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〔実験研究テーマ例 (1)〕 細菌の観察

教科書p.271273

 

 

【指導目標】 分類,系統,進化の考え方の中で,原核生物である細菌類は,重要な意味をもつ生物群である。また,私たちの生活の中で,身近な存在でもある。基本技術を身につければ,いろいろな研究テーマが考えられるので,生徒による課題研究の実験テーマとして,推奨されるものと考える。しかし,危険な細菌もあるので,その取り扱いについては,細心の注意を払い,正しい操作を行わせるよう,指導されたい。

細菌培養の基礎〉 細菌を使ったすべての実験研究の基礎的技術

◇器具の滅菌

【準備】 乾熱滅菌器,ペトリ皿,ビーカー,試験管,ピペットなど

【準備上の留意点】 (1) ペトリ皿は,教科書の図のように,端の1 つだけ上下逆にして

重ねて,新聞紙で包む。こうしないと,新聞紙を開いたとき,一番端のペトリ皿の本体が開いてしまうからである。包んだ新聞紙の最後は,でんぷんのりでとめておく。

(2) その他の器具は,アルミはくでふたをするか,アルミはくや新聞紙などで包む。

【方法上の留意点】 (1) 乾熱滅菌器の通気孔を開けて加熱し,170 180℃まで上昇させた後,通気孔を閉じ,火を消して密閉したまま冷却させる。綿栓や包み紙が狐色に焦げている程度になれば,完全に滅菌されたと考えてよい。

(2) 完全に冷めないうちに扉を開くと,紙や綿が発火することや,急激な冷却によってガラス器具を破損することがあるので,注意する。

(3) 乾熱滅菌器がないときは,オーブントースターに入れて,約1 時間加熱する。

◇培地の作製と滅菌

【準備】 オートクレーブ(蒸気滅菌器),三角フラスコ,青梅綿,硫酸紙,ひも,コンソメスープのもと(または固形ブイヨン),寒天

【準備上の留意点】 (1) 三角フラスコを用意し,水500ml に,市販のコンソメスープのもとまたは固形ブイヨン(マギーブイヨンなど),および寒天10g を入れ,よくかき混ぜる。コンソメスープのもとや固形ブイヨンの量は,そのパッケージに書いてある指示どおりにし,また,包丁などで削るようにして粉状にして用いると溶けやすい。

(2) 上記のスープのもとなどには,脂肪分が多いものがあり,培地として流したとき,培地表面が白っぽくなる,もしくは平滑でなくなり,細菌のコロニーが見にくくなることがある。このようなスープのもとの場合は,寒天を入れる前に一度加熱してスープのもとを溶かした後,ろ過して脂肪滴を除去してから用いる。

(3) 上記の市販のスープのもとを使う方法は,筆者の考えた便法であるが,細菌学で普通に用いられる培地では,ウシ肉やウマ肉を細かくし,煮出してつくる肉汁ブイヨンや,培養用に市販されている肉エキスを用いる方法があるが,ここでは割愛する。

(4) 三角フラスコには綿栓をする。綿は青梅綿を用いる。脱脂綿は水を吸ってしまいよくない。青梅綿をまるめて芯をつくる。この芯には,別の実験で一度滅菌して使用したものを使うと,堅くしっかりしていてよい。広げた新しい青梅綿の中に芯を入れて包み,芯の部分がフラスコの口にしっかり入るように押し込む。硫酸紙でおおい,ひもで縛る。ひもは麻縄のようなものやタコ糸などしっかりしているものがよい。

【方法上の留意点】 (1) オートクレーブ(蒸気滅菌器)の棚の下に充分水のあることを確かめ,締め金具を締めずに軽くふたをして加熱する。培地溶液を入れた三角フラスコは,網籠の中に並べて入れ,オートクレーブ内の水が沸騰しだしたら,ふたを開け,釜の棚の上に降ろす。ふたを閉じて締め金具を対角線どうしで順番にしっかり締め,密閉する。排気口を開いたまま10 20 分加熱して,釜の内部の空気を追い出してから,排気口を閉じる。2気圧(15 ポンド)120℃で30 分間加熱する。これで芽胞まで完全に滅菌される。圧力がこれを超え,安全弁から水蒸気が吹き出さないときは安全弁を調整する。

(2) 30分経ったら加熱を止め,自然に圧力が1気圧に下がるのを待つ(通常20分くらい)。だいたい1 気圧になったら排気口を開き,中を外気の圧力にする。締め金具を外して,ふたを開く。締め金具も熱いので,作業は厚手の耐熱手袋をして行う。また,ふたを開けるとき,熱い湯気が出るので,火傷に充分注意する。やや冷えてから三角フラスコを取り出し,硫酸紙を外して,綿栓を乾かす。

(3) 高圧になる釜は,安全性の検定に合格したものを用いる。また,万一を考え,安全な場所に置き,使用中は生徒を近づけない。危険と思われる作業は,教師が行う。

(4) 高圧にならない蒸気滅菌器の場合は,通常100 1 時間加熱する。完全には芽胞を滅菌できないので,必要があれば,11 100 30 分ずつ連続3 日間の間欠滅菌を行うと完全な滅菌をすることができる。滅菌器のないときは,蒸し器を用いればよい。

(5) クリーンベンチまたは無菌箱の中,なければ清浄な場所で,三角フラスコの内容を,固まらないうちに,滅菌したペトリ皿に流す。このとき,ペトリ皿のふたはわずかに開けるようにし,そのすきまから流し,ただちにふたをする。三角フラスコの内容を使い切らないときは,フラスコの口をガスバーナーの中に入れて滅菌してから綿栓をする。無菌箱の中でペトリ皿のふたをわずかに開けて,培地表面を乾かす。

◇細菌の接種 白金耳の火炎滅菌は,まず白金の部分をガスバーナーの炎の中に斜めに入れ,赤くなるまで焼いた後,柄の金属部分も炎を通す。

◇実験後の処理 実験中の消毒:細菌の中には有害なものもあるので,実験終了後は必ずオートクレーブにかけ,滅菌してから処理する。実験中は逆性石鹸の手洗い洗面器などを用意しておくとよい。

【細菌を用いた研究テーマ】 教科書に実験例をあげた。確かな培養技術と後の正しい扱いおよび処理ができれば,本来いろいろな実験ができるはずだが,生徒の実験としては,

「病原性のある細菌を培養してしまう可能性のある実験(空気中の細菌,不特定多数が触れるものからの細菌採取など) をさせないよう,事前計画をよく聞き実施させたい。教師自身に経験と正しい知識があれば,演示実験としてすることも可能だろう。

【他の実験例】 @ワサビ等の殺菌作用:教科書のアオカビの実験と同様の方法などで,ワサビ,ニンニク,ショウガ,カラシ,桜餅の葉などが,細菌に与える影響を調べる。

A消毒薬や「お腹の薬」の殺菌作用:@と同様。Bハンバーグの焼き方と中身の殺菌:いろいろな焼き方をしたハンバーグを半分に切り,培地にスタンプ。C白血球の食作用:納豆菌をスライドガラスに付着させ,新鮮な血液から分離した白血球を滴下し,検鏡(生物I教科書参照)。D空気中の細菌(教師向き):ペトリ皿のふたを取って,培地を一定時間空気にさらしたのち,培養。場所や時間を変えて,ほこりとともに浮遊する細菌数を比較。E手洗いと細菌数(教師向き):いろいろな手洗い法をした後,手指を培地に触れる。

【参考文献】 『細菌学実習提要』(第4版) 医科学研究所学友会編 丸善 1973

 

 

 

 








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