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C 細胞と酵素
◆酵素
酵素とは,触媒の働きをもつタンパク質というのが現代の定義である。生体内の
条件「体温・体内のpH(多くは中性付近)・1気圧」のもとで,基質特異性をもって
作用する点を十分に理解させる。
◆触媒とは何か
デンプンの水溶液は,そのままではグルコースに分解しない。これは,ヨード反
応による呈色変化で示すことができる。ところが,だ液を加えてしばらくするとヨ
ード反応が消失する。これと同じことは,濃い硫酸(つまり水素イオン濃度を上げ
る)存在下で100℃で数時間煮沸すると起こる。これら3本の試験管をあらかじめ用
意しておいて,デモンストレーションをしながら,触媒(無機と生体)の説明にかか
る。
化学反応(物質の分解や合成)には,ふつうの条件ではなかなか起こりにくいもの
が多い。ところが,何かの物質を入れると,反応が速やかに起こってくることがあ
る。しかもその物質は反応の前後で変化しない。このように,それ自体変化するこ
となく化学反応の速度を調節する物質のことを触媒とよぶ。アンモニア(NH3)は窒素
と水素の化合物であるが,両者を混合しただけでは生成しない。ところが温度を上
昇させ(500℃),圧力をかけ(100気圧),そこに鉄粉(アルミ粉を含む)を加えるとアン
モニアが生じてくる。圧力をかけるのは,気体分子の密度を高めるためであり,高
温は分子の運動を促進する。そして,鉄粉が触媒の作用をする。鉄粉粒子の凹みに,
窒素と水素分子が入りこんで反応を起こし化合してアンモニアとなる。この鉄粉の
ような触媒は無機触媒とよばれる。酵素は生体触媒である。
◆化学反応を促進する方法
一般に次図に示すように,Aという物質とBという物質との間で化学反応が起こ
る場合,まず,AとBとが接触することが必要である。反応の場の温度を上げると,
その物質をつくっている分子の運動が活発になるので,接触の機会も増してくる
(図a)。AとBの濃度や圧力を増しても,互いに接触する機会が増してくるので,
化学反応は起こりやすくなる(図b,c)。
また,ある物質の表面にAとBとを吸着させれば,AとBとは広い空間よりも
接触の機会が増すので,化学反応は起こりやすくなる(図d)。このように,接触の
媒介の働きをもっているものを触媒という。したがって,反応速度を増すためには,
物質の濃度・温度・圧力を増したり,触媒を用いたりする。
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(a) |
(b) |
(c) |
(d) |
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(a)温度を上げる。 |
(b)濃度を増す。 |
(c)圧力をかける。 |
(d)表面に吸着する。 |
◆酵素の触媒作用
酵素の触媒作用は,酵素の表面に反応物質(基質)を吸着して接触しやすくするだ
けでなく,反応物質を活性化して,その活性化エネルギーを低くして反応を起こし
やすくする性質もある。例えば,化学反応A→Bが起こるには,活性化エネルギー
hが必要であるとする。これは次の図のようにA点の石をB点に落とすことに相当
し,その場合,A点よりhだけ高いC点に石を上げなければならない。A点からC
点に石を上げることが活性化することに相当し,AC間の距離hを活性化エネルギ
ーと考えてよい。酵素の働きは,AC間の距離hを短くすることと,Aと石をCま
で持ち上げること(活性化)で,活性化エネルギーを低くすることにほかならない。
活性化を起こす原因については,分極作用,電子変位,結合部のゆがみ,変形など
いろいろ考えられている。
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活性化エネルギー |
