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〔実験研究テーマ例 (4)〕 魚類の発生過程と雄性ホルモンの作用

 教科書p.277278

 

 

【指導目標】 魚類の初期発生を観察する。また,性ホルモンを投与してメダカに性転換

を起こす。

実験I 魚類の発生過程の観察

【準備】 ゼブラダニオ,メダカ,卵を入れるビーカーなどの容器,顕微鏡,双眼実体顕

微鏡,検鏡に必要な器具

【準備上の留意点】 準備としては実験材料の魚を飼育しておき,観察をさせたい時期に卵を集める必要がある。比較的飼育しやすくて多くの卵を採取できるものとして,教科書では次の2 種を取り上げた。

@ ゼブラダニオ:発生学や遺伝学の実験動物として近年急速に利用が広まっているガンジス川原産の熱帯魚。魚類なので端黄卵であるが卵黄が少ないために,割球が比較的大きくて卵割のようすが観察しやすい上に,割球の内部がよく見えて,発生の過程がわかりやすい。また,前日に雌雄を分けておいて朝にいっしょにすると,産卵を始める。そして,25 28℃の適温で飼育すると一年中産卵し,1 回に数百個の卵を産み,約3 日間で稚魚となる。冬季も室内なら加温しなくても飼育できる。

A メダカ:古くからよく利用されている。産卵期は3 9 月に限られ,卵は大きいが産卵数は少なく,卵黄が多いので割球は比較的小さく観察しにくい。

【方法の留意点】 (1) 次のような方法で卵を採取する。いずれも,卵をそのままにしておくと親魚が食べてしまうので早いうちに採取する方がよい。

@ ゼブラダニオの場合は,別の水槽で飼育していた雌雄を観察したい日の朝に同じ水槽に入れると産卵行動を始める。卵は水槽の底にバラバラに産卵するので,産卵後,親魚を別の水槽に移し,底にある小さく透明な受精卵をピペットなどを用いて採取する。雌雄いっしょに飼育しておき,朝に親魚を別の水槽に移すだけでもよい。

A メダカも朝に産卵するが,こちらは雌雄をいっしょに飼育しておき,メスの腹部に卵が付着しているのをみつけて,それをスポイトなどを用いて採取する。または,卵をもっているメスを網で採取し,腹部の卵をそっと手で取りはずすとよい。

(2) 採取した受精卵は新鮮なくみ置き水(水道水をバケツに入れて1 日放置)を入れたペトリ皿か時計皿に入れて発生させ,ときどきピペットで卵を取り出して,顕微鏡で発生の過程を観察する。また,チャックつきのビニル袋に入れておくと,いちいち取り出さなくてもそのまま観察することができて便利である。

【結果例】 メダカの発生過程(ゼブラダニオの発生過程は教科書p.277 参照)

実験II 性ホルモン投与による魚類の性転換

【準備上の留意点】

(1) 実験材料としては雌雄の特徴がはっきりわかるグッピーがよい。多数の品種があるので,この実験を行う時は1つの品種の雌雄を親魚にして生まれた稚魚を用いる必要がある。多数の品種を混合して飼育している場合は,特定の形質の雄親を選び出して,何世代か飼育を続けて純系をつくる必要がある。形質としては体色の赤い品種などがわかりやすいだろう。なお,グッピーは卵胎生であり,雌は産卵せずに雌の体内で受精し,発生した稚魚を腹部から直接産む。参考までに,グッピーの雌雄の特徴をまとめると次の表のようになる。

(2) 実験前にホルモンを含んだ餌をつくっておくことが必要である。この実験ではホルモンとして,メチルテストステロン(人工的に合成した雄性ホルモン)を用いている。反対に本来の雄を雌に性転換するためには雌性ホルモン(エストロゲンなど)を利用する。いずれも校医を通じるなどして購入する必要がある。餌のつくり方は教科書に詳しく書いてあるが,ホルモンはほんのわずかで有効なので,餌に混ぜる時は均一な濃度にするために,何度もよくかき混ぜないといけない。かき混ぜ方が不十分だと一部に集まり濃度が不正確になるので注意すること。また,このホルモンはヒトにも有効なので,手で触れたりしてはいけない。実験後も十分うすめてから流すようにしよう。

(3) この実験ではほぼ同じ時期に生まれた稚魚が多数必要だが,一度の出産で得ることは難しいので,多数の親を飼育しておき,1 2 週間かけて稚魚を集める。

【方法の留意点】

(1) 実験材料の稚魚を100 匹用意することになっているが,10匹ずつ計50 匹でもよいだろう。くみ置き水を入れた小さな水槽かビーカーで飼育する。できるだけ生まれてすぐに実験を開始する。

(2) 水槽ごとに与える餌の量はできるだけ一定にする。質量を測定して与えるのがよいが,無理なら同じ太さの爪楊枝の先をナイフで平らにしたヘラを利用するとよい。

(3) この実験では生まれた直後の稚魚の性別は判定できないので,雌雄が半分ずつ含まれるものと考えて実験を行うことになる。また,雄性ホルモンを投与すると,もともと雄の個体は本来よりも速く雄の形質を現し,本来は雌の個体もホルモンの作用によって,雄の形質を現すようになるということである。

【結果例の考察】 教科書の結果例ではひれの形態は2 週間で変化するが,体色の変化には日数がかかることがわかる。餌D では効果がなかったので,有効なホルモン濃度は10ppm(0.01mg/g) 以上と考えられる。また,餌A では投与後1 週間は生きていたが,2 週間後にはすべて死亡したので,濃すぎると稚魚にとっては有害であることがわかる。

 

 

 

 








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