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第1節 異種個体群間の関係

 

A 食う者・食われる者の関係

◆食う者・食われる者の関係

従来,この関係の資料として,タビネズミとキツネ,または,カワリウサギとオオヤマネコが,例示されているが,これらは不適当な例と考えられる。例えば,前者では,タビネズミと草という食うもの食われるものの関係による変動にキツネが一方的に依存して起きる変動であると考えられている。タビネズミとその食草との関係や実験的な例としては,植食性のダニと捕食性のダニの相互関係(Huffaker1963)が妥当である。

・周期的変動の実験的研究例

植食性のダニ(Eotetranychus sexmaculatus コウノシロハダニ)と捕食性のダニ(Typhlodromus occidentalis カブリダニの一種)の系を使って持続した個体数の周期的変動を起こすのに成功したのは,Huffaker(1958)である。彼は,ゴムのボールの間に多数のオレンジを少しずつ離して配置して,ダニにパッチ状の生息場所を与えた。捕食者がいないとき,植食性のダニは変動しながらも持続した個体数を保ったが,捕食性のダニを導入したときは増えた捕食者にえさ種はすべて食いつくされ,その結果,捕食者も死滅した(下図ab)。そこで生息場所をよりパッチ状に,つまり,ダニが容易に横切ることのできないように,ワセリンの障壁をオレンジの間に複雑に配置した。ただし,オレンジに何本かの棒を立て,植食性のダニだけがそこから掃いた糸を命綱にして風に乗り,別のパッチに分散できるようにした。この結果は,みごとな周期的個体数変動となった(下図c)。捕食者とえさが共存したパッチでは,捕食者がえさを食いつくしてしまうのだが(そのパッチでは捕食者も続いて死滅する),えさのほうが分散力が強いので,常に捕食者のいないパッチに分散できて,その新しいパッチで増える。やがて,遅れて到達する捕食者によって再び食いつくされる。この繰り返しが安定した周期変動となったのである。

植食性のダニ(コウノシロハダニ)と捕食性のダニ(カブリダニの一種)の相互関係

えさ種だけ(a)のときは振動しながら増えていく。生息環境が単純(b)だと捕食者はすぐえさを食いつくし,自分も滅びるが,生息環境が複雑(c)だと持続した振動を示す(Huffaker1963)

 

B 種間競争と異種共存

◆種間競争と異種共存

それぞれの種が生息場所や食物連鎖の中で占める位置をニッチ(生態的地位)と言い,資源要求の似た複数の種が生息場所や食物をめぐって競争することを種間競争とよんでいる。たとえば,図Aはハチンソンによるニッチの概念図であるが,種間競争はニッチの重複域で起こり,その重複部が大きいほど激しいと考えられる。

2種による競争の結果については,既に述べた微分型ロジスティック式の個体群成長曲線から得られる次のようなロトカ・ボルテラの競争方程式を用いて考察できる。

個体群成長曲線

1 dN1dtr1・{1(N1+α12N2)K}・N1 @

2 dN2dtr2・{1(N2+α21N1)K}・N2 A

ここでは,両種の環境収容力は同じ(K1K2K)と仮定している。また,αは競争係数とよばれ,α12は種21個体を種1に換算したら何個体にあたるかを示している。α21はその逆である。@とAから両種の競争関係を解析するのは困難なので,両種の瞬間増加率がゼロ,つまりdN1dt0dN2dt0とおいてN1N2の関係式を求めると,@より 1(N1+α12N2)K0

N2=−1α12N1Kα12 B

Aより 1(N2+α21N1)K0

N2=−α21N1K  C

BとCは図Bのような直線となる。また,Bは種1の個体数が減りも増えもしない点の集まり(平衡線:アイソクライン)なので,この線より左側の点では種1の個体数が増えようとするし(右向きのベクトル),右側の点は種1の個体数が減少しようとする(左むきのベクトル)。同様に考えると,Cより下の点は種2の個体数が増えようとするし(上向きのベクトル),上の点では種2の個体数が減少しようとする(下向きのベクトル)。以上のことをもとに,図Cのような4つのケースについて安定点を求めてみると,(a)のケースのみで種1と種2の共存が可能であることがわかる。これは,Kα21K かつ Kα12K ,つまり,α211 かつ α121の場合を意味する。安定した異種共存は,種間競争が種内競争よりも小さい時にのみ可能なのである。種間競争は長期的には形質置換などによって緩和されていくが,比較的長い時間を要し,外来種の侵入による急激な撹乱では在来種の絶滅が起こりやすい。

 

A ハチンソンのニッチ概念図。重複域が大きいほど競争が激しい。

 

B ロトカ・ボルテラの競争方程式から求められるアイソクライン

a)1の増加率がゼロとなるアイソクライン。この線より左では種1の個体数が増加し,右では減少する。

b)2の増加率がゼロとなるアイソクライン。この線より下では種2の個体数が増加し,上では減少する。

 

C 2種間競争のアイソクライン分析

実線はdN1/dt=0,破線はdN/dt=0

a) α121かつα211の場合。両種の種間競争力が弱く,共存する。

b) α121かつα211の場合。種1だけとなる。

c) α121かつα211の場合。種2だけとなる。

d) α121かつα211の場合。初期個体数の多い種だけとなる。

 

 








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