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第1節 環境要因

 

A 環境の分類

◆環境という用語

環境という言葉はフランス語のmilieuに由来する。18世紀のフランス唯物論はmi-1ieu(ラテン語のmedius「中心の」,locus「場」「中心におかれたもの」を意味する)という言葉によって,物理学上の概念「物質が運動に際して通過するところの物質的な空間」を規定した。このようなmi1ieu概念はフランスの哲学者コント(A.Comte)によって「Milieuとは,一般に,すべての一定の有機体の生存に必要な何らかの種類の外部的条件の全体である」とされ,生物学に導入された。Milieu概念はドイツに渡ってUmgebungとなり,イギリスでenvironmentとなった。イギリスの哲学者スペンサー(H.Spencer)は,この概念を生物学上の述語として普遍化した。そこではcircumstanceと同義語に用いられていたが,これが日本に入り,はじめ「環象」として,のちに「環境」として用いられるようになった。

フランス唯物論の流れをくむ環境観は,生物とは独立の外界の存在を認めたうえで,その生物を取りまく外界の一切の事物を環境とする,いわゆる「物理的自然」としてとらえることのできる「外的環境」の概念をつくりあげた。しかし,このような環境はそのままでは決して生物学的な環境となりうるものではなく,生物の個体や個体群,群集,生態系などを意味する主体をぬきにしては環境というものを,実体として把握することはできないと考えられる。

 

◆環境の定義

この観点からすれば,環境を生物主体の反応を通じてとらえる主体的環境(subjective environment)と,生物が存在してはじめて環境概念は成立するとする考え方にたちながらも,主体の反応の程度を基準としないで,物理・化学的測定器の目盛りによって温度,湿度などとしてとらえることのできる客体的環境(objective environment)とに分類できる。

ここでいう主体的環境の概念は,ユクスキュル(J.von Uexküll)Umwelt(環境世界)の概念に相当するものである。人間中心的な動物の見方を強く批判したユクスキュルは,さまざまな動物には,その動物の体の構造(体制Bauplan)に適合した独自の世界(環境世界)が存在し,その世界は人間のそれとは全く別なものであると考えた。また,ユクスキュルのいうUmgebung(環境)は生物の生活に関係があろうがなかろうが,その生物を取りまく一切の事物を意味するため,前述の生物体が存在しなくても環境は存在すると考える「外的環境」の概念に相当するものであり,環境を生物との関係で考える客体的環境とは異なる。ここでは,環境をある特定の生物単位(個体,個体群,種,群集など)に影響を与えるすべての生物的および非生物的要因()の総合であると定義しておく。

生物現象を決める環境要因のうち,他の要因が多少増減しても,ある一つのものその現象の能率や速度,あるいは性質をきめるとき,それを限定要因という。光合成において,光要因が好ましい状態ではないとき,他の要因が変化をしてもその影響は少ない。この現象は,リービッヒのいう最少量の法則でも説明できる。

 

環境要因

非生物的環境要因(無機的環境要因)

(1)物理的環境要因

・気候要因(温度,湿度,光,気圧,大気の電気的状態,太陽放射エネルギーなど)

・地形学的要因(地表面の構造)

(2)化学的環境要因

・空気のガス組成,水,土壌の酸性度,岩石・土壌の化学的組成など

生物的環境要因(有機的環境要因)

(1)種内関係(社会的関係)

(2)種間関係(捕食,寄生,共生関係など)

(3)人間の活動による環境形成作用

 

B 作用と反作用,相互作用

◆作用と反作用

火山の爆発などで生じた岩石には,まず地衣類がはえる。地衣類は酸を出して岩石の一部を溶かす。岩石が細かくなった荒れ地に草木や木本の植物がはえてくる。こうして,落ち葉や植物の枯れた部分は,荒れ地に有機物を与え,また根は土壌の粒子を細かくする。さらに土中の根粒菌,アゾトバクターなどは,空中窒素を固定して有機物の形にする。一方,ミミズ,線虫などの動物は,有機物を土といっしょに食べ,不消化物を排出することにより,土壌の粒子を細かくするように働く。

このように,土壌は生物の働きにより変化し,またそれにより有機物や水分を多く含むようになって,植物の生育を助ける。

 

 








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