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実験3〔観察〕 心臓のしくみ
教科書p.127 所要時間30分
【指導目標】 (1) 血液循環に働く心臓のしくみと意味を,作業と心音を聴く観察の
中から理解させる。
(2) 自分の心音を実際に聞いてみることにより,興味と関心をもってこの単元を学習
する動機づけにする。
(3) 心音の左右の聞こえ方と心臓の働きとの関係を考察させる。
【準備】 教科書p.127のヒトの心臓の断面図を写しとったもの,赤鉛筆,青鉛筆,聴
診器,心音拡大器
【準備上の留意点】 (1) ヒトの心臓の断面図(教科書p.127)は,生徒に教科書を写さ
せてもよいし,事前に印刷しておいて配布してもよい。
(2) 聴診器を複数の者が使う場合,衛生面から,使用のたびに耳につける部分をアル
コール綿(消毒用アルコールを脱脂綿に浸したもの)で清拭する。
(3) 心音拡大器(実験1で説明)を使うと,心音を聴く観察を演示実験としてすることが
できる。
【方法上の留意点】 (1) 心臓内の血液の流れる道すじに矢印をかかせるが,全身か
ら戻ってくる血液が流れる,上大静脈,下大静脈から出発して,その後血液がどの
ように流れるか,その道すじを意識させながら,たどらせるとよい。
(2) 血液の流れる向きと,心臓内の弁の向きを意識させる。
(3) 心臓内の血液のうち,動脈血を赤く,静脈血を青く着色する。
(4) 男子生徒などで,直接上半身裸で聴診器を当てられるときは,聴きやすいのでよ
いが,それができない場合,教科書の図のように,ワイシャツやブラウスの上から,
あるいはすきまから聴診器を当てる。
(5) 聴診器は,胸にしっかり密着させるようにする。そうしないと聞き取りにくい。
また,静かでないと聞きにくいので,実習中は静粛を保たせる。
(6) 聴診器を胸の左右いろいろな部位に当てて,音を聞く。下図を参考にして,左右
心房,心室,あるいは大動脈,肺動脈の聴取部域に当ててみる。

【結果の整理】 (1) 動脈血とは,O2が多くてCO2が少ない血液で,静脈血とは,O2
が少なくてCO2が多い血液のこと。一方,動脈とは,心臓から出て行く血液の流れる
脈波を感じる血管をいい,静脈とは心臓に帰ってくる血液の流れている血管をいう。
したがって,肺静脈には動脈血が,肺動脈には静脈血が流れていることに注意する。
(2) 聴診の結果,心音はどのように聞こえたか記録する。また,心臓のどの部域に当
たるところで大きな音が聞こえたか,特に左と右の大きさの違いがどうであったか,
記録する。
【考察】 (1) 全身から戻ってきた血液は,図では青く塗られているので,O2が少な
くてCO2が多い静脈血であり,上下の大静脈から右心房に入り,右心室に移動し,肺
動脈を通って肺に送られる。右心房と右心室の間には弁(三尖弁)があり,右心室から
肺静脈の間にも弁(肺動脈弁)がある。これらの弁があるので,心房と心室が交互に収
縮すると,中の血液が上記の方向に移動していくことがわかる。
(2) 肺から戻ってきた血液は,図では赤く塗られているので,O2が多くてCO2が少な
い動脈血であり,肺静脈から左心房に入り,左心室に移動し,大動脈を通って全身
に送られる。左心房と左心室の間には弁(僧帽弁)があり,左心室から大動脈の間にも
弁(大動脈弁)がある。これらの弁があるので,心房と心室が交互に収縮すると,中の
血液が上記の方向に移動していくことがわかる。
(3) 心房,心室の動きと弁の働きによって,心臓が血液を送り出すしくみを図示する
と図のようになる。

(4) 右心室から送り出され,肺に行き,左心房に戻ってくる血液循環(肺循環)は,静脈
血が動脈血になって戻ってくることから,体内からCO2 を体外に排出し,体外か
ら体内にO2を取り入れるという意味をもつ循環であるといえる。一方,左心室に始
まり全身をまわって右心房に戻ってくる循環(体循環)は,動脈血が静脈血になって戻
ってくることから,肺から取り入れたO2を全身の組織に運び,組織でできたCO2を回
収するという意味をもつ循環であるということができる。このように,心臓はポン
プとして血液を循環させることによって,全身の細胞を取り巻く内部環境の恒常性
の維持に働いている。
(5) 図の上で,左心室の壁は,右心室の壁よりも厚い。これは,右心室が心臓のすぐ
近くの肺に血液を送り出すのに対し,左心室が全身に血液を送り出すことと対応し
ていると考えられる。
(6) 聴診すると,心音は特徴ある2音として聴くことができる。すなわち,低くかつ長
い第1音と,やや高く短い第2音である。心音計では,さらに第3音,第4音を区別で
きる。第1音は,心室収縮時はじめに僧帽弁と三尖弁が閉鎖される音と大動脈と肺動
脈へ血液が送り出されるときの血液の乱流による。第2音は,心室収縮時の終わりに
大動脈弁と肺静脈弁が閉鎖される音である。
(7) 心音は,聴診すると,右側よりも左側,特に左側心室部で大きく聞こえる。左心
室が筋肉も厚く,全身に血液を送り出すために力強く収縮していることに対応して
いることを考察させたい。かなり多くの生徒が,心臓は胸腔の中で左側に位置して
いるように思っている。p.128の図8などで,心臓は胸腔のほぼ中央にあり,心尖部(左
心室のあるところで外観がややとがって見える)が少し左に寄っていること,そして
拍動が上記のようなことで左側に大きく聞こえることに注意させたい。
【発展】 (1) イヌやネコなど,ヒト以外の動物の心音も聴いてみよう。
(2) 食肉店からブタ(ほ乳類)やニワトリ(鳥類)の心臓を入手し,解剖して観察しよう。