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第3節 原生生物の分類と系統

 

 

A 原生動物

B 変形菌類

◆変形菌類

・真正粘菌と細胞性粘菌

変形菌類は粘菌ともいわれ,真正粘菌と細胞性粘菌とに区別されている。今日,粘菌のもつ形質が発展したと思われる生物は,植物界,動物界,菌界のいずれの中にも見当たらない。粘菌は地球上に誕生して以来,たぶん進化することなく,ただの粘菌として今日まで生き延びてきた生物群のようである。粘菌の生育は従属栄養で,子実体の胞子あるいは柄細胞には細胞壁をもつので菌類のように見える。しかし,栄養体は細胞壁のないアメーバ状の細胞で食作用を行うので,今日では原生生物の仲間とされている。真正粘菌はアメーバ細胞(n)が接合し,さらに融合して多核の巨大アメーバ(変形体,2n)を形成する。一方の細胞性粘菌は,単核のアメーバ細胞が集合して社会性アメーバとなり,細胞が2種類に分化した多細胞体(n)を形成する。

・細胞性粘菌

細胞性粘菌のタマホコリカビ目(Dictyosteliales)は,子実体が,輪生枝を形成するかどうかで,タマホコリカビ属(Dictyostelium)とムラサキカビモドキ属(Polysphondylium)の2つに分けられる。ふつう,移動体は,カビの菌糸のような柄を残して移動する(図1B)。また,移動体の時期をもたないコタマホコリカビもいる。さらに,柄を残さず移動するキイロタマホコリカビ(D.discoideum)もいる。しかし,キイロタマホコリカビは野外からの採取は困難である。他の種であれば比較的簡単に採取できるので,野外からの分離培養と観察ができる。アメーバ細胞が行う食作用(ファゴサイトーシス)は,免疫細胞の一つであるマクロファージも体内で異物を除去するために行っている。そのため,この粘菌アメーバの行動の観察はヒトの体のしくみと関連して教材利用することもできる。

20055月のNature誌に細胞性粘菌のゲノム解析が報告され,そのゲノムは340万ヌクレオチドで,これは出芽酵母の3倍,ヒトの1/100に相当するという。細胞性粘菌に含まれる遺伝子数は約12,500個と推定され,真核生物系統において,植物の後,菌類の前に分岐したことが示唆されている。

 

 

1. ムラサキタマホコリカビ(D. purpureum

A.集合体のサイズが大きく,肉眼でも良く見える, B. 移動体の尾端には柄が残る, C. 楕円体の胞子とモザイク状の柄の細胞,胞子には極顆粒がある.

 

・野外サンプルからの細胞性粘菌の分離:

http://cosmos.bot.kyoto-u.ac.jp/csm/methods/isolation.html

・身近な細胞性粘菌を利用した教材の開発:www.toray.co.jp/tsf/rika/pdf/rik_a105.pdf

萩原博光 2000. 菌類の採集・検出と分離:細胞性粘菌. 日菌報 4141-45.

高橋和成 2005. 身近な細胞性粘菌の分離培養と野生種を利用した観察・実験.遺伝 5910-14.

 

C 卵菌類

D 藻類

◆磯の藻類

太平洋岸では,干満の差が2mほどに達するので潮のよく引く春先の干潮時には,満潮のときに深さ約2mになる海底を歩くことができる。そのようなときにはさまざまな海藻類を身近に観察することができる。

潮間帯上部には,緑藻植物門に属するアナアオサ(アオサ)やボウアオノリなどの浅所型緑藻類がみられる。潮間帯にみられる緑藻のほとんどが鮮緑色なのは,シホナキサンチン(光合成色素の1つ)を含んでいないためである。緑藻類でも,深い所に生育する深所型緑藻類には,褐藻にみられるフコキサンチン(後述)とまったく同じ役割を果たすシホナキサンチンを含み,タンパク質と結合して赤い状態で存在している。緑藻は多量のクロロフィルを含むため,深所型緑藻は褐色にはならず,褐色がかった暗緑色にみえる。

緑藻類の大多数は淡水産である。菌類と共生するもの(地衣類)や動物細胞内に生活するものもある。シャジクモ,コケ,シダ,種子植物と同様にクロロフィルabとカロテン,ルテイン,キサントフィルを含む。淡水産緑藻類には,クロレラ,アオミドロ,ホシミドロなどがある。

