トップ>新編生物I>第1部 生物体の構造と機能>第3章 細胞の増殖と分化>A 細胞分裂
A 細胞分裂
細胞は,成長と分裂の周期をくり返しながら増殖する。細胞周期は分裂期(M期),
そのあとに続く間期(G1期),DNA合成期(S期),そして分裂が始まるまでの間期 (G2
期)に分けられる。Mはmitosis,Gはgap,Sはsynthesisの略号である。このうちM
期が一番短く多くの動物細胞で約1時間である。
◆核分裂
前期は,細胞分裂の間でもっとも長く,約30分続く。核内の染色体が凝縮する。
すでにDNA複製は終了しており,各染色体は同じものが2本つくられて接してい
る。核膜は壊れて細胞内に分散して,核小体も消失する。動物細胞では,二分した
中心体が細胞の両極に移動し,それぞれから微小管を成長させる。中心体間の微小
管は紡錘糸,細胞膜にいたる放射状のものは星状糸とよばれる。それぞれの集まり
を紡錘体,星状体という。
中期では,染色体が紡錘体の中央の面,赤道面に並ぶ。
染色体の中ほどに動原体があり,両中心体から伸びた紡錘糸が付着する。
後期では,各染色体が2つに分かれ,中心体に向かって移動する。この染色体移
動は,中心体で紡錘糸(微小管)が分解され短縮するので,自動的に中心体に向かう
ためとされている。
終期では核膜が形成され,染色体は分散する。細胞質分裂が起こって,2つの娘
細胞に分けられる。
|
|
分裂の各時期 |
前期 |
中期 |
後期 |
終期 |
計 |
|
植物 |
||||||
|
タマネギの根 |
71 |
6.5 |
2.4 |
3.8 |
84 |
|
|
ソラマメの根(19℃) |
90 |
31 |
3.4 |
34 |
158 |
|
|
ムラサキツユクサの雄ずいの毛 |
181 |
14 |
15 |
130 |
340 |
|
|
単位:〔分〕(『細胞学』桑田より) |
||||||
◆細胞質分裂
核分裂終期で,紡錘体の長軸に直交する赤道面で細胞膜がくびれて細胞が二分さ
れる。その際,細胞膜直下に収縮環(con−tractionring)とよばれる環状構造ができる。
その位置は,両中心体から伸びた両星状体の交わる面である。収縮環はアクチンフ
ィラメントの束で,これにミオシンが結合してアクチンフィラメントの滑りを起こ
させ,結果として巾着の口を閉じるように短縮させ,ついには細胞をくびれ切るも
のと考えられている。
植物細胞では収縮環はつくられない。終期に紡錘体に直交した細胞板ができて細
胞を二分する。細胞板はゴルジ体からちぎれた膜小胞が二層に並んでつくられ,そ
の間に,細胞壁ができてくる。膜小胞体は両側の微小管をへて運ばれてくる。

細胞分裂の過程
(a)間期の細胞。
(b)前期;染色体は部分的に凝縮し,核小体が分散し始め,核膜が断片化し,分離中
の中心体のまわりに小星状体が形成し始める。
(c)前中期;染色体は高度に凝縮し,紡錘体が形成される。
(d)中期;凝縮した染色体が紡錘体赤道面に整列する。
(e)後期;染色分体が分かれて娘染色体となり,中心体に向かって移動する。
(f)終期と細胞質分裂;染色体は凝縮が解かれ,核膜と核小体が再び形成される。微
小管が収縮環の内側に集積して中心体を形成する。アクチンフィラメントから成る
収縮環が分裂溝を内側に縮めさせる。
(g)間期の娘細胞

動物細胞の紡錘体模式図 微小管は両極の中心体から伸びて,赤道面に染色体を
整列させる。2種類の微小管がみられる。極(中心体)と動原体を結ぶ微小管と,両
極の中心体から伸びて紡錘体の中央部で重なり合う微小管がそれ。1対の中心子が
各中心体中にみられる。

動原体 染色分体上の板状のタンパク質から成り,中心体からの微小管の付着部位
となる。染色分体は動原体で互いに接着し,その分離が後期の開始を知らせる。