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B 植物の体のなりたち

 

 多細胞生物の代表として,植物(種子植物)と動物(脊つい動物)の体のつくりをざっ

とみていく。多種多様の生物の形態についていちいちあげるわけにいかない。むし

ろ,よく目にする動・植物の主だった器官のつくりを知るようにしたい。

 最初に,植物と動物の体のつくりの違いについて,器官レベルでどうなのか問う

ことが望ましい。(i)動物にあって植物にみられないもの;神経,筋肉,閉鎖循環系,

消化器,肝臓,腎臓などの内臓,手,足,目,鼻,耳など感覚器官,骨,軟骨など

など。(ii)植物にあって動物にないもの;光合成系,維管束,葉,茎,根,花など。

 

◆葉

葉は表皮におおわれ,内部は葉肉とよばれる。表皮とくにその裏面には2個の孔

辺細胞に囲まれた気孔が散在し,水の蒸散とガス交換を調節する。葉肉の細胞は,

葉緑体を多く含み,光合成を行う。表皮のすぐ下に柵状組織,裏面の近くには間隙

の多い海綿状組織がある。葉の内部にも維管束が走り,葉脈を形づくる。葉脈は双

子葉類では網状をなし,単子葉類では平行に走っている。

葉が1枚の場合は単葉,2枚以上の小葉からなるものは複葉という。葉の変形と

して巻きひげ,サボテンの葉針などがある。

◆維管束

細胞が縦または横に連なり細胞間の隔壁が消失した管が集まった維管束には,師

管と道管とがある。シダ植物や裸子植物には道管がなく仮道管があり,細胞間の隔

壁が残っている。同化物を移動させる師管は薄い原形質と核からなる生きた細胞か

らなり,細胞を隔てる膜にはいくつかの師孔があって師板とよばれる。道管は死ん

だ細胞からできており,細胞壁が肥厚して環状,らせん状,網状などの模様を生じ

る。

 

◆茎と根

茎は葉や花をつけ,水分や養分,同化物の通路となる。茎の先端では,頂端細胞

が盛んに分裂して,一次組織をつくる。草では一次組織はやがて分裂をやめるので

太くならない。木では,維管束と皮層の間に形成層・コルク形成層とよばれる二次

分裂組織がある。形成層の細胞の増殖によって内側に木部,外側に師部がつくられ

る。コルク形成層は内側にコルク皮層,外側に樹表をおおうコルク層を形成する。

ジャガイモは茎の変形(塊茎)である。

 根は地中にあって水や栄養分を吸収する。根の先端には根冠があり,その上に頂

端分裂組織があって伸長する。さらにその上部に根毛と側根を形成する部域がある。

根が変化して養分を貯えるようになったものが貯蔵根である。

 

 

植物の組織と組織系

植物体は,動物体と比べて器官の分化が少なく,内部構造もずっと簡単である。

植物の器官を構成している組織を調べてみると,位置上の連続性や生理的なつなが

りなどによって,いくつかの組織群に分けることができる。このような組織群を,

組織系という。

 組織系の分け方は,人によりいろいろである。ザックスは,形態をもとにして,

表皮系・基本組織系・維管束系の3つに分けた。表皮系は主に表皮組織よりなり,

植物体の保護にあずかる。維管束系を構成するのは主に通道組織で,それに機械組

織も加わっている。この組織系は,植物体内の物質の移動に関与する。残りが基本

組織系で,主に柔組織よりなり,光合成や呼吸などの機能をつかさどる。

 ファン・ティーゲムは,組織系を,表皮・皮層・中心柱の3つに分けた。この場

合,どこまでを中心柱とするかについて少し問題がある。根では,中心柱のまわり

に内皮があるので,この3つの区分は容易である。

 ハーバーランドは,生理作用に重点をおいた分け方をした。彼は,皮層・機械・

吸収・同化・通道・貯蔵・通気・分泌・運動・感覚・刺激伝達の11の組織系に分

けた。この分け方は,働きを考える際に便利ではあるが,発生が進んで組織の分化

が発達した後にのみ適用できる分け方で,教科書もそれにそって記されている。

 いずれの分け方も,それぞれ利点や欠点があるが,比較的多く支持されているの

は,初めに述べたザックスの分け方である。

 

形態による植物の分類

植物を形態(内部構造)をもとにして分けると,次の表のようになる。多細胞の植

物では,葉状植物と茎葉植物に大別される。茎葉植物というのは,蘚類(スギゴケ

のなかま)・シダ植物・種子植物の総称であって,茎と葉の区別をもったものをい

う。それ以外の苔類 (ゼニゴケのなかま)・藻類・菌類・細菌類などは,すべて葉状

植物である。藻類の中でも,コンブやホンダワラなどの褐藻類には,外見上茎と葉

のように見えるものがあるが,内部の構造を観察すると,組織の分化がなく,茎や

葉とはいえないことがわかる。

 茎葉植物の中で,シダ植物と種子植物は,体内に水や養分の通路となる維管束が

分化している。それで,それらをまとめて維管束植物という。根・茎・葉の区別が

明確であるのは維管束植物である。教科書では,種子植物を例にしている。

 

形態(内部構造)に基づく植物の分類

特徴

植物群

核の有無

原核生物(細菌類・ラン藻類)

真核生物(その他の植物)

細胞の数

単細胞植物(細菌類・藻類の一部)

多細胞生物(その他の植物)

器官の分化

 

茎と葉の区別

茎葉植物(辞類・シダ植物・種子植物)

葉状植物(その他の植物)

維管束の有無

維管束植物(シダ植物・種子植物)

その他の植物

 

 植物の外形も多様である。葉状植物では,球形(細菌類や単細胞の藻類),長軸の

ある卵形・円筒形・棒状・糸状(細菌類,菌類,藻類),長軸に極性が生じたもの (

オサなど),扁平で平板状に広がったもの(藻類や地衣類),分枝が生じたもの(海産の

藻類),分枝した枝間に分業が生じつつあるもの(紅藻類や褐藻類)などがある。

 茎葉植物でも,「ろうそく形」の針葉樹や,樹冠が丸くなった広葉樹,全体が半

球状になる低木,水平に近い枝を広げる変本類など,外形は多様である。

 

植物の組織の分類

植物の組織の分け方も,いろいろある。

 ふつう,細胞分裂を行っている分裂組織と,分裂組織でつくられた細胞が,成熟・

分化して,もはや分裂しなくなった永久組織に分けることが多い。しかし,両者の

区別ははっきりしないことが少なくなく,一度分裂しなくなった組織も再び分裂す

ることもあり,永久組織という名は適当でないとして用いない人も少なくない。

 下の表は,いわば古典的な組織の分類を示したものである。永久組織を用いない

人も,表皮・柔・機械・通道などの組織名は用いるのがふつうである。

 

植物の組織の主な種類と特徴

 

また,茎や根の先端部にある分裂組織を,古くは成長点とよんでいたが,その部

分は点ではなく,ある広さをもつことなどから,成長点という語も適切でないとし

て用いないことが多くなった。その代わりに,茎の先端を茎頂,根も含めてシュー

トとよぶ。しかし,シュートという語は,高校課程の教科書の表現としては問題が

あると考えて,教科書においては「先端部」という表現にした。

 なお,植物の組織などの学習では,羅列的に覚えたり,表で名を暗記したりする

よりも,実物を観察することが大切であり,できるだけ実験・観察に基づく学習を

期待したい。

 

 

 








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