◆酵素の作用条件
酵素の触媒作用は,いろいろな条件で大きく変わる。温度が低いと活性が小さく,
だいたい40〜45℃にピークに達し(最適温度),それ以上の温度になると急速に低下
する。これは,タンパク質の構造が熱によって壊れてしまうからである(変性)。溶
液のpHが大きな影響を与える。これも,酵素タンパク質の構造に関連し,ふつう
酸性(pH 4以下),アルカリ性(pH9以上)で失活する。例外はペプシン(pH 2が最適),
アルカリ性ホスファターゼ(pH9〜9.5が最適)である。最大活性を示すpHを最適pH
という。酵素の活性は,作用する物質(基質)の濃度によって影響をうける。また,
活性化剤(マグネシウム,カルシウムなどの金属イオン),SH剤(2-メルカプトエタ
ノール),補酵素(NAD,NADPなど)に依存することがある。タンパク質を変性させ
る物質(重金属イオンや表面活性剤など)が混入すると,酵素活性は低下もしくは消
失する。試薬を溶かしたりするのに,ガラス器具や蒸留水を用いるのはこのためで
ある。
酵素作用が失活した場合,条件をもとどおりにすると,失活酵素は再生されるこ
ともあるが,多くは不可逆である。
◆酵素の種類
(1)加水分解酵素(ヒドロラーゼ) 水の助けを借りて基質を分解する。消化などに重
要な働きをする。
例;アミラーゼ(C6H10O5)n(デンプン+nH2O―→nC12H22O11(マルトース)
マルターゼ C12H22O11(マルトース)+H20―→2C6H12O6(グルコース)
(2)除去酵素(リアーゼ) 基質を加水分解によらずに分解する。
例;カルボキシラーゼ(脱炭酸酵素)
CH3COCOOH(ピルビン酸)―→CH3CHO(アセトアルデヒド)+CO2
(3)転移酵素(トランスフェラーゼ) リン酸基やアミノ基などの原子団を,1つの基
質から他の基質に移す。
例;クレアチンキナーゼ クレアチン+ATPDクレアチンリン酸+ADP
(4)異性化酵素(イソメラーゼ) 基質分子内の原子の並び方を変える。
例;六炭糖リン酸イソメラーゼ グルコース・リン酸Dフルクトース・リン酸
(5)酸化還元酵素(オキシドレダクターゼ) 基質の酸化還元に関与する。細胞内呼吸
に重要な働きをもつ。カタラーゼや各種のデヒドロゲナーゼ(脱水素酵素)がある。
例;乳酸脱水素酵素 CH3CHOHCOOH(乳酸)DCH3COCOOH(ピルビン酸)+2H
(6)合成酵素(シンテターゼ) 多くの生体物質の合成を促進する。
例;クエン酸合成酵素 活性酢酸+オキサロ酢酸Dクエン酸
◆消 化
デンプンは,だ液やすい液に含まれるアミラーゼの作用で直鎖部分がグルコース
とマルトース(麦芽糖)に分解される。枝わかれの多い部分は,小腸の吸収上皮細胞
の細胞膜に固定されているマルターゼによってグルコースに分解される。小腸の吸
収上皮細胞の細胞膜にはアミラーゼもあって,短くなったデンプン(デキストリン)
を分解する。
タンパク質は,胃でペプシンによって,いくつかのポリペプチドに切断される。
ペプシンは不活性型のペプシノーゲンとして合成され,胃内に分泌されてから,ペ
プシンによって一部が切断され,活性型のペプシンとなる。胃粘膜は多糖のねばね
ばした液で保護されている。十二指腸で,すい液が送りこまれる。すい液・腸液は
弱アルカリ性で酸性の胃液を中和する。すい液中には数種類のタンパク質分解酵素
を含んでいる。トリプシンとキモトリプシンで,これらも分泌されるときはトリプ
シノーゲン,キモトリプシ液のトリプシン)によって活性化される。これらはポリ
ペプチドを小さなペプチドに切断する。ペプチドは,小腸の上皮細胞上のペプチダ
ーゼ(カルボキシペプチダーゼとアミノペプチダーゼ)によってアミノ酸に分解され
る。
脂肪は,十二指腸で胆汁と混ぜあわされ,細かい粒になる。すい液中のリパーゼ
は,胆汁で活性化されて,脂肪をグリセリンと脂肪酸に分解する。