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実験5〔観察〕 植物の組織

教科書p.37  所要時間1時間

 

 

【指導目標】 単細胞生物のゾウリムシ・ミドリムシなどの細胞内にも,それぞ

れの役割をする構造が認められる。多細胞生物になると,細胞の分化がおこり,

異なる機能をもった組織や,その集まりである器官が発達するようになる。

(1) 葉や茎などの器官の切片を観察し,器官がいくつかの組織が集まって形成さ

れていることを理解する。

(2) 組織を構成する細胞は特定の形態や機能をもった分化した細胞でできてお

り,組織の違いは,組織を構成する細胞の違いによるものであることを理解す

る。

【準備】 植物の葉や茎など,顕微鏡,スライドガラス,カバーガラス,柄つき

針,ピンセット,かみそり,発泡ポリスチレン,ペトリ皿(水を入れておく),ろ

紙,ガーゼ,酢酸オルセイン液,サフラニン液,ライトグリーン液など

【準備上の留意点】 

(1) 観察材料の選定にあたっては,観察のねらいを明確にすることはもちろん,

材料の入手のしやすさや扱いやすさも検討する必要がある。植物体の組織を観

察するねらいとして,例えば,次のようなものが考えられる。

 @ 1つの植物体について,根や茎,葉などの器官を総合的に観察し,植物体

の全体像をつかむ。

 A 茎や葉など,特定の器官や組織に注目し,双子葉類と単子葉類など,分類

群が異なる材料について,観察結果を比較する。

(2) 観察に用いられる適当な材料としては,次のようなものがある。

  ・葉の組織  ツバキ,サザンカ

  ・茎の組織  双子葉類 アフリカホウセンカ,オドリコソウ,モヤシ

         単子葉類 ニンニク,トウモロコシ,タケノコ水煮)

アフリカホウセンカ(Impatiens)とニンニクは入手が容易である。アフリカホ

ウセンカは南アフリカ原産であるが,観賞植物としてよく見かける。栽培し

やすく,ほぼ1年中開花し続ける(だだし,冬季は加温が必要な場合がある)

