トップ生物II>第1部 生物体の構造と機能>〔実験18〕 水生生物を指標とする河川の環境調査

〔実験18〕 水生生物を指標とする河川の環境調査

              教科書p.239240  配当時間 3時間

 

 

【指導目標】 ある特定の環境条件の場所によく出現するが,他の環境ではほとんど見られない生物は,環境の指標となる。河川の水生生物は,河川の水質環境の指標生物として適している。実際に,河川の水生生物を調査することによって,河川の環境と生物について考えてみよう。

【準備】 台所用ザル,バット,ピンセット,ポリびん,水生生物図鑑

【準備上の留意点】

(1) 実際に河川に出かけて調査をするのには,さまざまな困難な点があるので,教員や生物部員などが河川の上流から下流の数地点で採集した標本を70%エタノールで固定して保存しておき,それを用いて観察・同定を行うことも考えられる。しかし,実際に河川に出かけて調査することが重要で,遠足などの機会を利用したり,長期休暇中に課題研究として実施することなども考えたい。以下にそのような場合の留意点について述べておく。

(2) まず,調査に出かけるときの安全面の注意として,次のような点を生徒に伝えておく必要がある。

@ 雨天時や上流にダムがあって放水などが行われる場合は,増水で水位が急に上がって流されたりすることにないよう情報を集めて十分に注意する必要がある。

A 河川に入る場合はケガをする恐れがあるので,裸足で入らないように注意する。古い運動靴などをはくとよい。また,できるだけ「くるぶし」までの深さのところで調査し,「ひざ」より深いところには絶対入らないようにする。水位が低い地点でも見た目以上に流速が速いことがあるので,注意が必要。

B 出かけるときは,教員や家族に連絡して指導を受けてから出かける。また,1人で行動しないで,必ず数人のグループで活動するようにしたい。

C 河川によっては,漁業権が設定されているところもあるので,事前に確認して了承を得ておく。

(3) 調査する河川が決まると,地図などをもとにして,調査地点を決めて調査計画を立案する。1つの河川について上流から下流にかけて,橋の位置などを目安にして510の調査地点を想定して出かけて行くとよいが,実際に河川に行くと河原に下りることができない場所も多く,その場合は少しずらして地点を変更することになる。

(4) 調査の時期については,1年中いつでも可能であるが,多くの水生生物は昆虫の幼虫期のみ河川で生活しているものであり,その大半は晩春〜初夏にかけて羽化する。その後,交尾・産卵して幼虫となるので,夏の間は小さい個体が多い。冬は活動が鈍るので,秋か春が調査には適していることになる。

【方法上の留意点】

(1) 調査をする地点の河原に下りると,まず,調査地点を探す。この際,原則としてその地点でもっとも流速の速い場所で,こぶし大より大きな石があるところがよい。下流の砂地で流速の遅いところは種類が少なくなる。

(2) 水生昆虫の多くは石の下に付着しているが,それほど強く石に付着していないものもあり,石を動かす前に,その下流側の川底にザルの一端を差し込むようにして,石の下の生物が流れてしまわないように注意すること。

(3) ザルに石を移して,河原に移動してからそれらを全部白いバットなどに開けてから,観察を始める。観察の際は,石を少しずつ動かしたり裏返したりしながら生物を探し,動いているものがみつかれば種類を確認する。わからないものがみつかれば,ピンセットで採取して,できるだけその場で確認する。それでもわからなければ,ポリビンなどに入れて持ち帰って確認する。このとき,長期に渡って保存する場合は,70%エタノールに入れるとよい。

(4) 観察の際に,巣をつくってあまり動かないトビケラ類などは,間違いやすいので注意して探すこと。また,石がなくて砂地の地点では,川底の砂を網ですくってこしとって,生物を探すとよい。

(5) 教科書では主要な10種類の生物群に限ってあげてあるが,可能であれば,参考文献にあげた「水生生物図鑑」などで,もっと細かく分類して調査を深める方がよい。

(6) また,10種類の生物群の中でも,カワゲラ・カゲロウ類には何百種もあり,水質のきれいなところにしかいない種類やけっこう汚れたところでも見つかる種類がある。また,ユスリカ類の幼虫で水のきれいなところに多い種類もあるが,体色が赤い種類の多くは汚染された地点に見られるので,ここでは汚染水域の指標とした。

(7) 教科書には書かなかったが,生物だけではなく,調査地点の環境についても記録をしておくと,調査結果を考察する際に役に立つ。その場合は,次のような項目が考えられる。

@ 調査地点名(地名や近くの橋の名称)・調査年月日・時刻・天候・気温・水温

A 河川敷全体の幅と,流れている部分の川幅,流速,川底の状態や深さ

B 可能であれば「水質調査パックテスト」などを用いて,水質を測定するとよい。

 例えば,pH(水素イオン濃度)COD(化学的酸素要求量)・アンモニア態窒素濃度(または,亜硝酸態窒素)・リン酸濃度などが考えられる。

【結果と考察】

(1) 調査結果をもとに各地点の環境や水質を,見つかった水生生物の種類から判断する場合は,次のような4段階に分けるとよい。

@ きれいな水域に生息するI群の生物(サワガニなど)しか出現しない地点。

A I群の生物と,中間的なII(ミズムシなど)の生物が両方出現する地点。

B II群の生物と,III(イトミミズなど)の生物が両方出現する地点。

C 汚染が進行した水域に生息するIII群の生物だけが出現する地点。

(2) これらによって,2002年の調査結果について考察を加えると次のようになる。

@ 上流部のAC地点は水質は良好で,I群の生物のみが出現している。

A D地点はI群の生物が多いが,F地点にはIII群の赤いユスリカ類も見つかっているなど,DFの区間で水質が大きく変化していることがわかる。

B IJより下流は大量の家庭下水が流入し,ユスリカとイトミミズのみ生息。

【参考文献】 水生生物の種類を調べるのに役立つもの

『日本産水生昆虫検索図説』 川合禎次編 東海大学出版会 1985

『原色川虫図鑑』 丸山博紀・高井幹夫 全国農村教育協会 2000

『水生昆虫の観察』 谷幸三 トンボ出版 1995

 

 










本サイトに掲載された記事や画像の無断転載を禁じます。
Copyright(C) 2009-2012 SHINKOSHUPPANSHA KEIRINKAN CO.,LTD. All rights reserved.