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〔実験14〕 個体群の成長曲線─ウキクサを用いて─

              教科書p.193194  配当時間 2時間

 

 

【指導目標】 (1) ウキクサを栄養塩類の水溶液を入れたビーカー内で増殖させる実験を行い,この過程で個体数が増加するとともに環境抵抗が増大して増殖が抑制されていくことを確認する。

(2) 個体群の成長曲線はS字状となり,最初の個体数が異なる場合は初期の増殖率に差が生じるが,環境収容力が同じ場合は最終的な個体数は一定になることを確認する。

(3) 得られた多数の定量的なデータをもとに,適切な数的処理を行うとともに,グラフを作成してデータを的確に解釈する能力を身につけさせる。

【準備】 材料 ウキクサ類の葉状体(種類は下表参照,葉状体の大きいウキクサよりもアオウキクサやコウキクサの方が扱いやすい) ,液体肥料(標準使用濃度の半分くらいに薄める。ハイポネックスなら0.5g/l)

 器具 小ビーカー(100200ml)かプリンカップ多数,バット,グラフ用紙

 

【準備上の留意点】

(1) バットはビーカーよりやや背の低い大形のものを準備し,ビーカー内の水温をほぼ一定に保つために,ここに水を入れてからビーカーを並べておく。

(2) 実験材料のウキクサ類は野外の水田や池などで採集したものをすぐ用いるのではなく,水で洗ってから室内の明るい窓際に置いた水槽などに液体肥料を入れて,その中で前もって12週間培養して増殖させる。この過程でウキクサの大きさや性質が均一に近くなる。よく見られる種類を上表にあげたが,室内なら冬季でも培養できる常緑性のヒメウキクサなどがよい。

【方法上の留意点】

(1) ビーカーを並べたバットを明るい窓際に置く。室内で明るい場所がない場合は,蛍光灯などで連続照明を行う必要がある。また,光の条件に差ができないように,時々,ビーカーの位置やバットの向きを変える。

(2) 葉状体の数え方については,完全に分かれたものを2個体とするのか,少しでも新しい葉が見えたら別の個体とするか等,あらかじめ一定のルールをつくっておくとよい。教科書にも書いたが,ウキクサ類の葉状体はつながっているので厳密には個体ではないが,この実験では葉状体1枚を1個体として考察する。

(3) 最初に入れる葉状体の枚数を1648192枚としたが,実験容器の大きさによって適宜変更してもよい。容器の水面の面積の約1/10を葉がおおうくらいを目安とする。

(4) 培養中,水分が蒸発して減っていくので,実験前に水位のところに印をつけておき,その線まで水を補給して水位を一定に保つように注意する。

(5) 葉状体の枚数を数えるのは,結果例では2日おきにしたが,授業の都合で週23回でもよい。また,枚数を数えるのは最初のうちは少ないのでよいが,増殖すると葉が重なって上から見るだけでは枚数がわからなくなる。この場合は,いったん別の容器に移しておき,少しずつ取って枚数を数えながらもとの容器に戻しておくとよい。

(6) 実験はすべての容器での水面が葉でおおわれるまで続けるとよいが,途中で藻類が発生して培養液が緑色になってくると,新しい液に取りかえたほうがよい。

【結果の整理】

(1) 結果は教科書の例のように表にまとめて,経過日数と葉状体数との関係や,最初の個体数と葉状体数との関係をグラフに表して考察を加える。

(2) それぞれの場合について,2回の測定日の間に1日あたり何倍に増殖したかを示す増殖率を計算して経過日数との関係をグラフに表す。

【考察例】

(1) 約650枚。この値が,この実験条件下での環境収容力になる。

(2) 最初の23日間はあまり増加しないが,その後急激に増加する。しかし,8日目くらいになると増殖率は低下して,ほぼ一定の個体数で安定となる。この原因としては次のようなことが考えられる。

 @ 葉がしだいに重なってきて,生活空間や1枚の葉にあたる照度は低下する。

 A 葉状体の成長に伴って培養液中の栄養塩類が吸収されて,不足してくる。

 B 培養液中に藻類が発生したり,植物体から出る老廃物質の濃度が増加する。

(3) 経過日数が短い間は,葉状体数は最初の個体数とほぼ比例して増えているが,日数が経つにつれて,最初の個体数にかかわらず一定の個体数に近づいていくことがわかる。

【レポート例】

(1) 経過日数と増殖率 経過日数と増殖率を計算してグラフに表すと下図1のようになり,最初の個体数が多いほど増殖率は急激に低下してゼロに近づいていくことがわかる。

(2) 葉状体数と増殖率の関係 ある日の葉状体数と増殖率の関係をグラフに表すと,下図2のようになり,最初の個体数にかかわらず,ある日の葉状体数とその日から2日後までの増殖率とは,ほぼ同じ関係になることがわかる。

図1

図2

 

 










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