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実験2〔観察〕 カイコガのフェロモン
教科書p.112 所要時間1時間
【指導目標】 性フェロモンの劇的な効果を観察する。
【準備】 羽化の近いさなぎ(雌・雄),透明のふたつきの容器,
【準備上の留意点】 東京では都立の蚕糸試験場が春・秋の2回,実習用のカイコ
ガの配布を行っている。他にカイコガを飼育している大学の研究室に頼んで分けても
らうなどの方法がある。
【方法上の留意点】 (1) 羽化は毎朝6〜8時ころ。雌雄のさなぎは必ず分けておく。
(2) 雄は容器内の雌の姿を見ても反応しない。しかし,容器のふたを開けると激し
く羽根を動かす。このはばたき行動を婚礼ダンスという。雌は雄の羽ばたきを感ず
ると,腹部の先端を上げる。
(3) カイコガの雄は飛ぶことができない。人為選択で飼育しやすいように飛べない
ままにした系統である。しかし,はばたき行動は可能である。昆虫は肢が接地した
ままでは通常ははばたかない。性フェロモンが存在しない場合は,肢を接地すると
はばたきを停止する。
(4) 雄の触覚を両方切除すると,雌の姿を見せても反応せず静止したままとなる。
(5) 雄の左右どちらかの触覚を切除すると,雄は正常な婚礼ダンスを示すが,雌に
対する正常な定位はできなくなり,触覚のある方向へと回転する。
雄は婚礼ダンスをしながら左右の触覚で性フェロモンをキャッチし,転向走性的
に雌を発見する。
(6) 雄の羽を根元から全部切徐すると,雄はランダムに歩き続け雌を発見できなく
なる。
はばたきは前方にある空気を運び込んで,触覚がフェロモンを検証する条件を整
える。また,はばたきは平行的気流をつくりだすことで,触覚による左右両側のフ
ェロモン濃度差検出機能を高めている。
【考察】 @ 触覚は雌から放出される性フェロモンの感受器である。雄の触覚は
雌より複雑な構造をしている。
A 雌の腹部の末節(通常,第8節〜10節は第7節の下に隠れている)を外側に反転突
出させて性フェロモンを分泌する。フェロモン分泌腺から表皮ににじみ出されたフ
ェロモンは外気にふれると自然に蒸発によって放出される。
【科学史】 ドイツのブテナントは日本から送られた100万匹のカイコガのうち,
50万匹を脱皮ホルモン,エクジソンの研究に,残りの50万匹を誘引物質の研究に用
いた。1959年,12mgの結晶性誘導体として単離に成功した。やや不純物を含んでい
たが,この物質は炭素数16の直鎖の不飽和アルコール(E),(Z)-10,12-hexadecadieb-1-ol
と確認され,カイコの学名 Bombyx mori にちなんで“Bombykol(ボンビコール)”と命
名された。1939年に彼がカイコガの誘引物質の論文を書いてから実に20年後のこと
であった。
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わずか数分子が触覚に感受されることで,婚礼ダンスを引き起こすことができる。
参考文献 湯嶋健『昆虫のフェロモン』(東京大学出版会,1976),立田栄光ほか『昆虫の神経生
物学』(培風館,1979),石井象二郎ほか『昆虫行動の化学』(培風館,1978)