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第2節 課題研究の進め方

 

A 疑問から研究テーマの発見

・教科書や本から疑問を出す。他の教科書を参考にする。実験の項目の発展のテーマを扱う。

・比較研究。同じテーマで材料を変えてみる。

・研究テーマの設定

B 情報の収集と仮説の設定

・先行研究事例を収集する。図書館やインターネットを利用。

・フリー・ディスカッションで知りたいことを列挙する。内容の同じものをまとめていく。

・これまでの知見から疑問に対する答えを予想する。これが仮説のもととなる。

C 実験計画の作成

・疑問に対する答えを導くためには,どのような実験あるいは調査が必要かを考察する。

・定量的な実験か,定性的な実験か。道具や試薬は学校にあるか。

・報告書の大枠を決めて作成を始める。結果をある程度予想する。

D 測定とデータの解釈

・客観的なデータが取れているかどうかに注意する。

・グラフ化や,表にまとめることによって解釈がしやすくなる。

・グラフ化は表計算ソフトに付属する機能を使うか,グラフ専用ソフトを使う。

E 仮説の検証と報告書の作成

・仮説を検証→仮説が肯定された→次の課題を設定

・仮説を検証→仮説が否定された→仮説を修正するか,実験(調査)方法を修正する。

・発表会を行う(発表時間・発表形式はできるだけ早い段階で決定し,生徒に周知しておく)

・発表会では簡単なレジュメ(要約)を作成させる。

・レジュメには課題研究のタイトル・研究者・目的と仮説・方法・結果・要約・(主な)参考文献を書く。

・発表をもって報告書にかえてもよい。

その他

・実験に失敗はないということを最初に教えておく必要がある。失敗した実験からも多くを学べる。

・統計的検定を応用するよい機会であるが,生徒は統計的検定に関する知識をもっていない。カイ二乗検定やU 検定など有効な検定があるので活用法を知っておきたい。

 

ねらい (1) 自発的な姿勢を育成し,学習した知識を応用して考察する楽しさを経験させる。

(2) 自分の研究を発表すること,他人の発表を聞くことにより,知識を自分の言葉で把握する。

(3) 課題研究でもっとも重要な指導項目は発表である。公開の機会をつくる。

 

指導上の留意点

◇ これまで学習した中から,自分で課題を設定し,探究の方法を工夫し,検証の過程を経て得た結論を発表し,報告する。発表会などの機会を,適当な時期に設定する。

◇ 初期段階は真似でもよい。最初からオリジナルにこだわらないこと。研究方法は同じでも生き物の対象が異なれば結果は異なる場合が多い。

◇ 教科書や本に書いてあることを鵜呑みにしないこと。意外に正しくないところがある。

◇ 比較研究という方法は一般的に設定課題として有効である。つまり材料を変えて実験してみること。例えば,ツバキの葉の組織が教科書の例に出ていたら,クスの葉ではどうか,サクラでは? と考えてみる。

◇ 一般に生物の研究は調査時期によって制限される。スーパーマーケットで食品として市販されている動植物であっても出回る時期が決まっている。時期をはずすと入手できないので注意が必要。例えば,スイカの研究をしようと思ったら夏しかないということである。生野菜はとくに時期が限られている。

◇ 図書館やインターネットで入手できる情報は玉石混淆である。

◇ フリー・ディスカッションでは,他人の発言の批判はしないこと。とにかく思いついた疑問をすべて付せん紙に書き出してみる。それを並べて同類のテーマをまとめていく。

◇ データを定量化する方法をしっかり考えておく。発表したとき,聞き手を納得させるデータが必要。

◇ この段階で報告書(または論文)を書き始め,仮説とその検証と結果までの骨格を予想して仮に書いてしまうとよい。途中経過を見ながら考え直し,書き直していくことができるからである。

◇ つまり,実験(あるいは調査)を始める時点で報告書または論文は完成していることが望ましい。通常,報告書は実験をしながら書いていくものと考えられているが,そうではない。最初に見通しがたっていないと実験や調査の途中で問題を的確に考察できないのである。

◇ 仮説を検証したら,次の課題を考える。もし検証できなかったときは仮説を修正するか,実験(調査)方法を修正する。

◇ 報告書はワープロ(ソフト)で書くのが便利である。書き直しが簡単に行えるからである。

◇ 発表方法ではパワーポイントが便利である。パワーポイントは基本設定で一画面に字数がたくさん入らないようになっているが,それがパワーポイントの最大の利点である。わざわざこの利点を解消して一画面に字をたくさん詰め込んでいる発表者がいるが感心しない。基本設定以下の字数で作成すること。

 

補説 グラフのかき方

 実験結果や調査結果のデータをグラフに表示する目的は,次の2つのどちらかであろう。

(1) 法則発見の道具にする

 すなわち,データの背後にある傾向や規則性を見出し,仮説を検討する。

(2) 視覚的に効果的な情報伝達の手段にする

 すなわち,結果の発表や報告の際に,数量で表現される情報を視覚的にわかりやすく相手に伝える。

 この2 つは相互に補い合うものであるが,とくに(2)のためにはグラフのかき方に配慮が必要である。また,目的に合った種類のグラフを選ぶ必要がある。コンピュータのアプリケーションソフトやワープロにグラフ機能をもつものが普及して,グラフ作成の手数は以前に比べて減ったが,この方面の参考書は少ない。この項は中里溥志『実験データのグラフ表示』(サイエンティスト社)1 章を参考にした。

 

@ データ領域は通常,正方形にとって実線で囲む方がよい

 

A 全体が利用されるように軸の上限と下限を決める

 

 

しかし,データの中に飛び離れた値があると表示しきれなくなる場合がある。そのような場合であっても,目盛りを分断すると見る人に誤解を与えることになる。適切な変数変換(対数変換,平方根変換,逆数変換など)を用いるとよい。

B 目盛りは軸の外側につけ,目盛りや軸とデータが重ならないようにする

目盛りがプロットされたデータと重なったり,近くに記してあったりすると読み取りの妨げとなる。また,原点を表示する場合にも軸の近くにデータがきている場合はプロットされた点と重なり合って,判読しにくくなる。このような場合は軸から離して目盛りを設定した方がよい。データ領域が混雑しないような配慮が必要である。

C 比較のためにグラフを並置するときは軸の上限と下限を統一する

2つ以上の調査群や処理群を比較するためにグラフを並置するときは,これまでの説明,とくにAはあてはまらない。軸の目盛りを変えてしまうと,グラフを見てすぐに比較することができないからである。

D 目的によってグラフの種類を選ぶ

例として,日本人の脂肪摂取量のデータを棒グラフで表示した場合と折れ線グラフで表示した場合をあげた。どちらのグラフが適切であるかは目的によって異なる。摂取量そのものを問題にする場合には棒グラフの方がよい。棒グラフは棒の長さに意味があるので,必ずゼロの基線を表示しておく必要がある。しかし,摂取量の推移を問題にする場合には折れ線グラフの方がよい。

 

 

 

 








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