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B さまざまな遺伝
◆多性雑種
生物の形質は,われわれが実験の便宜上定めておくような1〜2の遺伝子のみに
よるものではなく,多くの遺伝子が複雑に関係している。そこで,多性雑種とは,
着目した幾組かの対立遺伝子をもった両親の間の雑種である。雑種とは両親の異な
った遺伝子をヘテロにもつもので,表現型は同じであっても,F2以降は対立遺伝子
の優劣関係・相互作用・連鎖関係などによって,その分離比は一定でない。優劣関
係が完全で,遺伝子相互の作用もなく,連鎖関係がないときには,「独立の法則」
にあてはまる。そしてn対の対立遺伝子をもつものの間の多性雑種では,そのF2
の表現型の分離比は (3+1)nの展開式にあてはまる(次表参照)。
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各種雑種におけるF2の表現型分離比 |
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雑種の種類 |
F1の遺伝子の |
F1の配偶子 の種類数
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F2の組み 合わせ数
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F2の表現型分離比と〔種類数〕
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一遺伝子雑種(1) |
Aa |
21=2 |
22=4 |
(3+1)1=31+1 |
〔2〕 |
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二遺伝子雑種(2) |
AaBb |
22=4 |
42=16 |
(3+1)2=9+3+3+1 |
〔22〕 |
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三遺伝子雑種(3) |
AaBbCc |
23=8 |
82=64 |
(3+1)3 |
〔23〕 |
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多遺伝子雑種(n) |
AaBbCcDd・・・ |
2n |
(2n)2 |
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〔2n〕 |
◆中間雑種
優性と劣性との関係は,二倍体細胞の各対立遺伝子がそれぞれ作用を及ぼし合う
結果として起こるものである。したがって,表現型はそれらの対立遺伝子の相互作
用の結果を反映している。もし,一方の対立遺伝子が機能をもち,他方が機能をも
たない場合は,前者が優性となって現れる。第二の対立遺伝子が第一の作用を抑制
する場合は,第二の対立遺伝子が第一のものに対して優性となる。もし一方の対立
遺伝子が,十分なだけの物質をつくる作用がないならば,ヘテロ接合の個体は優性
形質と劣性形質の中間の形質を示し,中間雑種となる。この場合,不完全優性とよ
び,優劣がはっきりしている場合を完全優性として区別する場合がある。教科書で
は例として,マルバアサガオをあげてあるが,これでは花色の赤と白を交雑すると,
Flはピンクとなる。また,オシロイバナの花色も例にあげられることがあるが,こ
れは追試のデータが乏しいためにとり上げなかった。そのほかにヒトのABO式血
液型におけるAB型などもある。中間雑種の中には,必ずしもちょうど中間の形質
を示すわけではなく,AaがAAに近い形質となったり,aaにかたよったりするこ
ともある。
◆致死遺伝子
正常な寿命より以前に,一定の時期に個体に死をひきおこす遺伝子のこと。もし,
それが優性の突然変異によって生じたものであれば,この遺伝子をもつ個体をすべ
て殺すことになる。劣性の場合は,下図の黄色のハツカネズミの場合のように,F1
で出現する表現型と分離比が,胎死するものがあるために乱れてくる。つまり,黄
色のハツカネズミどうしを交配すると,F1は黄色のものと他の色(ねずみ色)のもの
とが,常に2:1の割合に出る。黄色は他の色に対して優性であるから,ヘテロど
うしの交配と考えると,F1では3:1に現れるはずである。これは,黄色の遺伝子
に致死作用が伴っているとすれば,黄色のハツカネズミはすべてヘテロでしか存在
しないから,すべて説明がつく。
植物の白子もクロロフィルを有しないために生育できないので,一種の致死形質
と考えられる。
致死作用の原因はいろいろあると想像されるが,アカパンカビにおける数多くの
代謝異常の株が,特定の物質を補給しなければ死に至ると同じように,重要な代謝
系の機能を遺伝的に阻害されるものが多くあると考えられ,発生現象を解くために
も重要な手がかりを与える。

◆ABO式以外の血液型
1.MN式血液型1926年ランドシュタイナー(Landsteiner)によって発見された。あ
る人の血をウサギに注入すると,人の血球に含まれる一種の抗原に反応して,ウサ
ギにその抗体が生じる。このウサギの血清を採って,それに多くの血液をひとり分
ずつ混ぜてみると,その抗体によって凝着される血液と,反応しない血液とがある。
これによってM型・N型・MN型と3種を区別する。MN型とは,どんな人から採
ってつくった血清にも反応する型であり,M型とN型とは,それぞれ別種の血清
に反応するものである。この区別は遺伝子LM・LNによって発現され,M型はLMLM,
N型はLNLN,MN型はLMLNであると考えられている。
2.Q式血液型 ブタやウマなどの血液にある抗体によって,一部の人の赤血球に
凝着が起こる。この抗原のあるものをQ+,ないものをQ−といい,それぞれ完全優
性を示す1対の遺伝子Qqにより支配決定される。P式血液型とQ式血液型は同一
のものであることはほぼ確認された。
3.Rh式血液型(Rh blood groups) 1960年ランドシュタイナーとウイナーによって
発見され,その抗原がアカゲザル(Macacus rhesus)の血球とヒトの血球とに存在する
ことからRh因子(Rh factor)と名づけられ,その有無によってRh+型とRh−型に分け
られる。その分布は,欧米人は約85%,日本人は約99%Rh+型である。抗Rh抗体
は,正常なヒトの血清には原則として存在しない。
◆補足遺伝子
ある1つの形質に注目すると,その形質が2つ以上の非対立遺伝子が共存したと
きだけに現れる場合がある。このように互いに補いあって1つの形質を表現する非
対立遺伝子を補足遺伝子という。
この種の遺伝についての,もっとも古典的な例はスイートピーの花色についての
ものである。異なる2種類の白色系統を交配したところ,F1は紫色に,そしてF2
では紫と白が9:7に分離した。これは,花に花青素を生じるには色素原と酸化酵
素とを要することに関係している。白花甲品種は色素原をつくる遺伝子Cをもって
いるが,酸化酵素をつくる遺伝子Pをもっていない。他方白花乙品種は色素原をつ
くる遺伝子はもっていないが,酸化酵素はつくり得ると考える。すなわち,前者は
CCppで,後者はccPPである。両者の交配によるF1では,CcPpとなり色素原も酸
化酵素もつくることができるから紫色花となる。F2では,配偶子の組み合わせから
9/16は紫色花のものが生じるが,7/16は,どちらかが欠けることになり白花という
ことになる。

◆抑制遺伝子
2対の遺伝子の一方の優性遺伝子の発現を抑制してしまう場合で,被覆遺伝子に
よく似ているが,雑種第2代(F2)での分離比は13:3となる。
カイコのまゆは一般に白色で,これは黄色のまゆに対して劣性であるが,欧州産
の白まゆには,黄まゆに対して優性のものがある。この優性白まゆに黄まゆのもの
(ホモ)を交配するとF1は白まゆだが,F1どうしの交配によるF2では,白まゆと黄ま
ゆとが13:3で出現する。黄色を抑制する遺伝子をIとし,黄色の遺伝子をYとす
ると下図のようになる。
