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〔実験6〕 DNARNAの染色による検出

              教科書p.69  配当時間 2時間

 

 

【指導目標】 DNAおよびRNAが,実際に細胞内に存在するようすを,これら2つを染め分けるメチルグリーン・ピロニン染色法によって観察する。DNARNAのそれぞれが,細胞内のどこに存在するかを知り,それがどのような意味をもつか考察する。

【準備】 材料 タマネギ(りん茎),ユスリカの幼虫

 器具 ろ紙,柄つき針(昆虫針),先細ピンセット,検鏡用具

 薬品 無水エタノール,メチルグリーン・ピロニン混合液,ブタノール(ブチルアルコール)

【準備上の留意点】

(1) タマネギのりん茎は,芯に近いほうがよいようである。生徒実験で数が必要なときは,あらかじめ,切り分けて配布するとよい。

(2) ユスリカの幼虫は,下水が流れている浅い溝や,野外にくみ置いたバケツなどの底に,もあもあとした黒っぽい円筒形の巣をつくってその内部にすんでいる。主にセスジユスリカ(W齢幼虫714mm2n8)が多い。9月から10月にかけて,多く採集できる。水槽に移し,通気をよくする。釣具店では,アカムシユスリカ(2n6)が入手できる。冷凍保存のものからは,だ腺はうまく取り出せないので,使用できない。教材を扱っている業者から入手できることもある。いずれも,使用前の保存は,濡れた新聞紙に包んで,冷蔵庫に入れておくとよい。

(3) ユスリカの幼虫からだ腺を摘出するのに,柄つき針よりも0号の昆虫針(無頭。有頭の場合はペンチでとる)を使うと,やりやすい。

(4) メチルグリーン・ピロニン混合液の作製:市販のメチルグリーンは,不純物を含むことが多いので,以下のような処理をして,使用する。加熱した100mlの蒸留水に

0.5gのメチルグリーンを溶解し,冷えてから30mlのクロロホルムを加え,分液ろうと中で激しく振る。しばらく静置すると,下層にクロロホルム,上層に水が分離するので,上層の水を注意深く別の容器に移す。この水にピロニンY(G)0.08g加える。

【方法上の留意点】

(1) タマネギのりん茎は,内側の表皮に,軽くかみそりで切れ込みを入れ,先細ピンセットではぎとる。はぎとった表皮は,表皮の内側の面がスライドガラスに上向きになるように置き,無水エタノールを滴下し,5分間固定する。

(2) ユスリカ幼虫は,時計皿に少量の水を入れたものに移し,元気のよい大きいものを選ぶ

(3) だ腺の取り出しについて:アカムシユスリカでは,頭部から数えて2番目の体節にだ腺がある。スライドガラス上に,ユスリカの幼虫を頭を右に(利き手側に)位置させる。先細ピンセットで体をおさえ,柄つき針(または昆虫針)の先で,頭部と2番目の体節の間を,スライドガラスにおしつける。頭部を2番目の体節中に引っ込める個体も多いので,その場合は,針先を少し内部に入れるようにして,頭部を確保する。針先で,頭部と2番目の体節の間をおさえたまま,体をピンセットで尾部方向に引いていくと,頭部と2番目の体節の間で,体が切れる。ふつう,頭部につながって,だ腺が出てくる。だ腺が頭部につながって出てこないときは,2番目の体節より後の体をおすと,中からだ腺が出てくる。だ腺は,やや透き通っていて,やじり形で,1対ある。脂肪組織は,白く濁っているので,区別できる。だ腺が1対みつからず1つしかみつからない場合,それでもよいこととして,次の作業をさせたほうがよい。だ腺以外のすべてのものをスライドガラスから除去する。だ腺を別のスライドガラスに移すよりも,容易である。無水エタノールを滴下し,5分間固定。

(4) 無水エタノールをそのまま蒸発させるか,ろ紙で吸収するかした後,メチルグリーン・ピロニン混合液を滴下し,310分間染色する。一般に,高温の方がよく染まる。染色時間は,ようすを見ながら加減する。

(5) ブタノールを滴下して,脱色をする。適度に脱色できたら,ろ紙で速やかにブタノールを吸い取る。(4)の染色とこの脱色の加減が,この実験の成否を決めるといってもよい。脱色が少ないと濃すぎて染め分けがうまく見えないし,脱色しすぎてももちろんうまく見えない。脱色の際,肉眼的に白色に近くなった場合は,脱色のしすぎである。

【考察】

(1) メチルグリーンはDNAを青緑色に,ピロニンはRNAを桃色に染める。

(2) タマネギでは,核内が一様に青緑色に染まる。染色体を構成する染色糸は,DNAがタンパク質ヒストンに巻きついたものだが,このDNAが染色される。この観察から,染色体(染色糸)が,核内に一様に広がっているのがわかる。

(3) タマネギの核内,中心付近に,桃色に染まる1〜数個のまるい点(実際には小球体)が観察される。核小体である。核小体は,タンパク質とRNAからなり,また,リボソームRNA(rRNA)の合成の場であり,これらのRNAが染まったものと推察される。

(4) ユスリカでは,だ腺染色体が青緑色に染まって観察される。染色糸は,タンパク質ヒストンに巻きついたDNAの糸が幾重にも折りたたまれた構造をしているが,折りたたみの度合いが最大になった状態が,棒状の染色体である。この染色体中のDNAが青緑色に染まる。だ腺染色体には,青緑色に濃染する多数の横縞が見られるが,それらは特定の遺伝子に対応していると考えられている。

(5) 青緑色に染まっただ腺染色体のある部位の両側に,桃色に染色されるふくらみが観察される。これが,パフ(教科書p.88)である。パフは,染色体がほどけて広がったものであり,桃色に染まることから,ここにRNAの存在が確認される。DNAから伝令RNAが大量に合成されていることに対応するものと考えられている。

【発展】 タマネギの表皮や,ユスリカの幼虫のだ腺の細胞だけでなく,他の細胞でも,メチルグリーン・ピロニン混合液を使って,DNARNAの染め分けをしてみよう。

 

 










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