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〔実験13〕 訪花昆虫の適応

              教科書p.168  配当時間 1時間

 

 

【指導目標】 節足動物の口器は付属肢が集まってつくられている。つまり口は足であるという観点が必要である。昆虫の口器をつくる付属肢の形態は昆虫の種類によってかなり特殊化しているが,これは食性との関連による。分類学上は同じ科であっても口器は種ごとに多様であり,それがどのような食性に対する適応なのかが完全に理解されているわけではない。

【準備】 道具 捕虫網,ルーペ,殺虫管,昆虫図鑑,植物図鑑

 薬品 酢酸エチル

【実験解説】

(1) 『昆虫と花』(バルト,八坂書房,1997)より図と解説を抜粋しておく。

 原始的な昆虫であるゴキブリの口器を見ると基本をつくる付属肢には,上唇(labrum),大顎(mandible),小顎(maxilla),下唇(labium)がある。また,小顎は小顎肢・外葉,下唇は下唇肢・舌・側舌に分かれ,下咽頭もある。

 口器には咀嚼型(かむ型)と吸収型(吸う型)という2つの基本型がある。

 下左図はハチ類の口器である。ミツバチの小顎と下唇は本来の咀嚼型の昆虫の口にあるものよりはるかに長い。

 ミツバチは蜜を集めるために発達した吸水管をもっているのだ。吸水のほかに蜜をなめるのに舌を使うこともしている。大顎もよく発達しており,花粉を食べる・小部屋をつくる・巣を掃除する・敵と闘うのに使われている。花筒の長さと舌や口の長さを測定してみると,対応していることが多い(次ページの花と訪花昆虫の形態の符合の例)

 チョウ・ガの口器はかなり特殊化している。食物は完全に液状であり,花粉には注意を払わない。吻をつくっている小顎の外葉だけを残して,大顎と下唇が大きく後退している。このような吻の中央の空室を吸い上げた蜜が通っていく。

 カ・ハエの吻はさらに複雑な管をもっている。管は3本以上あり,一番奥の管は食物を吸うチューブである。外側はだ液を出す管である(カの場合は血液を凝

固させないためのだ液を出す管である)。この2本の管は第三の管で包まれている。食物のための管は上唇が変形したもの,だ液管は咽頭の延長で,第三の管は下唇の変形である。

 大顎や小顎はカでは針になる。オスにはそれが必要ない。ハエでは大顎や小顎はほとんど見つけられない。

 下唇の唇弁には多数の感覚毛がある。唇弁の内側表面には小さい歯があり,花粉をすり取ったり,大きい食物をかき落としたりしている。

(2) 花の形態と訪花昆虫の対応関係は次第に詳しく研究されるようになってきた(下図)。日本では田中肇が従来から研究しており,田中の著書は具体的で大変参考になる。

 下図の右方が原始的な花型で,左方が進化的な花型である。

(3) 海産プランクトンの甲殻類ノープリウス幼生の形態観察も付属肢の系統発生を考察するうえで簡単にできて面白い。3対の付属肢は第一触覚・第二触覚・大顎である。

 近年はホメオボックス遺伝子を使った研究によって,節足動物の付属肢の相同関係が明らかになってきている。甲殻綱と昆虫綱の口器は基本的に相同であったが,蛛形綱の口器は昆虫綱と相同ではなかった。例えば,昆虫綱の大顎・小顎・下唇と相同な蛛形綱の器官は第一歩脚・第二歩脚・第三歩脚だったということがわかっている。

 

 

 










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