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〔実験4〕 緑葉中の色素の分離

              教科書p.38  配当時間 1時間

 

 

【指導目標】

(1) 緑葉にも黄色系の色素が含まれていることを確かめ,主色素であるクロロフィルaだけでなく補助色素によって,利用できる波長の幅を広げていることを理解する。

(2) 微量に存在する色素などを分離・同定する方法の一端を体験する。

【準備】 材料 シロツメクサなどの葉

 器具 クロマトグラフィー用ろ紙,展開容器(シリンダーやふたつきの透明なガラスびんなど),ゴム栓,細口ピペット,乳鉢,乳棒

 薬品 色素抽出液(アセトン:メタノール=13),展開液(石油エーテル:トルエン=73)

【準備上の留意点】

(1) 材料としては,やわらかい葉(シロツメクサなど)がよい。サクラなどを用いる場合には,葉脈は除き,ハサミでできるだけ細かくして乳鉢ですりつぶす。抹茶を用いると,すりつぶす必要がなく,鮮明なスポットが得られる。

(2) ペーパークロマトグラフィー用ろ紙は,東洋ろ紙No.50No.53がふつうに用いられる。展開用の容器が浅ければ,それに合わせて切っておく。

(3) 前年使用した細口ピペットなど器具を点検し,色素の汚れなどをアセトン・メタノールで洗っておく。細口ピペットは,マイクロピペットのチップや毛細管を用いる方が原点が小さくてよい。

【方法上の留意点】

(1) 色素の抽出にあたって,葉の細片を乳鉢・乳棒であまりすりつぶさない。細かな細片にして軽く乳棒でたたくぐらいでよい。

(2) アセトン・トルエンなどの溶剤は蒸発しやすく,毒性や引火性があるので,とり扱いには十分注意し,管理にも慎重な配慮が望まれる。

(3) ろ紙の原線は鉛筆で薄く引く。

(4) 抽出液を原線に点状または細い帯状につける。ヘアードライヤーの冷風で乾燥させるとよい。水分が残っていると展開がうまくいかない。

(5) ろ紙を汗ばんだり,汚れた指でさわらないように注意する。

(6) 管壁にろ紙が付着しないようにする。付着すると展開溶媒が斜めに上昇する。

(7) 前線がろ紙を上昇しているところを観察させる。とくに前線の位置と,上部の黄色色素の分離はろ紙を引き上げた後にはすぐに不明確になってしまうから,引き上げる前にろ紙を明るい方にすかしてそれらをよく見ておくように注意する。シリンダーからとり出したら,鉛筆ですぐそれらの位置をマークさせる。

(8) 主な色素に,仮に14などの番号をつけ,色・展開の順序および教科書p.38Rf値からどんな物質かを推定させる。ただし,Rf値はその物質単独でのもので,混在する物質によりかなり変動することを説明しておく。また,ろ紙上の色調は数日で退色するから,別紙に色鉛筆で記録させるとよい。Rf値とは,rate of flow の略で移動率のこと。物質がろ紙上に吸着される強さと,展開剤がその物質を溶かし出そうとする強さの差が物質によって異なることを利用している。

(9) 教科書のRf値は 石油エーテル:トルエン=73 の場合であり,他の場合の値を次にあげておく。

【考察】

(1) 実験条件が同じなら,同一の色素のRf値はほぼ等しくなる。逆に,Rf値がほぼ等しければ,同一の色素といえる。

(2) 緑葉では,原点からキサントフィル類,クロロフィルb,クロロフィルa,前線近くのβ−カロテンの5種類に分離できる。前線近くの橙黄色のβ−カロテンは色が薄くて見にくいので,シリンダーから引き上げる前に,見る方向を変えたりしてよく観察しておくとよい。

(3) 教科書p.3726の吸収スペクトルを参照すると,クロロフィルa以外にクロロフィルbやカロテンなどの色素をもつことにより,より幅広い波長の光を吸収し,光合成に利用していると考えられる。

 

別法〉 薄層クロマトグラフィー

 ペーパークロマトグラフィーにくらべて,スポットが鮮明に現れ,要する時間も短い。

【準備】 材料 ペーパークロマトグラフィーと同じく,やわらかい葉がよい。また,薄層クロマトグラフィーの場合では抹茶を用いると,フェオフィチン(クロロフィルの分解産物)が現れる。そのため新鮮な材料のほうがよい。

 器具 展開容器,ゴム栓,細口ピペット,乳鉢,乳棒, シリカゲル(粉末),クロマトグラフィー用TLCシート,マイクロチューブ

 薬品 色素抽出液(ジエチルエーテル),展開液(石油エーテル:アセトン=73)

【準備上の留意点】 薄層クロマトグラフィー用TLCシートは,メルク製シリカゲル60(25 TLC プラスチックシート)などを用い,展開容器の大きさに合わせて切断しておく。ただし,TLCシートには方向性があり,誤るときれいなスポットが現れない。

【方法上の留意点】 

(1) 材料を乳鉢でシリカゲル粉末としっかりなじませ,できるだけ水分を取り除く。シリカゲル粉末を吸い込まないように注意する。

(2) 原点は鉛筆で薄く引くが,擦るとすぐにプラスチック上の粉末が剥離する。

(3) ろ紙より色素が早く不明確になるので十分注意する。

(4) 展開後のプレートは,?@上からセロテープを貼る,?Aラミネート加工する,?B浅く水をはったタッパーなどでの保存,などにより退色を遅らせることができる。

(5) 緑葉のほか,褐藻や紅藻などでクロロフィルの種類を比較し,植物の進化系統についても取り扱いたい。

 

 










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