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実験5〔観察〕 DNAの抽出

教科書p.93  所要時間1〜2時間

 

 

指導目標 ニワトリの肝臓など,DNAを多く含む試料から,DNAの分子を抽

出し,ガラス棒にまきとる。実験の過程を通じて,細胞内におけるDNAの存在の

しかたを類推できるように指導する。

 DNA分子は,何重ものらせんをつくって折り曲げられ,圧縮されて小さい核の中

に入っている。たとえば,ヒトをつくっている細胞1個の核の中にあるDNAをほ

ぐして1本の糸にすると,その長さは約2mに達すると計算できる。

 この実験では,材料の組織からDNAを細胞の外にとり出し, タンパク質は熱に弱

く,DNAは比較的熱に強い性質を利用してタンパク質を除き,次いで糸をつむぐよ

うにして長いDNA分子を抽出する。

【準備】 材料;動物では冷凍したニワトリの肝臓,またはブタの肝臓,おろし金,

ビーカー,ガラス棒,ガーゼ,ろ紙,0.3%トリプシン溶液,エタノール, 12%食

塩水,氷,蒸留水,メチレンブルーや酢酸オルセインなどの染色液

【準備上の留意点】

(1) 購入したニワトリの肝臓は,冷凍して保存しておく。20g1匹分のやく半分。

ニワトリの肝臓が手に入らないときはブタでもよい。動物性材料として,ほかに魚

(タラなど)の精巣もよい材料である。発展に示したが,植物材料としては,ブロッ

コリーなども利用できる。

(2) 従来はタンパク質の除去のためにクロロフォルムなど,有害な有機溶剤をもち

いていたが,今回の方法では,酵素トリプシンによる分解と熱変性によりタンパク

質を沈殿・除去するので,安全な実験が可能になった。

(3) トリプシン溶液の濃度は0.3%に調整する。pH78のリン酸緩衝液に溶かすの

が望ましいが,水道水でもよい。ビーカーを氷水中で氷冷しながら調整し,使用ま

でつけておくとよい(トリプシンの自らの分解を防ぐ)。保存は冷凍にしておく。ト

リプシン溶液の代りに洗剤液(150mlの水に台所用洗剤を一押し)を使うこともでき

る。

(4) 12%食塩水。トリプシン溶液とともにすりつぶした材料と食塩水をあわせて最

終濃度が12mol/lになるようにする。

(5) エタノールはあらかじめ冷やしておく。

(6) エタノールやろ液を冷やすため,多量の氷を用意して発泡スチロールの保温性

のよい箱などに入れておくとよい。

方法上の留意点

(1) 材料を凍らせることで細胞を破壊し,DNAを抽出しやすくするので,直前ま

で冷凍庫に入れておく。

(2) ここではおろし金ですりおろしてから,乳鉢中でトリプシン溶液を加えてすり

つぶす方法を示した。この過程でDNAと混在しているタンパク質が分解される。

おろし金がなければ,はじめから乳鉢中ですりつぶしてもよい。

ミキサー中でトリプシン溶液と共に粉砕する方法もある。トリプシン溶液の代り

に洗剤液でもよい。ミキサーで行う方法の目安としては肝臓100gに洗剤液150ml

50g2分間連続粉砕。これをビーカーに入れ,各班に30 mlずつ配る。 

(3) 食塩水を約40 ml (いままでの容量とほぼ等量)加えて軽く混ぜる。どろっとし

た感じになればよい。ここまではなるべく手早く(5分以内で)進めるようにする。

(4) 乳鉢からビーカーに移し,100℃で5分間加熱する。湯煎する方法もある。赤

みがかった肝臓の色が白く変わるまで加熱する。ここではDNAは壊れやすい状態

にあるので,やさしく作業する。過熱によりタンパク質が凝固して除かれる。

(5) 手で触れるくらいの温度になったら,4枚重ねのガーゼでろ過する。この段階

では粘性が高いので,ガーゼかさらしでこし,精製時はろ紙を使う。ろ液は氷中で

冷やすとよい。

従来は遠心分離機で沈殿するタンパク質とDNAを分けていたが,2回に分けてろ

過することで,手軽に行え,時間も短縮された。

(6) 冷やしたろ液に,あらかじめ冷やしておいたエタノールを静かに入れ,ガラス

棒で静かにかき混ぜる。低温のほうがDNAが沈殿しやすい。白っぽい沈殿物とし

DNAが出てくる。エタノールの量は溶液量の23倍。入れすぎても心配はない。

DNAは繊維状なので,ガラス棒に絡みついてくる。

(7) ガラス棒に巻きついたものが粗DNA。巻きとったDNAを別のビーカーにとり,

できるだけエタノールをとり除く。巻きとったあと,さらにガラス棒でかき混ぜて

塩溶液とエタノールをよく反応させ,なるべく多くのDNAをとる。

(8) (3)の食塩水を加える過程から繰り返して,DNAを精製する。エタノールが残

っていると,DNAが食塩水によく溶けないので,エタノールはできるだけとり除く。

再び(3)の過程にもどり,食塩水を2030 ml加えて粗DNAを溶かし,再度の加熱

後,ろ過・冷却し,エタノールを入れてDNAを沈殿させる。精製の操作は繰り返

すと収量が減るが,純度は増す。煮沸後のろ過は,粘性が下がったらろ紙で行う。

熱いうちにろ過したほうがろ過しやすい。エタノールを加えると液の境界線あたり

DNAが白く出てくる。エタノールは静かに加える。

【考察】 抽出できたものが,確かにDNAであるかを確かめるのはむずかしい。

ここでは,細胞の観察で核(染色体)を染めた染色液で,得られたDNAが染まれば抽

出したものがDNA (核からの抽出物)であるとする。

 得られたDNAを食塩水に溶かし,その食塩水を割り箸や筆にとり,ろ紙に文字

や絵を書いてみる。そのろ紙をドライヤーで乾かした後,メチレンブルーなどのう

すい染色液につけて染色する。水で染色液を洗い流すと,文字や絵の部分が濃く染

まって浮き出て見える。

【発展】 植物材料として,ブロッコリーはよい材料である。茎を除く「つぼみ」

の部分でDNAが抽出できる。ブロッコリーの場合,方法(2)の粉砕は,一気に70 ml

の洗剤液と氷30gを加えて4分間の連続粉砕がよいとされる。

方法(3)で,ブロッコリーは水分が多いので,食塩の濃度が12mol/lになるよう

直接食塩を入れる方法がよい。粉砕した液全体がどろっとした感じになればよい。

参考】 従来クロロフォルムや遠心分離をもちいた方法は,時間もかかる実験だ

った。改良された本実験は,準備のしかたによって12時間で行えるようになっ

た。本実験は,1998年東レ理科教育賞を受賞した森田保久先生の方法をもとにして

いる。同先生のウェブページに方法が詳しく紹介されている。

http://village.infoweb.ne.jp/~yasuhisa/hisa1.htm

 

 










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