花粉管の発芽実験に適しているので,教材生物として栽培しておくとよい。

採集時期が限定される材料は7080%程度のエタノールで固定,保存してお

く。こうすれば,室温に放置しても,観察に用いることができる。また,市販

のタケノコ(水煮)やモヤシは維管束系の観察に適した材料で,入手が容易で

ある。

生徒に材料を持参させる場合は,校庭から安易にとってくることがあるの

で,柔らかすぎる葉や,かたい木の枝などは切片をつくりにくいなど,組織

の観察に不適切な材料があることを事前に説明しておきたい。

(3) 切片をつくるとき,以前はニワトコの髄を用いた。今では高価なので,商品

のパッキングなどに用いる発泡ポリスチレン(通称 発泡スチロール)を代用す

る。堅さの違いがあるが,できるだけ柔らかいものを用いるほうが切片の作成

には都合がよい。同様の素材でできた人工ピスも市販されている。かみそりは,

両刃かみそりが薄くて使いよい。半分に折って使用する。

(4) 薄くて観察しやすい切片をつくるのは,生徒に限らず決して容易ではない。

あらかじめ,市販の組織プレパラートを何種類か用意しておき,自分たちで作

成したプレパラートと観察のしやすさを比較しつつ利用するとよい。

【方法上の留意点】 

(1) 発泡ポリスチレンは1cm角ぐらいに切りとり,間に割れ目を入れる。このと

き,無理に割れ目を押し広げようとすると,欠け落ちてしまうので注意する。

(2) かみそりの刃で切るとき,教科書の図のように右手でかみそりを,左手で発

泡ポリスチレン片を持ち,手前に右へ引きながら,できるだけ薄く切るように

する。

 切り終わったら,かみそりの刃をペトリ皿にはった水につけ,刃についた発

泡ポリスチレンと材料の切片を浮かべる。次いで,刃の水をふきとり,次の切

片をつくる。かみそりの刃を強く引くと指を切ることがあるので,十分注意さ

せる。

(3) つくった切片を染色しないで観察するときは,細胞間隙に空気がはいってい

て観察しにくいことがある。大形の注射器の外筒に水と切片を入れ,先を指の

腹で押さえ,内筒を引くことにより間隙の空気を水に置き換えることができる。

(4) サフラニンとライトグリーンによる二重染色を行えば,核と細胞壁はサフラ

ニンにより赤く,細胞質はライトグリーンにより青く染まる。サフラニンは,

特に,リグニンの沈着により木化した細胞壁を赤く染色する。ツバキの葉では,

道管や仮道管,木部繊維など,細胞壁が肥厚している部分は赤く,さく状組織

や海綿状組織など細胞質が充実している部分は緑に染まる。二重染色では,本

来は別々に染色するのだが,50分の授業時間を考えると,複合液の利用が簡便

でよい。複合液には両色素が含まれており,これを時計皿などに用意しておき,

そこに切片を浸して染色する。1回の手間で2種類の色素により染色できる。

《サフラニンとファーストグリーンによる二重染色用複合液の調整》

 サフラニン0.30gとファーストグリーン0.05 gをエタノール10cm3に溶かし,

水で5倍に稀釈する。

(5) できのよいプレパラートを提示用などでしばらくの期間使えるようにした

い場合,簡便な方法として次のような封入法がある。

 @ バワラップによる封入 パラフィン:ワセリン:ラノリン:松脂=11

12の重量比で弱火にて溶解後,シャーレなどの器に入れ固化させておく。こ

れを,熱した針金(三角形に曲げたものを柄につけておく)で溶かし取り,カバ

ーガラスの四辺をシールする。

 A オイキット(EUKITT,商品名)による封入 オイキットは,永久プレパラー

トの作成に用いる手軽で簡単な包埋剤である。永久プレパラートの作成では脱

水処理などが必要だが,ここでは組織片に直接オイキットを滴下(1)する。そ

の上に新しいカバーガラスをかけ,重りとして押しピンを1個のせておく。オ

イキットは約1時間で固まる。水分はろ紙などで十分にとり除いておくこと。

【結果の整理・考察】 (1) 双子葉類と単子葉類の茎や葉の構造は,教科書p.39

の図25のようになる。さく状組織・海綿状組織などの基本組織系,道管・師

管などを含む維管束系,表皮・気孔をつくっている孔辺細胞などの表皮系など,

異なる形態の細胞や,それによってできた種々の構造がみられる。

(2) 切片に厚みがあると細胞の形態が観察しづらい。また,茎に対して斜めに切

った切片では細胞の切り口も斜めになり,教科書の図のようには見えない場合

がある。

(3) 茎や維管束に対して垂直に切った切片が教科書では一般的だが,維管束系の

構造を調べたい場合などは,茎を縦に切るとよい。たとえば,カイワレダイコ

