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第3節 光合成のしくみ

 

A 水の分解とATP合成

◆光化学反応

光合成の初発反応は,光合成色素クロロフィルaに吸収された光のエネルギーにより引きおこされる光化学反応である。このクロロフィルaは光化学系Iと光化学系IIとよばれる2つの光化学系の中心(光化学反応中心)となっている。

光化学反応中心(Chl)に電子(e)を与える成分の電子供与体(D),光化学反応中心から電子を受け取る成分である電子受容体(A)から光化学系はできている。いま光が光化学反応中心の分子(Chl)に吸収されると,分子は励起(Chl)されて,次のような電子の動き(電荷の分離)を生じる。

 

光化学系IIでは,Dは水分子,Aはフェオフィチン(クロロフィルからMg原子が失われたもの)である。Aで生じたChlは非常に強い酸化力をもつために,まわりの水分子(D)から電子(e)を奪う。そのために水分子は酸化分解されて,酸素を発生する。

 

またBで生じたAはプラストキノン(PQ)に電子を渡す。光化学系II粒子では,H2Oの酸化からPQeを渡すまでが1つの複合体を形成している(下図参照)

光化学系IDに相当するのは,銅タンパク質のプラストシアニン(Pcy)である。そしてAChlとは別のクロロフィルa(Aoとよばれる)で,Aから電子を受け取るのはキノン化合物(Al)である。そして電子は最終的に補酵素X(NADP)に渡される。光化学系IIと光化学系Iとをつなぐのはシトクロム複合体である。こうしてH2OからNADPまでを結ぶ電子伝達系が光によって駆動される。

ATPの生成は,教科書では電子伝達の際に行われるように記してあるが,実際には,チラコイド内から外へのHATP合成系を通って流れるときに行われる(化学浸透圧説を参照)

 

 

 

 

B 二酸化炭素の固定

◆カルビン・ベンソン回路

二酸化炭素が固定され,有機化合物が合成される反応は葉緑体のストロマで行われる。光化学反応の過程で生成されたNADPHATPを用いて,CO2を還元してデンプンなどの有機化合物を合成する反応である。この反応は温度とCO2濃度に影響されるが,光の強さには無関係であるところから,以前は暗反応と呼ばれていた。この反応はCO2から直接デンプンなどの有機化合物(C6H12O6)が生成されるのではなく,いくつかの酵素反応で構成される複雑な回路反応過程で生成されることが,カルビン(Calvin)とベンソン(Benson)によって明らかにされ,この過程をカルビン・ベンソン回路とよんでいる。

この回路は次の3段階にまとめられる。

(A) CO2が固定される段階。

細胞中に取り入れられたCO2は,葉緑体内に存在するリブロースビスリン酸(RuBPC5化合物)と結合してC6化合物となるが,これはすぐに2分して,グリセリン酸リン酸(PGAC3化合物)となる。今,この反応が3回起こると,6分子のPGAが生じる。

3CO23RuBP6PGA

(B) 光化学反応で生成したATPNADPHH +が用いられ,PGAが還元されると,トリオースリン酸(TPC3化合物)となる。

6PGA6ATP6(NADPHH +)6TP6ADP6Pi6NADP

TP1分子は回路からはずれて,いわゆる光合成産物を生成する。

(C) 残る5分子のTPから,CO2の受容体であるRuBPが再生する段階で,いくつかの反応が含まれるが,要点として次のように表される。

5TP+3ATP3RuBP2ADPPi

 

◆効率のよい光合成経路(C4 -ジカルボン酸回路)

長い間,緑色植物の光合成はカルビン・ベンソン回路によるものと考えられていた。しかし,1960年代に入って,アメリカのコーチャックなどがサトウキビなどの熱帯植物には別の炭酸固定回路のあることを発見した。これが「C4 -ジカルボン酸回路」または「C4 -サイクル」とよばれているものである。

炭酸固定をカルビン・ベンソン回路だけで行う植物では,CO2は五炭糖リン酸(RuBP)と結びつき,すぐ分解されて2分子のグリセリン酸リン酸(PGA)というC3化合物になる。PGAC6化合物になり,その一部がショ糖やデンプンなどの同化産物になる。残りは何段階かの反応を経てRuBPに戻る。CO2を取り込み,最初に合成される物質がC3化合物(PGA)であるから,この経路で炭酸固定をする植物はC3植物とよばれる。

これに対して,C4とよばれる植物では,炭酸固定によって最初にC4化合物のオキサロ酢酸(OAA),ついでリンゴ酸やアスパラギン酸を合成する。次図のように,この反応は回路反応で葉肉細胞の中で行われる(C4 -ジカルボン酸回路)。リンゴ酸やアスパラギン酸は維管束鞘細胞に入り,ここで脱炭酸されてCO2を放出し,残りは葉肉細胞に戻りホスホエノールピルビン酸(PEP)となる。PEPは再びCO2と結合する。リンゴ酸やアスパラギン酸から脱炭酸されたCO2は維管束鞘細胞の中でカルビン・ベンソン回路へ入っていく。C4 植物でのCO2受容体であるPEPは,C3植物の受容体であるRuBPと比べ,CO2と反応しやすく,低濃度のCO2でも効率よくとらえることができる。したがって,乾燥地で植物が気孔を閉じ,CO2濃度が低くなった場合でも,C4 植物はC3植物と比べて効率よく光合成を営むことができる。

C 光合成の産物

 

 

 








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