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実験3〔探究活動〕ゾウリムシの行動
教科書p.115〜117 所要時間3時間
【指導目標】 ゾウリムシの行動を観察するとともに,培養液のゾウリムシが上
部に集まってくる現象がどのような刺激によるものかを,仮説を設定してそれを検
証していく探究の過程を追うことで,探究的な研究の方法を学ぶ。
【準備】 ゾウリムシの培養液・塩化ニッケル・試験管・試験管立て・ピペット・
スライドガラス・カバーガラス・顕微鏡・ゴム栓・段ボール箱・懐中電灯・三角フ
ラスコ
【準備上の留意点】
(1) ゾウリムシの簡易培養法として,稲わら法やレタスジュース法・カロリーメイ
ト法などがある。容器は三角フラスコなどを用い,アルミはくでふたをする。培養
温度20〜25℃で1週間〜10日後に最高密度に達する。置き場所は暗所がよい。
@ 稲わら法;稲わら10gを切り,水1000mlを加えて煮だした液を1日ふたをせ
ずに放置し,煮だし液を三角フラスコに分注する。冷えてからゾウリムシを入れる。
A レタスジュース法:レタスをよく洗ってジューサにかけ,ジュース2mlを蒸
留水100 mlに加える。残ったジュースは2mlずつ小試験管に分注して冷凍保存して
おくといつでも使える。また,レタスを100℃で十分乾燥させて作った粉末1.5gに
水1000mlに入れて煮出したものを冷やして用いてもよい。
B カロリーメイト法;市販の滅菌ミネラル水に流動カロリーメイトを0.1%の割
合で混合する。この培養液にゾウリムシを入れる。ときどき振り混ぜる。培養液が
透明になってきたらカロリーメイトを数滴加える。
(2) 実験に用いるゾウリムシの培養液はできるだけ高密度の方がよいので,培養中
の三角フラスコの上部の壁面の集中している部分から採取して試験管に取る。それ
をしばらく静置しておいて上部に集まった部分をスポイトで吸って試験管に移す
か,遠心分離器で集めるとよい。さらに,濃縮させたいときは,塩化ニッケル溶液
を加えて,沈殿させてから上の培養液だけをスポイトで吸って取り除いておくとよ
い。
【方法上の留意点】
<実験A> ゾウリムシの行動の観察
(1) 培養液中のゾウリムシは白い小さな点として肉眼でも見えるが,明るい方や光
に透かしてみると,無数の白い点が動いているのがよくわかる。
(2) 試験管に立てておくと2〜3分で上部に白い点が集まってくることがわかる。
(3) 泳ぎ方を観察する場合は,100〜150倍の低倍率で検鏡し,動き方を観察するが,
すぐに視野から消えてしまうので,スライドガラスを動かせて探す必要がある。障
害物として綿の繊維などを入れてもよい。顕微鏡をビデオカメラに接続して,モニ
ターテレビで観察すると行動がわかりやすい。
<実験B> ゾウリムシの行動を考える
(1) ゾウリムシが試験管内の培養液の上部に集まっていることを観察し,その原因
をみんなで考えて出してみよう。教科書では4つの仮説を上げておいたが,これ以
外にも考えられる仮説をみんなで提案してみよう。その際に,その仮説が実験で検
証することが可能なものでないと,検証することができないので,仮説としては適
切とはいえない。
(2) 仮説が設定できたら,それを検証するための実験方法を考える。それぞれの仮
説を支持するグループに分かれて,検証実験を行うとよい。次に検証実験を行う上
での留意点を述べておこう。
@浮力仮説:ゾウリムシの体が水より軽いかどうかは,体積と質量から密度を求め
られたらよいが,小さすぎて難しいので,泳げなくして沈んでしまうかどうかを調
べてみる。動けなくするには,培養液と等量の0.02%塩化ニッケル水溶液を加える
(繊毛の動きを乱す)か,培養液全体の濃度が5%になるようにエタノール(繊毛を除
去する)を加えるという2つの方法がある。いずれかを試してみて,底へ沈んでしま
ったら水には浮かないことがわかる。もし,浮けば浮力によって上部に集まってい
る可能性がでてくる。
A空気界面仮説(または,酸素に対する正の化学走性):この仮説では空気(酸素)に触
れないようにすればよいのだから,何かで試験管の口にふたをすればよい。手近な
ものにはゴム栓やコルク栓などがある。これで,酸素が入らないように注意してふ
たをしても上の方ヘ集まってくれば,この仮説は誤りになる。また,ゴム栓やコル
ク栓の化学成分に集まる習性があるという反論も考えられるので,栓をした試験管
を上下逆にして,それでも上部(試験管の底)に集まれば,化学走性は否定される。
B光走性仮説:教科書のように暗箱に入れておくか,試験管の下か横から光を当て
て,光に対する反応を確かめるとよい。
C重力走性仮説:この仮説を検証するには重力のない環境にゾウリムシを置くこと
が考えられる。スペースシャトルに乗せるなどして,宇宙空間において行動を観察
できればよいが,私たちにはむつかしい。また,試験管を常に回転させる装置をつ
くって,ゾウリムシの反応を見ることも考えられるが,回転によってばらばらにな
ることが考えられる。というわけで,何かよい案がないだろうか?という形で終っ
ている。実際にゾウリムシがどのように重力を感じているかは不明である。
【結果のまとめと考察例】
<実験A> ゾウリムシの行動の観察
ほとんどが試験管の上部の水面近くに集まった。
(2) 動く方向は教科書の図の左方向で,回転しながら動いていることがわかる。先
が丸くなっていて,細胞口が開いている方が前である。
(3) 600倍で観察すると,繊毛は泳ぐ方向とは反対方向に波を打つように動いてい
る。また,近くにある繊毛は同じ方向に同調して動いている。
(4) 障害物にぶつかると,繊毛を反対方向に打って,通常とは反対向きにいったん
少し戻り,再び通常の向きで障害物を避けるように動くことが観察される。
<実験B> ゾウリムシの行動を考える
(1) そのままだとゴム栓の化学成分に集まっている化学走性のためである可能性
もある。 試験管を上下逆にしてそれでも上(試験管の底の側)に集まれば,その可能
性を否定できる。
(2) 暗箱内で試験管の下のほうに光を当てて,下へ集まらなければ正の光走性は否
定できる。また,横から光を照射してみてもよい。