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〔実験5〕 グリセリン筋の収縮

              教科書p.5455  配当時間 1時間

 

 

【指導目標】 セント=ジェルジの考案によるグリセリン筋は,細胞膜をはじめとする膜構造が壊れ,アクチン・ミオシン系の収縮構造を残す単純化した系になっている。このため,電気刺激等を使わずATPを加えるだけで,筋収縮を観察させることができる。さらにグリセリン筋は,H.E.ハクスリーらによって電子顕微鏡的微細構造の変化が研究され,滑り説の有力な手がかりを提供した。できれば,横紋間隔の変化まで観察させたいものである。

【準備】 材料 ニワトリの胸筋(ササミ)

 器具 試験管,ピンセット,ビーカー,柄つき針,ペトリ皿,スポイト,スライドガラス,カバーガラス,ミクロメーター,グラフ用紙

 薬品 50%グリセリン水溶液,1ATP溶液,生理食塩水

【準備上の留意点】

(1) 鶏肉専門店でニワトリのササミを入手する。いかに新鮮かがもっとも大事である。肉業者に依頼して,グリセリン筋を作成する当日の朝に殺したニワトリから取り出したささみ肉を使うのが理想的である。冷凍肉では,解凍しても収縮は起こらない。

(2) グリセリンがよく浸透するよう,筋肉の方向に沿って,厚さ3mm程度にバラバラに裂く。切り出した直後でなければ,ささみ肉は十分弛緩しているので,割り箸にのばしてくくりつける必要はない。

(3) そのまま50%グリセリン水溶液につけ,いったん冷蔵庫(5)に保管する。可溶性タンパク質が溶出しやすいよう,大量に漬け過ぎないこと。

(4) 2日くらい経過したら,新しい50%グリセリン水溶液に入れかえて,冷凍室(10〜−20)1か月以上保存して完成する。完成したグリセリン筋の保管は,冷凍室で大丈夫である。数年間,収縮能を保持し続ける。

【薬品の調整】

(1) 50%グリセリン水溶液グリセリンと蒸留水を等量ずつ混合する。蒸留水の代わりに生理食塩水(0.9%)を使用する方法もある。

(2) 1ATP溶液粉末のものも市販されているが,アンプル入りのATP製剤の方が使いやすい。アデホス−L3号などがある。使用時はアンプルから出して滴ビンなどに移しかえて用いる。使用しないときは冷蔵庫で保存する。

(3) グリセリン水溶液は,グリセリン筋がつかっていたものをそのまま使用する。洗浄用の生理食塩水は,0.9%である。

グリセリン水溶液

中のグリセリン筋

 

【方法上の留意点】

(1) グリセリン筋の収縮の観察

@ 2本の柄つき針で細かくほぐし,ピンセットで1本の繊維の端をつかんで,そっと引き出す。直径1mm以下で長さは2030mmの繊維が望ましい。細い繊維ほど,よく収縮する傾向がある。劇的に収縮するようすを観察させるのが目的なら,直径0.20.3mmの繊維にほぐす。

▲グリセリン筋をほぐす

A グリセリン筋の繊維を生理食塩水で洗うのは,表面のグリセリンを取り除き,ATPの浸透をよくするためであり,あまり長くひたしておくと収縮が悪くなる。

B ATP溶液を23滴落とすと23分で収縮する。本実験では1分間収縮させてから,生理食塩水でATPを洗い流して条件を一定にするようにしたが,この操作は慣れないと難しい。生徒実験ではATP溶液滴下後,一定時間後に一斉に長さを測定させてもよい。

 

▲収縮前のグリセリン筋(1目盛り=1mm)

▲収縮後のグリセリン筋

 

【結果の例】

 収縮前a26mm 収縮後b15mm

      

 

(2) 筋繊維の観察と収縮率の測定

@ できるだけ細くしたグリセリン筋を生理食塩水中で23回振るようにして洗ってから,ほぼ同じ長さのものを4枚のスライドガラス上に1本ずつのせる。

A 3つはそのままカバーガラスをかけて横紋を観察する。わかりにくいときは,酢酸オルセイン溶液で染色するとよい。横紋の本数の測定は慣れないと難しいが,接眼ミクロメーターの50μmあたりの本数を数えるとよい。3つ測定するのは,どの筋繊維も収縮前の横紋数が一定であることを確認するためである。

B いったんカバーガラスをかけると繊維が押しつぶされて,ATP溶液を加えても収縮しない。残り1つは,(1)の実験のときと同様に,ATPを滴下して収縮後にカバーガラスをかけて横紋数を数える。処理時間もと同じく,1分間とした。よく収縮した筋繊維はなかなか横紋を見つけるのが難しい。そのような場合は筋繊維のスケッチをさせてもよい。

▲グリセリン筋の横紋構造

 

【結果の例】

 

グリセリン筋50μmあたりの横紋の本数p

およその筋節の長さ

収縮前

p13()

 

 

収縮後

p17()

 

 

 1つの筋節あたりの収縮率は24%となるが,グリセリン筋は全体として均一に収縮する補償はないので,参考までの値である。

 

 










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