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第5節 窒素の同化

 

A 植物の窒素同化

◆植物が利用できる窒素源

植物が窒素同化作用の材料として利用できる窒素源は,無機窒素化合物と分子状窒素(N2)2群になる。自然界にもっとも多い窒素源は,空気の4/5を占めているN2であるが,これを利用できる植物はきわめて少ない。大部分の植物は,土壌中のアンモニウム(NH4)塩,硝酸(NO3)塩などの無機窒素化合物を利用する。

高等植物では,一般にNO3がよく利用されるが,土壌のpHが変化すると,NH4がよく利用される。土壌中のNH4は,動植物の遺体や排出物の分解によってもたらされ,NH4はさらに硝化菌の働きによって,NO2からNO3に変えられる。

すべての生物の有機窒素化合物の母体はアミノ酸である。アミノ酸のアミノ基(-NH2)NH4からつくられる。したがって,N2またはNO3からNH4を生じてはじめて,これらの無機窒素化合物は利用されるわけである。

 

◆窒素同化作用

根から吸収された窒素源がNH4の場合は,直ちにアミノ酸合成に利用されるが,NO3の場合は,硝化作用とは逆の反応が起こって,NH4に変えられてから利用される。一方,アミノ酸の素材になる有機酸は,呼吸の解糖系やクエン酸回路で生じる

ピルビン酸,α-ケトグルタル酸,オキサロ酢酸などである。

 

NH4は,グルタミン合成酵素の働きで,アミノ酸の1つであるグルタミン酸と結合してグルタミンに同化される。次に,グルタミン酸,アスパラギン酸などのアミノ酸ができる。

 

B 窒素固定

◆窒素固定

空中窒素の固定は,人工的には,N2H2を化合させてNH3にするハーバー法と,カルシウムカーバイドとN2を化合させて,カルシウムシアナミドCaCN2とし,その後NH3にするカルシウムシアナミド法がある。一方,天然においても雷の放電や紫外線の光化学作用によって,N2O2と化合して,各種の窒素化合物(NONO2など)となり,これが雨水によって硝酸(HNO3)となる。以上のほかに,生物的窒素固定があり,この結果生成する窒素化合物は,地球上の土地を肥沃にする。この窒素固定の働きをもつ生物は,次にあげる微生物に限られている。

(1) 根粒菌 高等植物と共生する窒素固定菌としてもっとも代表的なものは,マメ科植物の根に共生する根粒菌で,そのほか,グミやハンノキなどの根に共生する放線菌も知られている。マメ科植物は野外や校庭に多いので,授業前に掘り取って水洗し,根粒を生徒に見せるとよい。根粒の形は,種類によって形態を異にしている。さらに,根粒の薄片をつくり,組織内の細胞を高倍率で観察させてもよい。根粒菌は,試験管培地上に分離培養できるが,その状態では,空中窒素の固定を行わない。根粒内においてのみ,窒素固定が可能である。

(2) クロストリジウムとアゾトバクター 根粒菌と同じく土壌中の細菌であるが,共生はしない。有機化合物を分解して得られるエネルギーを利用して,空中窒素を還元し,窒素化合物を合成している。クロストリジウムは嫌気性であるが,ア

ゾトバクターは好気性のため酸素を多量に吸収し,窒素固定力が大きい。

(3) ラン藻 インド地方で無肥料でイネの水田栽培をするとき,ラン藻が生育すると米の収穫が多くなることが知られる。これにヒントを得てラン藻を純粋培養して調べた結果,空中窒素固定の働きがあることがわかった。ラン藻の中でよく知られているものに,ネンジュモがある。

 

 








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