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第4節 植物の分類と系統

 

 

A 植物の分類

B 植物の系統

◆最も原始的な植物

植物の進化のはじめに,どのようにして葉緑体が作られたのか。また,このような物質をもった最初の植物がどのようなものであったかは,仮説(共生説)はあるとしても不明のままである。しかし,現存の植物の中で最もそれに近いものは,ラン藻類であるとされている。細菌と同じ原核生物に属し,分裂のみによって増殖する。クロロフィルaをもっているが,葉緑体を作らない点も原始的である。ラン藻が原始的な植物であると認められたのは,約35億年前にできたと考えられるストロマトライトとよばれる岩石の発見である。この岩石が,ラン藻類(シアノバクテリア)の集団からできているのがわかったからである。

ラン藻類によって放出された酸素から派生する過酸化水素やスーパーオキシドイオンは,地球上の生物がまだすべて細菌類であった時代には,極めて有毒なものであった。そのため,細菌類の中には,酸素のない場所,例えば,地中とか汚泥の中で生活する嫌気性細菌が出現してきた。破傷風の病原菌(クロストリジウム属細菌)やメタン生成細菌などがこのなかまである。一方,酸素から派生した有毒物質を分解する酵素をもった細菌(好気性細菌)が出現し,好気(酸素)呼吸の道を開いた。

 

◆植物の生活環

生活環を比較してみると,陸上植物において生殖細胞の保護機構に機能的な改善がみられる。比較的安定した環境である水中に対して,陸上では何らかの保護機構が必要である。特に陸上で最も栄えている被子植物は,その胞子が「母体(胞子体)」内で保護されていることからも,それはうかがえる。

 

◆陸上植物への道

現在,陸上植物の進化は,ある種の淡水産緑藻が細胞層を厚くして乾燥に耐えるように適応し,下部の細胞が吸水と地面への固着の役目をもつようになって,最初の陸上植物であるコケ植物が出現し,さらに,体のつくりが複雑化して維管束系を発達させ,陸上生活により適したシダ植物が現われてきたと考えられている。この考え方は,まず,コケの段階を経て,シダに進み,さらに,種子植物への段階へと一つ一つの進化段階を登るように前進的に進化してきたということから「前進説」(西田,1990)とよばれている。しかし,この説には異論があり,リニア類のような原始的なシダが陸上植物の祖先であり,コケ植物はシダ植物が環境に適応して退化したものであるというコケ植物の「退行進化説」(SchusterRM.,1966)が唱えられてきた。両説とも,緑藻類のなかのシャジクモ類から陸上植物が出現した点では一致している。最古の維管束植物とされるRhyniaリニア(ライニア)類がシルル紀後期(4.1億年前)から発見されているにもかかわらず,維管束をもたない現生のコケ類に似た体制をもつコケの化石ゼニゴケモドキがリニア植物群の化石よりずっと後,デボン期後期(3.5億年前)になって発見されていることから「退行進化説」が提唱されたわけである。しかし,最近になってデボン期前期(4.0億年前)の地層から発見されたスポロゴニテスSporogonitesがコケに類似した体制をもつ植物化石であると考えられ,また,これまで原始的なシダと考えられていたリニアについて,2種のうち1種は水分の通道組織がコケ植物の通道組織であるハイドロイドに似ていて,この植物は「維管束のないコケ様の植物」であるとされ,Rhynia属とは別のAglaophytonアグラオフィトン属に分類されている(エドワーズ,1986EdwardsD.S.)。リニアの1種が維管束をもたないことや最古の維管束植物と考えられていたクックソニアCooksoniaも胞子のうをつけた軸には維管束が存在しないことがわかり,現生では,陸生植物の初期進化の段階では現生のシダとは様相を異にする維管束をもった植物やコケとも違った維管束をもたない植物が混在していたと考えられている(北川,1989)。そのような混在状態から真の維管束が分化したとされている。さらに,オルドビス紀(4.5億年前)からは最初期の陸上植物のものとみられる破片や胞子がみつかるようになり,その特徴はコケ植物に近いことがわかっている。このことから,現在では前進説がうけいれられるようになった。現生陸上植物の分子系統解析でも,コケ植物が最も原始的で,シャジクモ類に近いことも,前進説を支持している。

