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〔調査研究テーマ例 (2)〕 親による子の保護の効果を調べる

教科書p.293

 

 

【指導目標】 母親が卵のうを保護する行動を示すクモを選び,保護行動がどのくらいの意義があるかを定量的に調査する方法を学ぶ。あわせて統計的検定の方法も学ぶ。

【準備】 母親が子を保護する習性をもつクモを選ぶ。オオヒメグモは屋内外に生息するふつう種である。

【準備上の留意点】 オオヒメグモは冬季を除く期間は産卵するので観察可能な期間は比較的長い。そのほかにも母親が卵のうを保護する種は多いが時期が限定されるため,急に思い立って実験を組むことはできない。一年間予備調査が必要である。

 カニグモ科・エビグモ科・シボグモ科などのクモは産卵した卵のうを抱きかかえるように上にかぶさって保護する。ハエトリグモ科のクモは卵のうの外側に卵室をつくり,母親も中に入って保護する。コモリグモ科のクモは腹部につけ,アシダカグモ科・ハシリグモ科のクモは母親が卵のうをもち運ぶ。

 上記のクモはすべて徘徊性であるが,造網性のクモでは卵のうのそばでガードする例 (ヒメグモ科の一部)や,母親が卵のうをもち運ぶ例(ヒメグモ科の一部・ユウレイグモ科),出のうした子グモに餌を与える例などいろいろなケースが知られている。

【方法上の留意点】 実験区と対照区を同じ時期で環境の同じ地点で設定する。時期が異なると野外では環境条件が複雑なため,結果を考察できなくなってしまう。

【保護の効果の検定】 帰無仮説「母親の保護にかかわらず子の生残率は一定である」を統計的に検定する。母集団が正規分布をしていなくとも使えるノンパラメトリック検定のひとつ,t検定を行う。

【保護の効果の例】 クモの卵のう保護の効果を直接調査した例は,日本では,二見恭子によるアマギエビスグモの報文がある。卵のう保護区と非保護区をつくって調査したところ,保護区では有意に卵のう生き残り率が高かった。また,母親の体重減少が卵のう保護区では高かった。したがって,保護には相応のコストがかかっているはずである(二見,2000)。また,コガネヒメグモは卵のうを守るだけではなく,その後出のうしてきた子グモに餌を吐き戻して口移しに与える世話をする種類だが,子の世話の利益は「子の生存率の上昇」であり,保護しないと子の生残率は0%であった。自然状態での子の生残率は74% であったが(長崎緑子,未発表)。外国ではササグモの一種で母親の卵のう保護を除去するとアリに捕食される例(Fink1987)や,オーストラリアのハエトリグモで明らかに保護の効果が大きいことが実証された例がある。

 卵のうから出てきた子グモのために餌を捕獲するという世話をするクモにヒメグモがある。高校生の生態研究により,8 9 月に母親の捕った餌を食べた子グモは体色が黄色から茶色に変わること,世話をされると腹部が肥大するものの脱皮はしないこと,冬を越して翌春になったときに世話をされなかった小形のクモは生残していないこと等が判明した(石本・金田,2004など)

 子グモたちが世話をしてくれた母親にかみついて最終的に捕食してしまう「母親食い」の数少ない例として日本のカバキコマチグモが知られていたが,外国のクモでも数例が知られてきている。ヒメグモ(ニホンヒメグモと称されることもある)でも母親食いが報告されたことがあるのが,そのような行動は例外だった。

 

 

 

 

 








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