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〔実験8〕 植物細胞の融合

              教科書p.103  配当時間 1時間

 

 

【指導目標】 身近にできるバイオテクノロジーの実験の1つとして,プロトプラストの作製とそれを利用した細胞融合を試みる。この実験によって,これらの方法を実地に理解するとともに,バイオテクノロジー技術の一端を知り,興味と関心を育てる。

 なお,以下は教科書とは異なる簡単な方法を記す。

【準備】

 材料 葉:コマツナ,チンゲンサイ,ホウレンソウ,ストック,キク,トマト,ペチュニア,ジャガイモ,パンジー,インパチェンス,キュウリ,ブロッコリー,スカシユリ

   花弁:パンジー,ニチニチソウ,ストック,カーネーション,バラ,ベコニア,ウメ

 器具 メスフラスコ100ml,三角フラスコ100ml,解剖バサミ,ゴム栓またはパラフィルム,かみそり,アスピレーター,恒温振とう機

 薬品 セルラーゼ=セルラーゼ“オノズカ”R10またはセルラーゼ“オノズカ”RS(ヤクルト薬品工業),ペクチナーゼ=マセロチームR10(ヤクルト薬品工業)またはペクトリアーゼY23(協和発酵),ポリエチレングリコール,グルコース,塩化カルシウムCaCl2,リン酸二水素カリウムKH2PO4

【準備上の留意点】

(1) 試料として用いる植物について:葉は,やわらかい葉をもったものが,葉肉組織が解離しやすく,細胞壁が強固でなく適しているものが多い。コマツナは,細胞が大きく,単離しやすい。パンジーの黄色い花弁の細胞はキサントフィルを含む有色体,紫色の花弁の細胞はアントシアン系の色素を含む液胞と,起源の異なる色をもっているので,細胞融合したときにわかりやすく,また,比較的花期が長いので,推奨したい材料である。ニチニチソウは,葉も花も細胞を単離しやすく,花の色も種類があり,細胞融合したとき,わかりやすい。一方,ハルジオンなどのように,葉が薄く,毛が生えているものはあまり適さない。木本植物は,葉肉組織がかたく,クワ,ポプラなどの少数の例外を除いて,プロトプラストは得られていないようである。

(2) 薬品およびその処方は,参考文献によってまちまちである。植物およびその組織,種類によって,適当な処方が異なるといわれている。生徒実験のときは,予備実験をしておくとよい。次の表に例を示す。

 酵素は通常変質しやすいため,冷蔵庫内で保存する。処方してつくるこれらの酵素液もあまり保存がきかないので,実験に臨んで作製する。

【方法上の留意点】

(1) 試料の葉の刻みかた:葉の裏側表皮のむける材料は,表皮をはがす。葉の中心の葉脈=主脈を切り取り,除去し,残りの葉を小さい葉脈に沿って幅1020mmに切り取る。これらを数枚重ね,よく切れるかみそりの刃で,できるだけ葉脈に直角になるように切り,2mm幅の切片をつくる(下図)

葉の中心の葉脈を

切り捨て,小さい

葉脈に沿って,葉

を短冊形に切る

 

葉を重ね,葉脈と

直角方向に2mm

幅の切片をつくる

 

 

(2) 酵素液の作用:恒温器に入れ,25℃で1晩静置した方が確実であるが,時間を早く行うには,以下の方法がよい。切り取った材料1gを,三角フラスコまたはツンベルク管に入れ,酵素液10mlを加える。ガラス管をつけたゴム栓をして,ゴム管でアスピレーターに接続し,容器内の空気を抜いていく。もしくは容器をガラス鐘内に入れて,真空ポンプで吸引する。内部の液が沸騰するのがわかる。吸引をやめて開栓する。この操作によって,酵素液が組織内に浸透する。試料に酵素液が浸透する様は色が変わるので,肉眼的にもわかる。これを30℃の恒温振とう機内で,往復3cm,毎分7080回で,1530分振とうする。振とう機がない場合は,30℃の恒温水槽内(お湯を入れたビーカー内)で,容器を手で振り動かし続けてもよい。

 この酵素液の作用がもっとも時間のかかるところであるので,このように短縮することによって,これら一連の実験を,2時間続きの授業時間内に収めることができる。

(3) 単離したプロトプラストの回収:使用する材料や酵素の種類にもよるが,振とう開始1530分後頃から観察に必要な量のプロトプラストが単離する。プロトプラストが遊離してくると,液の色が変わるのでわかる。高濃度にプロトプラストを集めるには,消化されずに残る葉脈や表皮を除くため,ナイロン・メッシュ(紅茶こしやストッキングでもよい)を通しろ過する。さらに,500回転/分で2分間程度,遠心分離してもよい。

 プロトプラストが遊離している液を時計皿に取り,静かに机上でまわすと,中心部に単離したプロトプラストが集まる。これをパスツールピペットで,ホールスライドガラスもしくはスライドガラス上にとり,検鏡する。

(4) 細胞融合2種類のプロトプラストを三角フラスコなどに入れて細胞融合させる方法もあるが,以下の方法は2種類の細胞が効率よく接触するのでよい。2種類のプロトプラストを1つの時計皿にとり,静かに机上で回して中央に集め,その周辺に細胞融合液を数滴加えると,プロトプラストの接着,融合が始まるので,パスツールピペットで静かに取り,ホールスライドガラスまたはスライドガラス上で検鏡し,融合している細胞を探す。または,はじめからホールスライドガラス上で上記操作を行う。

【考察】 ペクチナーゼの作用により細胞接着が弱まり,セルラーゼで細胞壁が分解,細胞壁をもたない原形質体,プロトプラストを得る。多くのプロトプラストは球形として観察される。葉の葉肉細胞では,このプロトプラスト中に葉緑体が観察される。黄色の花弁細胞のプロトプラストでは,カロテノイド系色素を含む有色体,紫色の花弁細胞のプロトプラストには,アントシアン系色素を含む液胞が観察される。教科書p.103の黄色と紫色のパンジーの花弁から得られたプロトプラストの写真で確認できる。教科書の右の写真は,それらの細胞融合のようすを示すが,2つの細胞が融合したとたん,右側の細胞の紫色の液胞が左側へ,左側の細胞の黄色の有色体が右側へ移動するのが観察された。

【参考文献】 『プロトプラストの教材化に関する基礎的研究』生物教育242号 楠元守他 1983,『1時間でできるプロトプラストの単離と細胞融合』平成13年度全国私立中学高等学校研修会資料 小泉正和,横山幸子 2001

 

 

 










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