ンの茎は細いので,縦割りにしたものをサフラニンで染色し,押しつぶし法で

プレパラートにすると,道管の細胞壁の側壁が部分的に肥厚・木化してできた

らせん紋道管などが観察できる。

【発展1】 植物体の成長

 4月ごろ,ツバキの葉を観察すると,その年の春に開いた青々とした新葉と,

昨年からついている濃緑色の旧葉とがある。新葉は手触りが柔らかく,厚さも

薄い。旧葉は硬くて厚い。そこで,それぞれの葉について,組織の違いを調べ

てみる。実験手順は,ツバキの木から新葉と旧葉をとり,実験5と同様の方法

でプレパラートをつくる。

顕微鏡で観察すると,新葉は旧葉と比べて海綿状組織のすきまが少なく,細胞

が密につまっている。また,表皮細胞やさく状組織の細胞は旧葉のものほどは成

長していない。葉の硬さの違いは,こうした細胞の発達程度の違い(細胞壁の発達

など)に加え,表皮細胞のクチクラ層の発達(ツバキのような常緑樹は落葉樹より

クチクラ層が厚い),維管束系の形成,硬膜組織(葉縁部や葉脈部の皮下直下)など

の発達も関係している。

海綿状組織にある細胞間隙の形成については,次のように説明されている。新

葉の段階では,どの細胞も歩調を合わせて細胞分裂と細胞の伸長を繰り返してい

るが,やがて,海綿状組織に分化する細胞は分裂を止め,さらに成長速度も衰え

て,他の部分と歩調が合わなくなる。このため,この組織の細胞に,主に水平方

向の張力(引き伸ばす力)が作用し,細胞間隙できる。

【発展2】 動物体の組織の観察

 結合組織のうち,血球成分は教科書の第5部第1章恒常性p.129で扱うことが

できるので,それ以外について授業展開を考える。

@ ニワトリの手羽先を用いた観察

   スーパーで販売されている手羽先を,まず,筋肉と骨格にわける。

  ・筋肉…ピンセットと柄つき針で筋繊維をほぐし,メチレンブルーか酢酸オ

ルセインで染色する。高倍率で観察すると横紋が観察できる。

・骨格…食酢に3〜7日程度浸して石灰質を溶かせば,硬骨の切片をかみそ

りで作ることができる。また,関節部をかみそりで薄くそぐと軟骨

組織のプレパラートができる。いずれもメチレンブルーで染色する

と観察しやすくなる。

A 缶詰(マグロフレーク)を用いた観察

  食用またはペットフードとして販売されているマグロフレークの小片を

とり,メチレンブルーで染色して検鏡すると,横紋筋の特徴である横紋が観

察できる。缶詰は扱いが簡単で貯蔵もできるので,手軽に横紋を観察させた

いときには便利である。

 @の手羽先の処理には多少の手間がかかるので,準備に時間が取れない場合は

市販されているプレパラートを用いるとよい。準備が難しい組織も含め,市販の

プレパラートは種類が多いので,授業で学習したポイントを観察で確認できる。

数種類のプレパラートを生徒に配布する場合は,プレパラートが収納できる専用

シート(プレパラートファイルに入れるシート)にあらかじめセットしておくと,

扱いや過不足の点検が容易で,破損の恐れも少ない。

 授業展開例

  ・皮膚の断面 →表皮(上皮組織)と真皮(結合組織)に区別できることを観察す

る。

  ・筋組織 →骨格筋(横紋筋)と内臓筋(平滑筋)と心筋の細胞の違いが観察でき

る。

  ・神経組織 →脳神経では,神経単位の概観(細胞体など)を観察できる。脊髄

神経の横断面では,白質と灰白質の違いなどが観察できる。

ただ,植物と比べ細胞が小さく,細胞どうしが密着していて,組織によっては

高倍率での観察が必要になる。また,染色法の違いにより見え方が異なる場合が

ある。

観察できた組織や細胞を考察させる場合は,教科書や資料集を活用したい。

【参考】 △結合組織 軟骨では,低倍率でも1個〜数個ずつ軟骨細胞が集ま

ったものがちらばっている。硬骨では,低倍率でハーバース管を中心に同心円状

の層状構造が見られる。層の部分を高倍率で見ると,骨細胞が互いに連絡してい

るのがわかる。

△筋組織 横紋筋では,低倍率でも筋繊維が見られ,高倍率で横紋を見ることが

できる。平滑筋には横紋はなく,細長い単核の細胞の集まりが見られる。心筋(

臓の筋肉)は横紋筋の一種であるが,骨格筋をつくる横紋筋とは異なる特徴をも

つ。

主な形態的な相違点は次の表の通りである。

 

横紋筋

心筋

筋繊維

長い

竹と節のようにつながる

細胞中の核数

多核

1(ときには2)

核の位置

細胞表面

細胞中央

 

 










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