンやわい性コ
スモスが,秋ならつるなしエンドウが利用できる。ただし,わい性植物がすべてジ
ベレリンの合成能力が低下したものとは限らないので,予備実験が必要。
(2) 直径12〜15cmの育苗ポットや植木鉢に,3本ずつのアサガオを育てる。土壌と
してバーミキュライトを用い,種子は5個ずつ播いて発芽後間引いて3本にすると
よい。また,その後は規定の濃度に溶かした園芸用の液肥を与え,雨のかからない
明所に置いて育てる。ポットはバットなどに入れておくと,水受けとしてや移動用
によい。
(3) 市販されているわい化剤には「ビーナイン」や「スミセブン」などがあるが,
教科書のデータは「ビーナイン」(日本ソーダ)を用いた。いずれも,水で規定濃度
に溶かして成長点に噴霧して使用する。また,ジベレリンも少量ずつ(50r)小管に
分けて「植物成長調整剤」として市販されているものが便利で,これをそのまま
500mlの水に溶かすと100ppm溶液が得られる。これらは,少し大きい園芸店や農
協などで入手できる。また,園芸業者の通信販売なども利用できる。
(4) また,実験に使う噴霧器は,大形の霧吹きなどでは大量の薬品が必要なので,
化粧品に詰め替え用として市販されているスプレー容器(5〜20 ml用)が便利である。
ただし,使用の前後にはよく洗っておく必要がある。
【方法上の留意点】
<実験A> つるなしアサガオにジベレリンを与える実験
(1) 発芽後はできるだけ明所に置いて大きく成長させる。双葉が開くころに間引い
て3本ずつとし液肥を与える。そして,本葉が出始めたころにジベレリン処理を行
うとよい。
(2) ジベレリンを噴霧する際は,上から葉に垂直になるように噴霧器を向けて,1
株にかかる量が等しくなるよう,同じ回数ずつ成長点を中心に葉に付着するように
噴霧する。対照実験として,同量の水を噴霧したものを用意する。
(3) 処理後1週間毎に草丈を測定する。草丈は地面から茎の先端までの長さを定規
を横に当てて測定するが,双葉の付け根から茎の先端までの長さでもよい。また,
ある一つの節間の成長を測定してもよい。
<実験B> わい化剤の働きを調べる実験
(1) 実験Aとほぼ同じ方法で行うが,わい化剤とジベレリン溶液とを同時に与える
場合は,片方の液を噴霧してから葉の表面が乾くまで放置して,残りの液を噴霧す
るようにしないと,液が流れてしまって量が変わることになるので注意する。
(2) 教科書では実験Aと実験Bとが別々に書かれてあるが,同時に行ってもよい。
その際には,8個のポットを用意して,それぞれの品種を4個ずつまき,実験2の
4つの条件で処理すると,結果を総合的に考察することができる。
【結果例】 教科書の結果例はアサガオを用いた実験の結果であるが,もう一例と
して「インゲン」を用いた実験の結果を示しておきたい。これは,7月21日に播種
し,26日にホルモン処理を行い,処理後6日目に測定した結果である。この結果を
アサガオと比較すると,アサガオの場合は「つるなし」の品種へのジべレリンの効果
が十分ではなかったが,つるなしインゲンにジベレリンを与えると,つるありのイ
ンゲンの草丈に匹敵する成長が見られた。それに対して,わい化剤の効果も大きく,
わい化剤を与えたつるありインゲンは著しく成長が抑制され,つるなしのものとほ
ぼ同じ草丈であった。
▼わい化剤の働きを調べる実験結果例(インゲン)
|
品種 |
ポット |
ジベレリン |
わい化剤 |
草丈〔cm,子葉からつるの先端まで〕 |
平均値 〔cm〕 |
||
|
つるなし |
A |
― |
― |
10.2 |
10.1 |
7.3 |
9.2 |
|
B |
+ |
― |
47.0 |
44.2 |
39.2 |
43.5 |
|
|
C |
― |
+ |
1.6 |
2.1 |
2.1 |
1.9 |
|
|
D |
+ |
+ |
40.2 |
37.4 |
43.3 |
40.3 |
|
|
つるあり |
E |
― |
― |
46.3 |
41.2 |
53.1 |
46.9 |
|
F |
+ |
― |
54.1 |
49.1 |
42.3 |
48.5 |
|
|
G |
― |
+ |
2.1 |
2.3 |
2.9 |
2.4 |
|
|
H |
+ |
+ |
48.2 |
40.3 |
32.3 |
40.3 |
|
【考察―仮説の検証―】
<実験A> 実験結果から,「つるなしアサガオ」にジベレリンを与えると,草丈
が著しく伸び,つるのある「アサガオ」とほぼ同じかそれ以上の草丈になることが
わかる。このことから「仮説は正しい」と判断できる。
<実験B> 蒸留水を与えた場合と比べて,わい化剤を」与えたものは草丈が5分
の1程度であり,草丈の成長が抑制された。しかし,ジベレリンを同時に与えると,
成長は回復して蒸留水を与えたコントロールの約2倍の草丈になった。この草丈は
ジベレリンのみを与えた場合とほぼ同じで,ジベリンによってわい化剤の効果は完
全に打ち消されてといえる。このことから,「わい化剤はジベレリンの作用を抑制
している」という仮説は正しいと判断できる。
【発展について】
(1) 多くのわい性植物の種子を入手して同様の実験を行うと,草丈の成長を抑制す
るしくみが推測できる。もし,ジベレリンを与えても成長が回復しなかったら,別
の原因があることになる。
(2) アブラナは冬の間はタンポポのような地面に広がるロゼット葉のみであるが,
春になるとその中心から茎が伸び始める。これを抽だいというが,春にジベレリン
の合成量が増加するために生じることが知られている。ロゼットの状態のアブラナ
にジベレリンを投与して抽だいが生じることを確かめてみよう。
【参考文献】 太田保夫(1987)「植物ホルモンを生かす」農文協
中山包(1992)「植物生長の遺伝と生理」内田老鶴圃