トップ生物II>第1部 生物体の構造と機能>〔実験17〕 土壌動物と環境

〔実験17〕 土壌動物と環境

              教科書p.216  配当時間 2時間

 

 

【指導目標】 (1) 生態系の物質循環において,植物の落葉や枯枝・動物の遺体を食べて分解するという重要な役割を果たしている土壌動物は,ふだんあまり見慣れない生物であるが,これらを実際に土壌から分離して観察する。

(2) 土壌動物の観察・調査を通して,環境によって種類や量が異なることを知るとともに,その特性を理解して,できるだけ多くの土壌動物を集めるためにどうすればよいかについても工夫することができるようにする。

【準備】 材料 いろいろな環境から採取した土壌

 薬品 70%エタノール(消毒用エタノールでよい)

 器具 物差し,移植ごて,ナイロン袋,2つに切った2l入りペットボトル,電球,サランネット(網戸用),管びん,ピンセット,双眼実体顕微鏡,ペトリ皿

【準備上の留意点】

(1) 調査に先立って調査地点を決める。その際,なるべく環境条件に差があるような地点を選ぶとよい。例えば,自然林−雑木林−松林−竹林,林内−林縁−周辺の草地,自然の草地−芝生地−裸地,などが考えられる。

(2) 土壌を採取する場所は,平らで木のすぐ下や倒木のそば・コケの盛り上がったところなどは避ける。

(3) 土壌を採取するための移植ごての先端に,マジックインキで10cmのところに,印をつけておくと便利である。

【方法上の留意点】

(1) 調査区を決めると,まず,周辺の植生や落葉量・土壌の乾燥状態や硬さなどを観察して記録しておく。

(2) 土壌を採取する場合には,20cm×20cmの方形枠を置き,最初に枠内の土壌の上にのっている落葉や分解中の腐植をすべて採取してすばやくナイロン袋に入れる。逃げ足の速い動物を発見すれば,その時点ですぐつかまえて,エタノールの入った管びんに入れておく。その後,落葉の下の土壌を移植ごてで深さ10cmまで掘り,すべてナイロン袋に入れ,口をしっかり締め,採取地点と採取日をマジックで記入しておく。

(3) 採取した土壌を実験室に持ち帰ると,まず,白いバットに広げて,肉眼で発見できる比較的大形の動物だけをピンセットなどを用いて採取し,エタノール入りの管びんに入れておく。この方法をハンドソーティング法という。このとき,ミミズ類は白い粘液を分泌して液を汚すので,同じ管びんに入れないほうがよい。

(4) その残りの土壌を教科書に示したような自作のツルグレン装置に入れて,土壌の中に残った小さな動物を集める。この装置は真ん中辺りがくぼんでいる1.52lのペットボトルを,カッターナイフでくぼんでいる部分のすぐ下で2つに切断し,上の部分を上下逆にして,口のところにサランネットを当てて,そこへ採取した土壌を入れる形式のものであるが,これ以外にもさまざまなものを工夫してみよう。

(5) この装置の上から電球(蛍光灯ではなく,熱をもつ白熱電球の方がよい)をつけると,土壌動物がその光と熱による土壌の乾燥を嫌って下へ移動し,最終的には管びんの中に落下する。このとき,電球を落葉に近づけすぎると,熱によって燃え出すことがあるので注意が必要である。なお,ツルグレン装置には,土壌を一度にたくさん入れると,乾燥するのに時間がかかるので,少しずつ何回かに分けて入れるとよい。また,動物の大きさに応じて下に引くサランネットの網目の大きさを変える必要がある。

(6) 採集した土壌動物はすべてエタノールを入れた管びんで保存し,後でまとめて種類と個体数を調べるようにする。なお分類については,一応,目の段階までとし,教科書にある検索表や詳しい土壌動物図鑑で同定を行う。観察する時は,管びんの内容物をペトリ皿にすべて出して,双眼実体顕微鏡かルーペを用いて観察して同定をする。

(7) 同定ができれば,同じ種類のものを集めて個体数を数えるとともに,種類別の生重量を測定するとよい。このときは,動物をろ紙の上にとって,エタノールを蒸発させてから重量を測る。

【結果例と考察】

(1) 環境の違いによる土壌動物の違いの例を左の表に示した。表は関東北部のクロマツ人工林の林内とそれに続くチガヤが優占する草原について,土壌動物の個体数を調べたものである。これを見ると,個体数の合計では,草地・林縁・林内の順に,多くなっている。林内ほど多い種類としては,ハエ幼虫・トビムシ類・アザミウマ類・クモ類・ダンゴムシ類・ヤスデ類・ムカデ類・コムカデ類などがあげられる。

(2) 土壌の深さと土壌動物の個体数の関係を下表に表した。この結果は,コナラ林内で10cm×10cmの方形枠を置いて,地表から深さ2.5cmずつ15cmまでの土壌を採取して,それぞれの層に含まれる土壌動物の個体数を数えたものである。

 

 

(3) これを見ると,この調査で得られた土壌動物の約70%は地表から2.5cmまでの表層の土壌に見られ,深くなるほど急激に個体数が減少していることがわかる。また,教科書の方法で深さ10cmまでの土壌を採取すれば約98%の動物が採取できることになる。

【発展】 さまざまな環境で比較したり,季節によって種類と個体数がどう変化するかを調べる。

 

 










本サイトに掲載された記事や画像の無断転載を禁じます。
Copyright(C) 2009-2012 SHINKOSHUPPANSHA KEIRINKAN CO.,LTD. All rights reserved.