トップ>新編生物I>第5部 体液と恒常性>実験2〔探究活動〕 ゾウリムシの浸透圧調節
実験2〔探究活動〕 ゾウリムシの浸透圧調節
教科書p.123〜126 配当時間1時間
実験A ゾウリムシの観察
【指導目標】 浸透圧調節の実験にむけ,収縮胞およびその他細胞内部の構造を観察
し,その形や動きなどを確認させる。
【準備】 ゾウリムシ培養液,遠沈管,ラップフィルム,駒込ピペット,手回し遠心
分離器,エタノール(99.5%),(塩化ニッケル水溶液0.02%),顕微鏡,ホールスライド
ガラス
【準備上の留意点】
(1) 塩化ニッケルで麻酔する場合,濃度が高いと,ゾウリムシは吐出して死んでしま
う。
適当な濃度は0.5〜1.0mmol/lである。NiCl2水溶液を培養液と等量加えて,数分後
に繊毛運動が停止する程度がよい。ここでは0.02%とした。
(2) 2枚重ねにしたビニルテープに穴あけパンチで穴をあけて,スライドガラスには
り,観察用スライドガラスをつくると,生徒にとっては,ホールスライドガラスよ
りピントが合わせやすい。
【方法上の留意点】 (1) 沈殿と洗いをくり返すので,始めの培養液中のゾウリムシ
の濃度はできるだけ高い方が望ましい。
(2) 顕微鏡のしぼりを調節して,収縮胞を観察しやすい明るさにする。
(3) ゾウリムシの培養については,第4部の実験3「ゾウリムシの行動」(本書p.110)
を参照せよ。
実験B ゾウリムシの浸透圧調節
【指導の目標】 ゾウリムシの体液は,その生育環境である淡水よりも高張であるた
め,細胞膜の半透性によって,体内に水が侵入してくる。そこで,それを排出して,
体内の浸透圧を一定に保つための収縮胞をもっている。ここでは,その収縮胞のしく
みを調べる。ゾウリムシの収縮胞の収縮頻度に注目して,浸透圧調節の基本的なしく
みを理解させる。
【準備】 ゾウリムシ(できるだけ高密度に培養し,繊毛を刈りとったもの),エタノー
ル,時計皿,駒込ピペット,ピペット,ストップウオッチ,塩化ナトリウム,顕微鏡,
ビニルテープ,OHPシートまたはフィルム,穴あけパンチ,スライドガラス,カバー
ガラス
【準備上の留意点】
(1) 繊毛を刈りとったゾウリムシ(または麻酔したゾウリムシ)はできるだけ高濃度の
ものがよい。
(2) 穴あきビニルテープは,ビニルテープをOHPシート(または写真のフィルムなど)
にはって,それを穴あけパンチで穴をあけ,テープをはがしてスライドガラスには
りつける。
【方法上の留意点】
(1) 実験A同様,顕微鏡のしぼりを調節して,収縮胞を観察しやすい明るさにする。
(2) 収縮胞の収縮頻度(拍動回数)は,個体によって差がある。また,プレパラートに
セットすると,微妙に条件が変わって,変動する場合がある。
(3) プレパラートに封じ込まれたゾウリムシは時間とともに弱るので,測定開始直前
にプレパラートに封入する。
(4) 収縮頻度は,収縮から収縮までの時間〔秒〕を測定して,それを1分あたりに換
算する。
【考察と仮説の検討】 教科書のレポート例の結果を見ると明らかなように,食塩の
濃度が上がるほど1分あたりの収縮頻度が減少している。このことから,仮説「外液
の濃度を高くすると,収縮胞の動きは遅くなる。」は正しいことが分かる。
次に,別に行った実験データを示す。
▼収縮1回あたりの時間〔秒〕と収縮頻度〔回/分〕(25℃)
|
食塩水濃度 |
0% |
0.50% |
0.1% |
|
|
収 縮 時 間 (秒) |
個体A |
7.3 |
11.4 |
21.2 |
|
6.8 |
12.2 |
20.6 |
||
|
個体B |
6.3 |
12.3 |
19.9 |
|
|
6.1 |
11.9 |
20.3 |
||
|
個体C |
8.2 |
12.6 |
18.8 |
|
|
7.6 |
11.5 |
19.7 |
||
|
平均値(t) |
7.05 |
11.98 |
20.08 |
|
|
収縮頻度〔回/分〕 |
8.5 |
5.0 |
3.0 |
|

【発展】 本実験で用いた食塩濃度より,濃度を高めた場合の収縮頻度については,
実験結果から考えて,0.1%以上の場合も,濃度が高くなるほど,収縮頻度が減少する
と予想される。
また,収縮胞の活動が,体内に浸透してくる水の排出であることを考えると,ゾウ
リムシの体液と等張な食塩水に浸したときは,水が浸透しないので,収縮胞の活動が
停止し,さらに高濃度では収縮しないと予想できる。さて,どうであろうか。
次に,0.3%にまで高めた実験結果を示す。
▼0.3%まで高めた場合の結果例〔15℃〕
|
食塩水濃度 |
0% |
0.05% |
0.1% |
0.15% |
0.2% |
0.25% |
0.3% |
|
拍動時間〔秒〕 |
23.0 |
25.1 |
36.2 |
41.5 |
50.6 |
72.0 |
135.2 |
|
拍動回数〔回/分〕 |
2.6 |
2.4 |
1.7 |
1.4 |
1.2 |
0.83 |
0.44 |

予想通り,高濃度になるほど収縮頻度は減少していく。しかし,食塩水濃度を0.3%
以上にすると,1回の収縮に要する時間(拍動時間)が長くなり,測定が困難となった。
したがって,何%が等張液であるかは確認できなかった。
その他,ゾウリムシの大きさ(体積)と収縮頻度との間には,関連がないようである。
また,ゾウリムシの体積と収縮胞の体積には,正の相関が見られ,ゾウリムシが大き
くなるにつれて,収縮胞も大きくなる傾向が見られる。