 

◆維管束植物の系統

植物の進化による胞子体と配偶体の関係

 

コケ植物は,胞子体(2n)の発達が少なく,配偶体(n)が生活史の主要なものとなっている(植物の生活環の項参照)シダ植物では,逆に胞子体が発達し,配偶体は小さい。このような関係は,植物の進化にもみられ,植物が水中生活から陸上へと進出したときに,胞子体(2 n世代)が大きくなり,それに応じて配偶体(n世代)が小さくなっている。

このような事実から,最も原始的なシダ植物といわれるリニア類を祖先として,陸上の多様な維管束植物(シダ,種子植物)が進化してきたと考えられる。

種子植物は,絶滅したシダ植物である前裸子植物から分岐したもので,前裸子植物は胞子植物と種子植物を結びつける化石植物として知られている。前裸子植物は,シダ植物に似た羽状複葉に胞子をつけ,二次的にできた木部(木本植物の材部はほとんど二次木部)をもつことが特徴である。

岩城・加藤() 多様性の植物学2「植物の系統」 東大出版会 p.88  4.1を改変

 

裸子植物は胚珠が裸出している植物群の総称であり,現生の種はイチョウ,針葉樹類,ソテツ類,グネツム類の4つのグループに分けられる。イチョウの仲間は最古の化石が約30億年前から知られ,現生種はイチョウ1種だけであるが,化石との形の類似から「生きている化石」ともよばれる。現生のグネツム類はグネツム,マオウ,ウエルウィッチア(和名「奇想天外」)3属が知られ,ウエルウィッチアはアフリカのナミブ砂漠のみに生育している。これらのグループは,形態的に多様化していて,それぞれの間で形質を比較するためには,変化の少ない安定した保存性の高い形質を用いなければならない。例えば,花の形態,胚珠のつく位置などがこのような形質に相当する。

 

裸子植物の基本的形質(長谷部1992)

ソテツ類

針葉樹類 イチョウ

枝分かれしない

枝分かれする

軟らかい材をつくる

硬い材をつくる

葉が切れ込む(複葉)

切れ込まない(単葉)

種子は放射相称

種子は左右相称

種子は葉の上につく

種子は茎の先につく

 

針葉樹類とイチョウは,共有する形質が多いことから近縁であろうと考えられている。ソテツ類と針葉樹類・イチョウは花のつく位置のちがいがある。ソテツ類の花を観察すると胚珠が葉についていることがわかる。イチョウではギンナン(イチョウの実)が茎の先についていることから,胚珠が茎の先についていることがわかる。針葉樹の花はつき方がわかりにくいが,茎の先に花のつくグループである。グネツム類は他の裸子植物が仮道管しかもたないのに対し,被子植物と同じように道管をもち,重複受精に似た受精様式をもっていることなどから,従来,被子植物は,グネツム類から進化したと考えられていたが,その後の研究から,被子植物の中で原始的と考えられている植物の一部が道管をもたないことやグネツム類の道管は解剖学的特徴が被子植物のものとは異なっていることから,今日では,道管は被子植物とグネツム類で平行的に進化したものであろうと考えられている。

被子植物の起源は,不明な点が多く,植物系統学上未解決の問題の一つである。被子植物の子房は,裸子植物に見られるような裸の胚珠が,葉状の器官に被われて形成されたものと考えられている。また,裸子植物の胚珠は,胚のうが1枚の珠皮で被われているのに対し,被子植物のそれは,2枚の珠皮で被われている。このような形質から,古生代に多様化したシダ種子類や,それらをもとに中生代に分化した群などの絶滅裸子植物の中に被子植物の祖先が存在すると考えられている。現生種子植物の分子系統解析の結果,現生裸子植物は単系統で,被子植物はこれらと別の祖先裸子植物から分化したことがはっきりしたからである。現生裸子植物では,イチョウとソテツ類が近縁でグネツム類は針葉樹類と近縁であることがわかった。

 

 








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