潮間帯中間部には,褐色植物門に属するワカメ,ホンダワラ,マコンブ,アミジグサ,モズク,ヒジキなど重要な食用種がみられる。このなかまはクロロフィルacとカロテンを含む黄褐色,褐色,緑褐色の藻草で大多数が海底に着生し,非常に大型のものが多い。コンブ科のカジメやアラメの群落は海中林とよばれる。長さ1m前後,直径2cmほどの柄の先に多数の帯状の葉をつけたカジメなどの群落の景観が,陸上の林に似ているからである。海中では,光合成に必要な太陽光が弱くなり,質的にも変化する。海中の森の樹冠が褐色なのは,このことと関係がある。かなり澄んだ水域でも,太陽光は水深10mあたりで10分の1ほどになり,太陽光の成分のうち赤色光が最も弱くなるので,赤色光を最も効率よく利用する緑色の植物にとって海中はすみにくい場所である。しかし,褐藻類は光合成色素としてクロロフィル以外にフコキサンチンを含み,褐藻の色を決めているだけでなく,青色光から緑色光をとらえる役割を果たしているため,褐藻は海中で効率よく光を利用することができる。海中林の下や,より深い場所には,小型の褐藻の他に赤に近い色の紅藻や,褐色がかった暗緑色の深所型緑藻がみられる。紅藻植物門はクロロフィルaのほか光合成色素のフィコエリトリンなど,緑,黄,青,赤の4色の色素を含む。浅所に生える種は赤以外の色素を多く含むのに対し,深所に生える種は赤い色素を多く含むので,紅藻のなかまは多様の色の変化がみられる。アサクサノリ,テングサ(マクサ),フノリ,マクリ(カイニンソウ),ツノマタなど食用や薬用になる海藻が知られている。

 

◆光合成色素(同化色素)と分類

高等植物の葉緑体には,クロロフィルやカロテノイドが含まれている。

クロロフィル クロロフィルは,タンパク質と結合してフィロクロリンという色素タンパク質として存在する。クロロフィルにはabのほかに,cdeが知られているが,このうち最も普遍的なものはクロロフィルaで,細菌と菌類を除くすべての植物に含まれている。クロロフィルbは,ミドリムシ・緑藻とそれ以上に進化した高等植物群以外には含まれていない。クロロフィルabとの緑葉中の含有率は,植物の種類にもよるが,ほぼ,(23)1で,aのほうを多量に含んでいる。なお,紅藻類がもつとされていたクロロフィルdは,植物体表面に着生したラン藻類のものであることがわかった。

クロロフィルの分子構造には,中心にMgがある。これは,ヘモグロビンのヘムと類似した構造をもっている。このことは,動物と植物の進化的なつながりを暗示している。

クロロフィルa (C55H72O5N4Mg 青緑色)

クロロフィルb (C55H70O6N4Mg 黄緑色)

カロテノイド カロテノイドは動植物界に広く存在する色素で,これらの構造から大きく分けると,炭化水素カロテノイドすなわちカロテン類と,酸素を含むカロテノイドすなわちキサントフィル類とで,次のようなものがある。

カロテン類;α-カロテン,β-カロテン,γ-カロテン,リコピンなど

キサントフィル類;ルテイン,ゼアキサンチン,ビオラキサンチン,クリプトキサンチンなど

このうち葉緑体の中に見いだされるのは,カロテン類では主としてβ-カロテンで,それにわずかのα-カロテンを伴い,キサントフィル類ではルテイン(狭義のキサントフィル)が主で,ほかに植物の種類によってビオラキサンチンやゼアキサンチンなどを含んでいる。このように,カロテノイドは単独で存在することは少なく,多くの場合は2種以上が混在している。

その他の色素 紅藻や褐藻の葉緑体は,前記のクロロフィルの他に,紅色のフィコエリトリンや褐色のフコキサンチンなどの色素をもっている。光合成の光エネルギー受容には,必須ではないが,利用できる光の波長域を拡げ,利用効率を上げるこのような色素を補助色素(accesary pigment)とよぶ。カロテノイド色素やクロロフィルbもこれにあたる。

カロテノイドに吸収された光エネルギーのうち,約50%はクロロフィルbに伝えられ,さらにほぼ100%の効率でクロロフィルaに伝えられる。このように,クロロフィルa以外に伝えられるエネルギーも,

補助色素→クロロフィルb→クロロフィルa

というように,光合成色素分子間を伝達され,利用される。これらの補助色素は葉緑体チラコイド膜のPS II(色素系II)とよばれる粒子に存在する。

植物の各門の系統関係を核の性質と葉緑素の種類,体制のちがいによって配列したものを次に示す。

 

 

 








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